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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第6ステージ:船舶
80/200

プロフィール -1-


 アレースの神殿を出たアヤノ達は、まず第1ステージに引き返した。

 そうして、ショウと運営のやりとりを全員で見守ることになった。ショウが口頭で伝えたことをダンテがメッセージにして送信する。向こうも張りつきで待機しているらしく、再返信は早い。


「おじさん


 連絡がとれてよかった。僕はとりあえず生きてはいるのかな。

 状況としては、前に“アヤノ”について報告したのと同じ現象が起きた。

 アヤノ、アレキサンダー、ユリウス。そして僕。

 4人がゲーム内から出られない。

 現在位置は第1ステージのセーフティエリア。今のところ全員無事でいる。

 こっちも外の状況を知りたい。また連絡して。

                            ショウ」


『ショウ


 以前プレイヤー“アヤノ”について、素性がわかりそうだという話をしたと思う。

 結果、九分九厘間違いないだろうという人物をつきとめた。彼女もまた眠ったまま目を覚まさずにいるらしい。お前と同じようにだ。

 残念ながら、“アレキサンダー”と“ユリウス”はこちらで捕捉できていない。どうにかして調べてみるつもりではあるが。

 わかったことはその都度連絡する。

                           リョウジ』


「ひとつだけ“アヤノ”について教えてほしい。

 彼女の本名は?             」


『それを聞いてどうなるものとも思えんが……

 “新庄綺乃しんじょうあやの”だ。こちらの調べ間違いでなければな。』


 最後の返信と見たと同時に、アヤノははっと息を呑んだ。

「しんじょう……あやの……」

「アヤ、――もしかして」

 ショウに勢いよく肩をつかまれ、ゆっくりとうなずく。

 口に出したことでよりはっきりした。これ以上なくしっくりくるその響きは、きっと間違いない。

「“新庄綺乃”。わたしの、名前」

「マジか! 思い出したんだな!」

「あらぁアヤちゃんて本名だったのねぇ」

「ようやく一歩前進といったところか」


「……みんな。聞いて」


 ショウはアヤノから離れた。皆の注意を引くように手を上げる。

「これではっきりした。言葉にして確認すれば何か思い出すこともある。逆に意識していないと、記憶が失われてくみたいだ。だから定期的に、思い出しの作業をした方がいいんじゃないかな」

「思い出し、っつーと」

「ひとつ提案。これからは休憩の時間中、順に自分のことを話していこう。他人に知られてもいいって範囲でかまわない。そうすれば、ある程度は幻想症候群の進行を食い止められると思う」

「そういうことか」

 アルとダンテがうなずいた。相変わらずユーリだけは、眉を寄せてちょっとばかり不本意そうにした。

 アヤノはといえば、少し困ってしまった。話そうにも話せるような記憶がほとんどない。そんな思いが顔に出たのか、ショウがぽんと肩をたたいてきた。

「なんでもいいんだ。本当にちょっとしてことでも。話してるうちに取り戻せるものがきっとある」

「……うん」

「あと、アヤとアルはひとつずつ魔法マギアを取得してほしい。これはまた別の、“モザイク”対策として」

 この一言で、空気が一気に緊張した。不定期に襲ってくる、いまだに正体不明の“あれ”。とにかく魔法で撃退できることだけはわかっているから、ショウの指示は妥当だ。

「攻撃でも防御でも、どっちでも。次に能力値タレンドが溜まったらね。今できるのはこんなところかな……」

 ショウが息をつくと、自然とみんなが黙り込んだ。それぞれに物思いがあるようだった。もちろんアヤノにも。

 そんな中で、ふと口を開いたのはアルだった。

「なあ。アヤは“綺乃”で、ショウは“翔一”だろ? オレも一応言っとくな。リアルでの名前は“斉藤昂さいとうあきら”ってんだ」

「……アル」

「どうせ後で言うんなら今でもいいじゃん」

 と、不意にダンテが小さく息を吐いた。決意を固めた表情だった。

「俺は――」

「ダンテ。君はまだ幻想症候群にかかってない。無理に名前を明かす必要はないよ?」

 ショウが驚いたように止めるが、ダンテは首を振った。

「俺はすでに3人の名を聞いた。自分だけ知らせずにおくのはフェアではない」

「いいの? 本当に……」

「ああ。俺は、“神谷淳かみやじゅん”だ」

「神谷、か」

「……」

 名前を聞いていないのは、これであとは1人だけ。けれど教えるだろうかと、アヤノはユーリを窺った。

 また、沈黙。

 そして数秒後。

「――ゆうや。“工藤祐也くどうゆうや”」

 ユーリがぼそりとつぶやいて、アヤノはぱちぱちと瞬いた。

 男性名だ。やっぱり、男だったのか。

「なによ、言いたいことがあるなら言いなさいよ」

 思いきりそっぽを向くユーリを、ショウ以外は複雑な目で見ていた。

 それでもとにかく。これで全員が全員の本質の一部を共有した。

「ユーリ。ありがとう」

「お礼するところじゃないと思うわ」

「僕が言っておきたかっただけだよ」

「そんじゃ、あとは進むだけ、だよな? 変わらないよな、ラストステージを目指すってのはさ!」

 ショウがうなずく。ダンテも、仕方なさそうではあるが、もう反対しない。

「他に手段もなさそうだからな……」

「ダンテはそろそろ落ちる時間?」

「ああ」

「それじゃ、君が戻ってきたら次へ進もう。第6ステージ――船上のステージに」

 また新たなステージが開く。

 アヤノはそれを思い、改めて気が引き締まるのを感じた。




            * * * * *




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