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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第4ステージ:迷宮
54/200

ディスリスペクト -1-


「――お、ショウ。なんの連絡だった?」

「ああ……うん。途中で横槍入っちゃって。また改めて」

「そりゃ災難だな。行ったり来たりって疲れんだろ」

「それは、大丈夫なんだけど。……何やってるの3人とも」

 ショウがなんとも微妙な顔で言うのをアルが笑う。

 ちょうど、アルとアヤノは殴り合いの体で腕を交差させたところだった。ちなみにユーリは少し離れたところでしゃがみ込み、自分の膝に頬杖をついている。アヤノ達をむっつりと眺めていたのが、今はショウに視線だけ向けていた。

「見りゃわかんだろ。訓練だ!」

「うんごめんわかってた。前もそうだったね。相変わらずだねアルは」

 つられたように苦笑したショウは、ふと力を抜いたように見えた。何かあったかと口を開きかけるが、やめた。その口調やそぶりから、聞かないでほしいと言われている気がした。

「退屈なのはわかるよ。僕も相手しようか?」

「ねぇーえー、それだとこっちは退屈すぎて死にそうなんですけどぉー?」

 口を尖らせながらユーリが立ち上がった。それはもう不機嫌そうに半眼で睨みつけるが、もちろんそんなことでショウは動じない。

「仕方ないな。ダンテには連絡しておいて、先に第4ステージに向かおうか?」

「まだその方が気が紛れそうね」

「お」

 アルが小さく声を上げた。嬉しそうに見えるから、やっぱりその方がいいと思っているのだろう。

「アルとユーリは鍵4つみたいだけど、どの辺まで?」

「オレは2、3回フィールドに出たくらいだ」

「私は“オラクル”手前まで行ったわよ。けどねぇ。あのステージったらあれだから」

「うん……あれだね」

「アレ?」

「あー。あれだな」

 経験者達の共感にアヤノは入っていけない。それで眉をひそめていると、ショウの青い眼がこちらを見る。

「ちょっとね。独特なステージなんだよ」

「ま、行ってみりゃわかるって」

 アルは半分苦笑いだ。不得要領のままうなずくと、ショウが手招きしながら、もう片方の手で鮮やかなオレンジの石の鍵を取った。

「行こう」

 第4ステージへ。飛ぶ。

 慣れた調子で光が消えてから目を開く。ふり返れば“はじまりの扉”と、先に着いていたショウの姿。後からすぐにアルとユーリが現れた。

 それを確認してからぐるりと見回し、改めてショウに向き直る。

「……。そういう」

「な」

「そう。こういうところ」

 背の高い壁。焼いたままの煉瓦のオレンジ。第3ステージで見た森のように、見渡す限り壁が連なっている。まるで――


「第4ステージは“迷宮”のステージ。バトルフィールド自体も迷路になってる。まずは神殿にたどりつく道を探さなきゃならないんだ」


 納得した。“オラクル”に行くにもそれなりに時間がかかりそうだ。さっきしみじみと言っていたのはこれか。

地図マップは、やっぱり」

「表示される範囲は限られてる。アルテミスの“紋章クレスト”に索敵範囲を広げる効果はあるけど、制限時間がそんなに長くない」

「そんでオレも手こずったんだよなー」

「だけど。今の僕達には奥の手がある」

 視線が動きユーリを捉えた。それに気付いたユーリがぱちりと瞬き、思いきり顔をしかめる。

「私ぃ?」

「そう。君だ」

「ちょっとぉ勝手なこと言ってくれるじゃなぁい!?」

「君の持ってる“グライアイ”、このステージにはぴったりだよね? それに、オラクルエリア手前まで1度は行ってるんだよね? ……たよりにしてる」

「んもう、ひとのこと使い倒す気満々な顔しちゃってぇ!」

 などと言いつつ、そろそろあきらめが勝ってきたのかもしれない。いやそうではあるが拒否する気はない様子で、手慰みのように錫杖を揺らす。

「しょうがないわねぇ、まったく!」

「ありがとう」

「どういたしましてッ!」

「……まだ、ダンテが来るまで時間がある」

 ふと独り言のようにつぶやいて、ショウは何か考えるそぶりをした。それからまた目を上げる。

 表情は笑顔のようだ。ただ、無理をしているように見えなくもなかった。

「どうする? 一応4人いるし、さっそく少しだけ出てみる?」

 反対はなかった。「やっぱり」と言いたげに、ショウはセーフティエリアの外を見やった。

「この近くで、少しだけね」

「よっし!」

「危なくなったらすぐに戻るよ?」

 ショウが言い終える前に、アルが足早に歩き出していた。アヤノもすぐに後を追う。ちらりと見返れば、ショウはユーリが仕方なさそうに動き出してからその横をついてきた。



            * * * * *




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