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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第3ステージ:森林
47/200

オラクル Ver. アルテミス -5-


 表示されている敵残数――5。

 大きく息を吐いたショウが、4人を見回してから木立の一角を指さした。

「さあ、これでラストだ」

 自然と緊張感が高まった。重苦しい緊張ではない。このメンバーならきっとやれる、他の皆もそう感じているという二重の確信から、気分が高揚していく。

 そんなところへ、ふとアルが言い出した。

「そういやユーリは、オラクルの完クリしたことあんのか?」

「残念ながら、まだよ。ふふ、まさか“紋章クレスト”まで獲りにきてるとは思わなかった。これで本当に獲れちゃったらちょっとお得よね」

 ユーリがくすくすと笑って、近くに呼び寄せたグライアイを手慰みのようにくるくる回転させた。

「ということはもしかして。あなた達、“幻のステージ”っていうの狙ってる?」

 どうやらユーリは第13ステージを知っているようだ。しかも開放条件まで含めて。まだ公式発表があったという話はないが、噂はだいぶ広まってきているということだろう。

「まあ、そういうこと」

「なるほどぉ」

「あ! けどよショウ、ダンテはどうすんだ? 第1ステージのヘラの紋章がないってことは、今のまま進んでも13ステージには行けねーってことじゃん?」

 アルが思い出したように声を高くし、ショウが「そうだね」と視線を落とす。それを見てユーリが瞬いた。

「あら、ダンテは元からのメンバーじゃなかったの」

「俺は第2ステージから合流した」

「ふぅん、道理で。ダンテだけなんだかちょっと感じが違うって、前から思ってたのよねぇ」

「何にしても、ね」

 ユーリを遮るように、ショウが口を開いた。

「途中で引き返して獲りにいくしかないけど、問題は『いつ』ってことかな」

「俺はいつでもかまわない。このステージが終わったらすぐということでもいいが」

 ダンテ本人はそう言った。しかしショウには、まだ迷いを生じる要素が残っているようだった。

「今はみんな調子がいいから、流れを止めるのは、どうかな……」

「高位ステージを先にクリアするということか」

「どっちを選ぶかは、最終的には好き好きだけど」

「ねぇねぇ、今はそんなことより先に進みましょうよ?」

 ぽん、と小さなものが爆ぜる音がして、グライアイが消えた。もう探索は必要ない。ユーリの言い分ももっともなので、ショウもまた前を見た。

「そうだったね」

「おっけ。ここは私も参戦するわよ。少しは魔法だって使えるし」

「知ってるよ」

 ショウがうなずき、アヤノも道中を思い出す。ユーリが何度か攻撃魔法を放ったところは見た。一応は単独で戦えるだけの術を持っているのだろう。さすが、ここまで来ているだけのことはある。


「よし……行こうか」


 ショウの合図で一斉に走り込むと、ぽっかりと開けた空間に第2ステージのボスが立ちはだかった。

 後ろ足で立ち上がり、威嚇するように嘶いたのは――

「鹿!」

「おー、やっぱでっけーな」

「見上げるほどの大きさとは初めてだな」

 口々に言いながら全員が身構えた。と同時に、鹿の周辺で黒い陽炎が湧いた。

 花1体、猿1体、熊2体。

 即座にショウが指示を飛ばす。

「ユーリ、召喚獣で先制攻撃、あとはアヤとアルを援護して! ダンテは防御と回復に専念! アヤ、アル、先にボス以外をたのむ!」

 ショウは背中の剣を抜きながら、もう前進を始めていた。

「その間、僕がボスを削りながら足止めする」

 全員が行動を開始した。ショウがやると言ったのだからやれるはずだ。アヤノは信じて、一番手近にいた猿を片づけにかかった。アルとダンテがすぐに動いたのもアヤノと同じく信頼からだろう。ユーリだけは、どうだかわからないが。


使役獣召喚プロスクリシー:ヒドラ!』


 シャン、とユーリの錫杖が鳴った。

 同時に巨大な蛇が出現し一直線に花へと向かった。振り下ろされる蔓をものともせずに本体に噛みつき、すぐ身をひるがえして熊の方へ。

「アヤ、さっさとやってショウの加勢しようぜ!」

 一緒に駆けてきたアルにぽんと背を押され、一気に足を速めた。

 ぐっと踏み込み、跳ぶ。真上から猿に斬り下ろすと、間髪入れずアルの弾丸が猿の頭を弾いた。


『ヒドラ!!』


 再び蛇を召喚したユーリが、続けてすっと息を吸った。


魔法マギア:ソーク!』


魔法マギア:スィエラ!』


 同時にダンテの魔法詠唱が聞こえ、近寄ってきた熊が風の壁にぶつかりよろけた。

「アヤ、そっち行けっ!」

 アルが猿に撃ち込んでいく。アヤノはきびすを返した。猿の方はもうアルに任せればいい。

 次の標的は熊。

 見定めて、高く跳んだ時だった。



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