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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第2ステージ:丘陵
30/200

オラクル Ver. アテナ -5-


 地図マップの端に表示されるカウンターは順調に減っていった。ショウの言ったようにこのメンバーは相性がいいらしい。とにかく3人にかかれば、第2ステージ程度では問題にならないようだった。

 そして。ついに残数5になったところで、アルが大きく伸びをした。

「よーっしゃー! これであとはボスだけだ!」

「? まだ残ってるのに?」

「残り4体はボス戦に出現するんだ。ところでアヤ――君、虫は平気?」

 わりに今さらな質問がショウから飛び出した。これまでに蝶、カマキリ、蜂と戦ってきたのはなんだったというのだろう。

「ボスも虫ってこと?」

「そういうこと」

「……アレ以外なら、だいたい平気」

「『あれ』っていうのは、ゴ」

「それ以上言わないで」

 ぞわりと寒気を感じて腕をさする。あれだけはダメだ。苦手だ。逆にあれ以外であれば、なんとか大丈夫――と、思う。

 ショウはおかしそうに肩を揺らして、進行方向を見やった。

「ほら。あそこ」

 ひときわ大きく隆起した丘の狭間、神殿で見たような門柱が左右に据えられていた。あれがボス戦への入り口らしい。

「心の準備はできてる?」

「おうよ!」

 アヤノとダンテもうなずいた。ショウがふっと口角を上げ、先に立って歩いていく。気負いは見えない。続くアルとダンテにも。だからアヤノもせいいっぱい胸を張って前を向いた。内心ではそれなりに緊張していたけれども。

 柱の間をくぐる。

 そうして目にしたものは、目を疑うような黒い山だった。


「蜘蛛……!」


「アテナと因縁のある“アラクネ”をモチーフにしたボスだ。ほら、ぼうっとしてちゃダメだよ」


 八本の足がうごめいた。節ひとつ分がヒトの身長とそれほど変わらない。さすがに気味が悪い。アヤノは思わず一歩下がったが、横でショウは楽しそうに笑った。

「すぐに一般モンスターも出てくる。そっちを先に片づけるよ。それと、アヤ」

「なに」

「よっぽどあぶないと思ったら“紋章クレスト”を使って。ヘラの紋章は防御力を上げるんだ。ただし、時間制限があるから気をつけてね」

「――わかった」

 うなずいた、矢先。

「出たぞ!」

 2か所に黒い陽炎が見える。アルが身構え、ショウが全体を見渡しながら口を開いた。

「できるだけ固まって移動。ボスの攻撃に注意しながら、1体ずつ確実に倒そう。まずは広域攻撃のある蝶を優先する」

「そろそろ、魔法は解禁か?」

 ずっと省エネを指示されていたダンテが真顔で言う。ショウは軽く笑って、ぴっと親指を立てた。

「解禁」

「了解」

「そんじゃ、いくか!」

 アルの一声を合図に戦いが始まった。


魔法マギア:スィエラ』


 風の広域攻撃。手近に湧いた蜂とボスの蜘蛛にダメージを与えた。時を同じくしてもう少し向こうでは蝶が出現し、また新たに別の場所でも前兆が現れた。

「……蝶が2体か。ついてないな」

 先に出た蝶に接近しながらショウが苦笑した。口振りからして、ボス戦で現れる4体の敵の種類はランダムらしい。

「けど残りは両方蜂だぜ」

「うん、見えてる。余裕があれば同時に狙ってもいいかもね」

「ではひとところに集まっていた場合、積極的に魔法を使用する」

「助かるよ」

「――クモだ! 広域攻撃!」

 アルの叫びに3人が足を止めたので、アヤノも半歩遅れて立ち止まる。途端、緑がかった空一面にぱっと白い網が広がった。

 その名のとおり『蜘蛛の糸』か。

「アヤ、よく見て網の隙間に入って!」

 あっという間に落ちてくる網目の隙間は意外に大きい。今は蜘蛛から離れているせいもあるのだろう。まずは難なくかわしつつ、もし蜘蛛に接近している時にこの攻撃があったら要注意と刻み込む。

「蝶も広域!」

 今度はショウが鋭い声を上げ、足を速めた。

「防御待って! 魔法はできるだけ攻撃に!」

 ショウとダンテが一瞬だけ視線を合わせる。それを横目にアヤノも全力で蝶から離れる。その先には蜂が見えた。

 今なら――やれるかもしれない。

 跳躍。振りかぶって刃を上からたたきつける。偶然だが片羽を削ぎ、蜂は落ちた。

「そのままやって!」

 ショウに言われるまでもなく剣を上げた。そこでふと思いついて頸部に狙いを定め、首を落とすつもりで勢いよく突き立てる。

 思った通りクリティカルヒットが出た。甲高い啼き声を残し、蜂は消滅した。

「……やった」

 つぶやいたところでカウンターが2つ減る。ふり返ると、アルとダンテの同時攻撃で蝶が1体落ちたところだった。

「アヤ、こっち」

 呼ばれてショウに駆け寄っていく。一方でちらりと見やった蜘蛛も不気味に足を動かしつつ移動を始めていた。

 それが不意にぴたりと止まる。狙いを定めるように身を沈め――ジャンプした。

「わ」

 着地の瞬間に地震のような大きな揺れ。アヤノは思わず膝をついた。

 そして顔を上げた時、気づいてしまった。

 再び身を沈めた蜘蛛。その顔が、こちらに向いていた。



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