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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第4ステージ:迷宮
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ディスリスペクト -3-


 “テオス・クレイス”に戻ってきたダンテは、無表情のまま眉根を寄せた。黒い視線の先にいるのは、ユーリだ。

「やはり連れて行くのか」

「うん」

「……ショウ」

「言いたいことはわかるつもりだよ。だけど」

「ユリウスの行動は勝手が過ぎる。俺は反対だ」

 もちろんユーリも近くにいるのだが、ダンテははっきり言い切った。その後に腕を組み重々しいため息をつく。

「しかし、お前の立場ではそうも言っていられないのだろう。それは理解する」

「うん。助かるよ」

 と、そのそばでユーリがツンとそっぽを向いた。ひとりごとのようなつぶやきはあからさまに喧嘩腰だ。

「なんだかねぇ。かぁんじ悪ぅ」

「お前の言えたことか」

「なによぉ、先につっかかってきたのはそっちでしょぉ?」

 ダンテとユーリがにらみ合い、険悪な空気が漂いだす。そこへショウが「まあまあ」と恐れげなく割り込んだ。

「状況が状況なんだから争ってても仕方ない。2人ともわかってるとは思うけど」

「……ああ」

「私は別にどうでもいいんだけどぉ? そっちに合わせてあげてるだけなんだから」

「お前」

 ダンテの表情が暗くなる。その目の前を、さっとショウの手が遮った。

「ダンテ」

「……。わかっている」

「それじゃあ先に進もう。ユーリ、オラクルエリアまで、誘導してくれるよね?」

「……っ、しょうがないわね」

 若干怯んだ様子を見せ、渋々という体でユーリがうなずく。やりこめられたせいかショウには苦手意識を持っているらしい。この調子なら、ショウがいる限り単独で突っ走ったりはしないだろう。

 しかしなんとなく、何か違うんじゃないかという思いがアヤノにはあった。

「ダンテはこのステージは初めてだっけ。今回でいきなり“オラクル”まではいけないかもね。道筋だけ確認できれば収穫ってところかな?」

 例によってショウを先頭に、再びバトルフィールドに出た。今度はしばらく進んでもなかなか敵が出てこない。遭遇は確率によるというからこういうこともあるのだろう。が、なんとなし逆に落ち着かない気分になっていると、気がついたらしいアルに笑われた。

「意外と好戦的なんだよなー。リアルでもそんな風につっこんでくタイプか? 怖そうだよなー」

「……」

「? アヤ?」

「なんでもない」

 少し、というかかなり、嫌な気分になっていた。

 聞きたくない。その話は。なんとなくではあるけれど。

「お、おいなんだよ、怒るなよ」

「怒ってない」

「2人ともどうかした?」

 アルのあわてた様子にショウが下がってきた。アヤノは「なんでもない」と首を振るが、アルが何やら妙に凹んだようだった。ショウが首をかしげて一言二言とささやきかける。アルも何か短く返し、ぶんぶんと頭を振った。


「あらぁ。やっとおでましね?」


 その時、ユーリがのんびりと錫杖を立てた。

 敵が出現する。今度はトカゲと、蜘蛛が2体。蜘蛛は第2ステージのボスほどではないものの、やっぱりぎょっとするような大きさだ。

 横手に剣を構えたアヤノはトカゲを狙い飛び出した。あれとの戦い方ならもう知っている。そうして突きの構えに入った視界の端、ダンテがショウに耳打ちする様子をちらりと捉えた。


魔法マギア:アンベロス!』


 直後、ダンテの聞き慣れない呪文を聞いた。刃を突き立ててダメージを与え、飛び退いたと同時に視線を投げる。

 片方の蜘蛛にツタが巻きついていた。ツタは壁の隙間から生えている。これが魔法なのだろうか。

「アヤ!!」

 ショウの叫びに身を伏せた。その頭上を白いものが鞭のように薙いでいく。あれは、蜘蛛の糸だ。

「攻撃パターンは第2ボスと似てるよ、踏みつぶしもあるから気をつけて!」

「あっ」

 言ったそばから蜘蛛が跳んだ。ドンッと音を立てて地面に下りる。幸い当たり判定はなし、しかもちょうど攻撃をかけるのにいい距離感だ――と思ったが、斬りかかろうとすると蜘蛛は糸を吐き、その上を滑るように向こうの壁へと跳んだ。

「攻撃当てにくい……」

「コツつかむのがちーっと難しいよな」

「基本は今までと同じだよ。見極めて、攻撃を避けつつ隙をつく!」

 ツタが捕らえる蜘蛛にアルが撃ち込んでいる。アヤノはその時ふと思い立ち、銃声に負けないように叫んだ。

「どんな敵でも、どこかに必ず隙がある、ってこと!」

「――正解!」

 返ってきた声にアヤノはうなずく。それならやれるはずだ。ショウの言うように。これまでと同じように。


魔法マギア:ニネミア!』


 ユーリが自分の周囲に半球状の壁を築いた。と同時に火球が飛んだ。火は壁に当たると吸い込まれるように消えたが、逸れたひとつがアヤノに向かってきた。


紋章クレスト:クリノス!!』


 とっさの詠唱で火球をはじき返し、百合の盾が消えるか消えないかのうちにジャンプする。

 狙うは蜘蛛の糸。壁に飛びつこうとする寸前、そのための糸を切り払った。




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