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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第4ステージ:迷宮
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オラクル Ver. アポロン -7-


 火はまっすぐに伸びて石の地面を焼く。焼きながら、半獣はゆっくりと体を回転させていった。射程はそれなりに広い。しかし動きが遅いので、速度を合わせていっしょに回っていけばいいようだ。

 火噴きの軌道を確認しながら移動しつつ、残っていたトカゲの一方にとどめを刺しておく。

 ほとんど同時に、ダンテがもう一方に錫杖を突き立てた。残数1。これでもう邪魔は入らない。


「一斉攻撃!!」


 ミノタウロスの魔法がとぎれる寸前、ショウが叫んだ。

 ほぼすべてのモンスターの行動パターン。攻撃の後、わずかな間だけ動きが止まる。アヤノは迷わず剣を構えまっすぐ突っ込んだ。

 脚を刺す。すぐに離れる。向こうから銃声が聞こえ、ユーリの召喚獣が啼いた。


 ぐおおおおおおおおおおおおおっ


 ミノタウロスは両腕を振り上げ、思いきり地面に振り下ろした。ドンッと地面が波打つような衝撃が走る。

 大丈夫だ。まだ立っていられる。しかしすぐに、牛人が膝を沈めた。

 突進――そう直感する。

「っ!!」

 地面を蹴った瞬間ミノタウロスも動いた。どすどすとやかましい足音を立てながら。頭を下げて角を振り立てまっすぐに突進していく。

 そのまま壁に激突した。ミノタウロス自体にダメージはなく、壁の方に亀裂が走る。その威力が凄まじいことはよくわかった。


魔法マギア:フロガ!』


魔法マギア:ソーク!』


 ショウの炎系攻撃とユーリの風系攻撃が混ざり合った。ダメージ。苦悶の咆吼を放ってミノタウロスが身をよじる。

 そして不意に右手を、次いで左手を振り回す。何かをつかむ動作。なるほど捕まったら危なそうだ。

「魔力残量は!」

 ショウが壁を駆けながらダンテに視線を投げた。ダンテは難しげに眉を寄せた。

「あと1ゲージ分だ」

「……だったら、」

 1度目を伏せた後はきっぱりと指示を出す。

 迷いは見えない。だから信じて動ける。きっと皆も。


「防御は捨てて、攻撃に回って! 一気に攻めよう!」


 言いながら自分もナイフを投げる。間を置かずに銃声が響き、ダンテとユーリが魔法を放った。

 その時だった。

「!」

 アヤノの脳裏で、ポン、とメッセージ着信音が鳴った。こんな時になんなのか。無視しようと思ったのだが、その前に勝手に画面が開き、否応なく目に入った。



『 ショウ に き を つ け て 』



「……え?」

「アヤっ」

 さすがに気を取られた。そこへミノタウロスの魔法が襲う。ショウが飛びついてきてアヤノもろとも石床を転がり、ぎりぎりで炎を回避した。

「どうしたんだ!」

「ご、ごめん」

「ショウ、アヤ! よけろ!!」

 目を上げるとミノタウロスが腕を振り上げたところだった。

 アヤノはとっさに動けなかった。その視界にショウの黒服が覆い被さる。そして離れた場所でダンテの声。


魔法マギア:カタラクティス!!』


 水の防御壁が2人を覆う。が、完全に防ぎきることはできなかったようだ。

 ショウの生命力ライフゲージが少し減った。アヤノは思わず声を上げかけたが、無理やり抑えて代わりに剣を突きだした。

 なんとか手先にかすらせた。ミノタウロスが1歩下がり、その隙に揃って跳ね起きる。

「生きてっか!?」

「僕は平気だ、アヤは!?」

「大丈夫!」

 きつく剣を握りしめる。駄目だ、ここで気を散らしていては。

 もうこれ以上迷惑はかけない。決意と共に牛の頭部を睨みつけた。あのメッセージは、後でまた確認する。


召喚獣プロスクリシー!!』


 大蛇の攻撃にアルが続く。アヤノも駆けて、連続で足下を斬った。

「ショウ君! 私の魔力ゲージ、そろそろカラなんだけどぉ!」

「下がって、自分の防御に専念してて!」

 ダンテよりも先にユーリが限界に来ていたようだ。しかしユーリのことだ、言われなくても身を守るだろうから大丈夫、のはず。

「あーくそ、さすがに体力ありやがるな!」

「俺も、もう最低限の魔法しか使えそうにない」

「わかった――ダンテも補助に戻って、いざというときの防御に備えて!」

 その時だった。

 ミノタウロスが吼えた。次いで、大きく足を上げた。

「……あれ?」

 そこでアヤノは瞬いた。元から牛の頭は黒いものなのだが、それにしても。


 ――からだ……黒くなってる……?




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