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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第5ステージ:荒野
71/200

アラート -2-


 ダンテと合流した後、いつも通りにフィールドへ出る。

 その初っぱなに出くわしたのは、サソリ1体とジャッカルが2体。アヤノが迷わずサソリに向かうと、ショウ達は黙って背を合わせてくれた。

「本物といっしょで、針に毒があるから気をつけて」

「わかった」

「もし刺されたら教えて。解毒薬は仕入れて――」

 語尾はジャッカルの咆吼に紛れたが、ここまで聞けば充分だ。

 アヤノは横に回り込みながらサソリの動きを観察し始めた。敵モンスターそれぞれの攻撃のパターンとリズム、攻撃前の前兆。それが見えれば戦いはずっと楽になる。


「アル、そっちをたのむ! ユーリは離れて!」

「任せろ!」

「わかってるわよ!」


魔法マギア:アンベロス』


 拘束効果を持つダンテの魔法。ジャッカルの短い悲鳴が上がったと同時に、サソリも唐突な移動を始めた。カサカサと乾いた足音を立て、予想外のスピードで追いかけてくる。

 ハサミを大きく左右に広げ、ハグするように閉じる。

 ガチンと硬質な音。どうやらこれが最大威力の攻撃か。

 しかし。

「速さなら、負けない」

 アルに言われて以来、能力値タレンドを攻撃力と体力に振り分けてきたので、運動能力もそこそこ上がっている。

 今の段階で、たぶん少しだけアヤノの方が速い。

 それに、だいぶわかってきた。サソリには次の動きに入る前のほんのわずかな隙がある。ハサミで抱きつき攻撃の次に、尾の毒針を突きだして。

 ――ここだ。


「やっ!!」


 目を狙って斬りかかる。手応えはあった。その瞬間思い立ち、勢いのままサソリの背に飛び乗った。カマキリの時と同じだ。

 迷わず首の付け根、硬い外殻の継ぎ目めがけて剣を振り下ろす。が、寸前で身動きされ足場が揺れた。切っ先ははじかれダメージに至らない。

 黒い背中を蹴り地面に落ちて、転がりながら距離を取る。

 が、起きあがったと同時にとっさに後ろへ跳んだ。その鼻先を掠めるようにジャッカルの爪が通り過ぎた。


魔法マギア:フロガ!!』


 ショウの火炎強攻撃がそれを追った。はじき飛ばされたジャッカルが地面にたたきつけられ、痙攣しながら形を崩した。


魔法マギア:プリミラ』


 広域水流。もう1体のジャッカルとサソリを巻き込む。ジャッカルは消え、サソリは体勢を立て直そうとするようにぶるりと身を揺すった。

 アルの銃弾とショウの投げナイフが空を裂く。アヤノは駆けて足に浅く斬りつけた。


『プリミラ!』


 連続の攻撃魔法でサソリも倒れた。アヤノがふり返ると、ダンテが息を吐きながら宝剣を下ろしたところだった。その向こうでショウが手を上げかけ、しかしすぐに、はっと目を開く。

「アルっ」

 呼ばれるより早くアルが飛び出した。甲高い鳴き声声に、アヤノもふり向きざまに剣を振った。

 刃先がかすめた感触と同時に、ばさりばさりと羽音が聞こえる。

 鳥だ。両羽根を広げれば、アヤノが両腕を広げたよりもずっと大きい。見上げたアルが「おー!」と声を上げる。

「あれ、あれってなんてんだっけ! 写真で見たことあるって!」

 多少デフォルメされているのか、首が細く長く、頭部が薄いあのシルエットは。

「ハゲタカだね。魔法攻撃に気をつけて!」

「おうよ!」

「わかった」

「了解した」

「んもう、このステージったら速そうなのばっかり!」

 ハゲタカが羽ばたき上昇した。それは明らかに、滑空の前触れだった。




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