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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第5ステージ:荒野
74/200

オラクル Ver. アレース -1-


 しばらく敵を狩ることに明け暮れて、レベルも上がった。アイテムも揃えた。

 そしてアヤノは、とうとう新しい武器を手に入れた。

「おー、いいじゃん。よかったなーアヤ!」

「“タルワール”。だって」

「これで攻撃力は高くなったはずだよ。それと、オプションがついてる。ある程度の魔法攻撃なら防御できるんだ」

 最初に持った長剣より、若干幅広で反りのある片刃の剣。柄には“戦士”を表す赤い石。とにかく見た目は好みだ。扱いがどんなものかはまださっぱりわからないけれど。

「実戦、してみたい?」

 見計らったように声をかけられ、反射的にふり返って大きくうなずく。しかしダンテが割って入った。黒い瞳は何やら困惑しているように見えた。

「すぐにフィールドへ出るということか。多少なりと慣らしておくべきではないか?」

「実戦で覚える方が早いよ。全員揃ってることだし、危険な思いはさせない。大丈夫」

「しかし……このオープンなステージでは不安が残る。敵の発生頻度はランダムなのだろう。場合によっては囲まれる。慣れない武器で捌けるか。第一、彼女は――」

 言い終える前に、そうか、とショウがうなずいた。思案する風に青眼が揺れた。

「それは一理あるかもしれない。それじゃあどうしようか」

「提案する」

 ダンテが掲げたのは“クレイス”のひとつだった。石の色は紫。1番はじめの、ヘラが守護する市街ステージのものだ。

「なるほどね。それはいいかもしれない」

「戻るの?」

「あ! “紋章クレスト”か!」

 わかったと言いたげにアルが指を鳴らした。

 第1ステージの“紋章クレスト”といえば。まだダンテとユーリが取得しておらず、いずれ獲りに行こうと話したことがある。それなら納得だ。

「肩慣らしにはちょうどよさそうだね。最初の頃からどれくらい上達したかも実感できると思うよ。それでいいかな?」

「ん」

「おー!」

「ヘラの“紋章クレスト”は……防御力の増強? 悪くないわね」

 面倒くさい等の文句が予想されたユーリもまんざらではなさそうで、結果、反対意見はなかった。

 5人はすぐさま第1ステージに舞い戻った。

 そうして、まっすぐ“オラクル”へと向かった。


 ――遅い……軽い……!


 再びやってきた、薄紫がかった空の下。石畳を駆けながら、アヤノは驚愕と共に曲刀を振り抜いた。

 犬もカラスも、やたらアクティブな花も。第5ステージのモンスター達と比べてしまえばとてつもなくあしらいやすい。たったひと薙ぎで紙のように切り裂くことができるほどだ。初心者の頃、助けてくれたショウがそうだったように。

 ふと顧みればアヤノのレベルも80を超えた。もうすぐ初対面の時のショウに追いつける。もちろん現在のショウは、もっともっと、遙か先を歩いているわけだが。

「どう、アヤ?」

 すれ違いざま、ショウが笑顔と共に耳打ちしてきた。

 すぐ近くに敵がいたため答えそびれたが、可能ならばアヤノはこう答えただろう。


 『楽しい』


「さあ! あとはボスを残すのみだよ!」


 息もつかずになだれ込んだ巨大イノシシのテリトリー。しかし以前ほどの威圧は感じられず、逆に気を抜かないよう自分に言い聞かせる必要があった。


使役獣召喚プロスクリシー:ヒドラ!』


 ユーリの積極的な支援もあり、見る間にイノシシの生命力ライフが減っていく。

 削る。たぶん、あと少し。

 あと――

「アヤ」

 不意にぽんと背を押され、その勢いで飛び出した。

 振りかざした曲刀もまた軽い。けれど握り手に頼もしさを感じるのは、ヒットさせたときの手応えが違うから。

 力いっぱい振り下ろした。大きくダメージが表示され、イノシシはあっけなく崩れ落ちた。

「っひゃー、こんなに違うもんなのか」

 歓声を上げたアルがくるりとふり返る。にやりと笑って顎で曲刀を示す。

「んで? どうよ、新しいヤツの具合」

「いい」

 一言で答えると、あちらでは失笑、こちらでは何かを誤魔化すような咳払いが聞こえた。なんで、と睨み気味に見回すが、別に怒ったわけではない。

 それもまた――楽しい。

「気に入ったならよかった。見てた限りでも相性は良さそうだったよ。もう心配いらない、かな?」

 ショウが仕切直すように言って、皆の注目を引くようにひらりと手をかざした。

 次のセリフは予想がついた。アヤノは期待のまなざしをその手に向けていた。


「それじゃあ次は、本番に臨もうか。第5ステージの“オラクル”に」




            * * * * *



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