オラクル Ver. アポロン -5-
2組に分かれてからそこそこの時間が経った。内心の焦りが募ってきたところで、やっと、グライアイがアヤノ達の姿を捉えた。
「地図に映る範囲じゃないけど、道のりはそんなに長くないみたいよ」
心境の変化があったのか、ユーリは自分から情報をくれるようになった。素直によかったと思う。この点に関しては2人きりになったことがプラスだったかもしれない。
それはそれとして、足を速め前方へ指を伸ばす。
『魔法:スピサ!!』
火の攻撃魔法を放つ。ちょっと、とユーリが声を上げたのに構わず突っ込んで薙ぎ払っていく。
ここまで遭遇した敵はすべて倒した。向こうはどうだろう。無理をしてはいないか。時々暴走するアルとアヤノを、ダンテがうまく止めてくれているといいのだが。
「ショウくん、その先左」
「わかった」
オラクルエリアの迷路は毎回変化する。一度道のりを覚えても次には変化しているのだ。普段ならそれがおもしろいのに、今はもどかしさしかない。
走る速度を更に上げる。ユーリが追ってきているかだけ注意しながら、角を折れた。
「――あ!」
目が合った。鮮やかな黄金色の瞳。
短い赤毛と黒いマントも目に入った。……3人、いっしょだ。
「よかった……みんな無事だね」
「ショウ!」
切羽詰まったアルの声に甲高い悲鳴が重なった。アヤノがコウモリを斬ったのだ。その向こうにまだ敵がいる。
全部で、6体――?
「みんな下がって!」
3人は全力でこちらへ駆けてきた。最初から逃げていたのだ。しかし逃げる間に追っ手が増えてしまったのだろう。これでは手に余ったはず。振り切るにしても、数を減らした方がいい。
『魔法:アフティダ!』
まだ魔力回復アイテムには余裕がある。続けざまに手持ちの最強攻撃魔法をたたきこみ、2体を消した。これで選択肢も増える。素早く確認すると、アヤノもアルもある程度生命力が減っている、これは問題ない。どうやらダンテの消耗が一番激しい。魔力ゲージが減ったままだ。
「回復アイテムは残ってる?」
「ある」
「そりゃあまだ……ってか、今それ聞くか?」
「ダンテは」
残っている敵に意識を残しながら、ダンテはかすかに眉根を寄せた。
「……魔力回復アイテムを、使い切った」
「やっぱり」
アヤノとアルが驚いた顔でダンテを見る。しかし今はかまわずに、手で合図を送る。
「走って! とりあえずこいつらを撒いてから――」
「ショウ」
アヤノが袖をつかんできて、じっとこちらを見上げた。
「やれないかな」
「え」
「みんな揃ったから。あと4体」
やれないことはないはずだ。自分が本気を出して戦闘に加われば。
けれど危険性は。確実にやれるのか。全員、確実に守れるか――
ほんの1秒思い悩んだ傍らで、不意にアルが息を吸い込んだ。
『システム:ギフト:チェック:ダンテ:ネクタル!』
アイテム交換の発動。したのはアルだった。“ネクタル”は魔力回復アイテムだ。敵を倒してドロップしたものを持っていたのだろう。
「オレは魔法使わねーかんな。ダンテ、もう少しやれるか?」
「それ、わたしも持ってる。あげられる」
蜘蛛が飛びかかってきた。しかし落ち着いた様子でアルが撃ってはじき返す。同時にアヤノが斬りに行く。ショウも反射的に投げナイフを放っていた。
これでもう、戦う方向で決まったようなものだ。
『システム:ボックス:ネクタル』
受け取ったアイテムを消費し、ダンテが身構える。ユーリも仕方なさそうに錫杖を上げた。
『魔法:アンベロス』
『使役獣召喚:ヒドラ!』
即座に全員の意識がまとまる。同じ目的に向けて動く。
このまま、“紋章”を獲りに行く。
ショウは大剣を構えながら、かすかな笑みを浮かべている自分に気付いた。いつもは律している感情が胸中に湧く。それを抑えるために、あえて口にした。
「本当に……楽しいな。このメンバーでやるのは」
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