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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第3ステージ:森林
41/200

バグ -2-



『プレイヤーの皆様にお知らせです。


 第3ステージにおいて、発生したモンスター数と表示が合わないバグが発生している

 との報告がありました。

 これよりメンテナンスに入ります。

 現在第3ステージでプレイ中の皆様は、速やかに他ステージへ移動いただくか

 一度ログアウトしていただくようお願いします。


 ご不便をおかけしてまことに申し訳ございません。


                                  運営』



「あれ、これってさっきのバグじゃね?」

「そうだね。他でも、起きてたのか」

 ショウの目が細まった。そしてすぐに頭を振る。何を思ったか察したアヤノは、ショウの脚を軽く蹴った。

「ちょ、アヤ、また」

「なんでもかんでも、気にしなくていいと思うんだけど」

 そっぽを向きながらそう言って横目にうかがうと、ショウが微かに苦笑した。

「いや……気にしてっていうか」

「なんだよアヤ、先に言うなよなー」

 アルが偉そうに腰に手を当てた。低い位置から軽くショウを睨み上げる。

「ひとりで全部の問題に対処するなんて無理だろ? 第一そういうのって、本当にお前の仕事なのか? とにかくあんま根詰めすぎんなよ」

「うん。そうだね。ありがとう2人とも」

「ちょい待て、それダメだ。適当に聞き流すときの顔じゃねーか」

「とりあえず第2ステージに戻ろうか。メンテナンスが始められない」

 笑顔でアルを遮ると、ショウは先に立って“はじまりの扉”へ向かう。アルがぷっと頬を膨らませ、アヤノはそれを指で押しつぶしてからショウを追った。

 ショウにも立場がある。気にするなというのもきっと無理なのだろう。だからアヤノは、心配なのはたぶんアルと一緒でも、ショウを止めるつもりはない。

 代わりに自分は、せめて心配をかけないようにしないと。

 早くそうなれるように鍛えないといけない。


『ワープ;セカンドステージ!』


『ワープ;フォースステージ』


 第3ステージから次々と人が消えていく。

 アヤノ達も同じように消えた。――その一瞬。

 何人かのプレイヤーが、“影”を見た。影は3人を追うようにして消えた。

 そのことをアヤノ達が知るのは、もう少し先の話だ。



            * * * * *



 運営から再びのメールは、わずか数時間で届いた。内容は『メンテナンス完了』だったが、そうじゃないなとショウは首を振る。

「異常がみつからなかったんだ、たぶん。報告の方がいたずらだったり見間違いだったりすることがあって、そういうときでも言い回しはこうなる。もちろん同じ報告が続いたら改めて調査するよ」

「なるほどなー。まあ何もなかったんならいいじゃん。じゃ、第3ステージ戻るか? それなりに経験値も稼いだし」

「そうだね……」

 返答と共に漏れたため息。それを見て大丈夫かと聞こうとしたところへ、横からアルが割り込んできた。

「休憩時間足りてねーんじゃん? 休んできたらどうだよ」

 アヤノもうなずく。顔色は変わらなくても、ショウの表情は疲れている。ような気がする。考えてみれば、ダンテや戻れなくなる前のアルと比べて、ショウが休憩のために取った時間は短すぎる。

「いやでも、そういうわけには……」

「ショウ。2人いる。だいじょうぶ」

「ほら、アヤも言ってることだし」

「……だけど……」

 急に口調が弱くなった。

 その時だった。


「あらぁ、もう、どこに行ったのかと思ったらこんなところにぃ」


 甲高い声に3人ともがびくりとした。向こうからユーリが歩いてくる。まだ、連絡のあった時間になっていないというのに。

 まるでアルが“幻想症候群”を発症したときのように――

「ユーリ! どうしてここに!?」

「うん? やーねどうしたの、コワい顔。予定がひとつなくなったものだから早めに来てみただけよぉ」

 あっけらかんと返されて、ショウはつかの間の沈黙の後、力なく息を吐いた。その背中をアルがどつく。

「落ち着けよ。やっぱ休んできた方がいいって。“こっち”で疲労感が出るのは危険信号ってガイドにも載ってんじゃん」

「それは……、そう、だね……」

 とうとうショウも観念したようだった。きっと自覚はあったのだろう。言わなかった――もしくは言えなかっただけで。

「わかったよ。じゃあお言葉に甘えて、休ませてもらおうかな」




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