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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第4ステージ:迷宮
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ディスリスペクト -2-


 フィールドの道幅は思ったよりも広かった。たぶん、森の中の道よりもいくらかましだ。その代わり登れないよとショウに言われ、試しに垂直の壁を駆け上がろうとして、見事に足を滑らせた。

「痛った……」

 したたかにしりもちをつき思わずうめいていると、アルとショウが両側から手を差しだしてくれた。

「なーにやってんだお前は」

「だから言ったのに。大丈夫――」

 手を握ったところで、ショウがふと笑みを消した。

「アヤ、今なんて?」

「腰打った」

「ったく、しっかりしろよ」

「そうね。しっかりしてちょうだい」

 ずっとむっつり黙っていたユーリがようやく口を開いた。しかし声音は低く、少しの緊張を帯びていた。

「敵が近いわ」

「アヤ」

 ぐいと引き上げられ、手が離れると同時にアヤノも剣を抜いた。

 黒い陽炎が立つ。形をとる。

 現れたのは、アヤノが腕を広げたほども体長のあるトカゲが2匹。まっ黒な頭からちろりと舌が伸び、カッと赤い口を開いた。


「回避!」


 ショウの声を待たず全員が動いた。吐き出された炎のような球体が次々と飛んで壁を焦がす。ひとしきり吐き出すとトカゲは壁を走り、不意に止まって尾を上げた。

「!」

 アヤノは反射的に剣を振り下ろした。しかし「カンッ」と音を立てて刃を弾かれる。尾が予想外に硬いようだ。

 まだ何か、攻撃を通すために必要な条件があるのか。


「トカゲの炎は魔法攻撃だから、アヤは気をつけて!」


 ショウに言われはっとして跳び下がった。アヤノの魔法耐性は低い。攻撃力、体力にすべての数値を割り振っているせいだ。唯一の指輪アイテムで強化はしているが、他の3人とは比べものにならないという自覚はある。

 足手まといにはなりたくない。


魔法マギア:エクリクシー!』


 ショウの攻撃魔法。炎が爆ぜてトカゲの1体を焼きもう1体の足をかすめた。

 直撃した方が地面に落ち、動きが止まる。すかさずユーリが杖を上げた。


使役獣召喚プロスクリシー:ヒドラ!』


 蛇の攻撃でさらにダメージが飛んだところへアルが撃ち込む。その間にショウはもう1体にナイフを投げた。アヤノもそちらに向かい、片手で剣を突き出た。

 届いた。トカゲが鋭く啼いて地面に落ちる。これはつまり、『斬る』よりも『突く』が有効なのか。

 そして、たぶん地面に落ちた時が攻撃チャンスだ。

「アヤ」

「ん!」

 ショウと2人がかりでダメージを与え、尾を振り上げたところで離脱する。

 トカゲはするすると動いて壁を上り、再び大きく口を開いた。


「お、っら!!」


 続けざまの銃声。アルの攻撃で2体目が消える。するとショウが、安心したように息を吐いた。

「やっぱり防御魔法があるとないとじゃ、気分的に大違いだなぁ」

「ダンテ?」

「うん。このパーティでそれ持ってるのはダンテだけ――いや、ユーリもだけど」

「あらーよく気付いたわね」

 そういえば。戦闘中にそんな場面が視界の端をかすめた気がしないでもない。それを肯定するように、ユーリが軽く顎を反らせて鼻を鳴らした。そしてショウはそこへ綺麗な作り笑いを返す。

「君は自分を守るときにしか使わないみたいだからね。広域防御を持ってるかどうかってところでも、ダンテとの違いは歴然だよね」

 この発言はさすがにカチンときたらしく、ユーリの眉が跳ね上がった。

「なぁにぃ、私の方が劣ってるみたいな言い方してくれちゃってぇ」

「うん? そんなことは言ってないよ?」

「……ま、別にいいけどぉ」

「アヤ、アル」

 無視するような形でふり返ったショウは、申し訳なさそうに肩をすくめた。

「悪いんだけど、もう1戦くらいやったら1度戻ってもいいかな」

「したらダンテを待つってんだろ。りょーかい」

 先にアルが答えてしまったのでアヤノはただうなずいた。ダンテもいっしょに行くのだから、できるなら戦うのもいっしょがいい。

 そう思っているうちに向こうの方でまた陽炎が揺らめき始めた。

 アヤノ以外の3人にはまだまだ余裕があるようだが、危険はいつだってどこに転がっているかわからない。他の方向にも注意しながら、アヤノは剣をかざした。



            * * * * *



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