表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第2ステージ:丘陵
29/200

オラクル Ver. アテナ -4-


「おー、ひょっとして初クリティカルじゃねー?」

「痛いバカ」

「あ? わりぃわり」

「……5体倒した。残りは35だ」

 ダンテが画面を見ながらつぶやいた。黒い瞳をショウに向け、無表情に口を開く。

「“紋章クレスト”獲得のためにはすべて倒さなければならないのだろう。それなりに時間を費やしそうだが、手分けというわけにもいかないな」

「そうだね。悪いけど全員いっしょに行動してほしい」

 ショウはちらりとアヤノを見た。――わかっている。今の実力では、自分はまだお荷物だ。絶対にゲームオーバーにならないと約束したからショウの方針には反対できないが、やはり気になってしまう。

 早く。もっと。

 強くなりたい。

「だけどこのメンバー、いけそうな気がするけどね。今だって2回目の共闘とは思えないくらいやりやすかったし」

「そういやそうだな」

「……それならよかった」

 ダンテの口元にかすかな笑みが浮かんだ。

 しかしそれもすぐに引き締まる。

「まったく、オラクルエリアはせわしない」

 新手だ。空中に2体。確認したところで、アヤノは斜め後ろからのショウの声を聞く。

「この辺で複数相手も経験してみる? 今ちょうどいい機会かもしれない」

 言われてみれば、まだあまり多対一でやっていない。アヤノは敵1体だけに集中すれば済むよう3人がいつも気を配ってくれるからだ。

 しかし、いつまでもこんな調子ではいられない。

「やる」

「うん。じゃあいってみようか」

 軽く肩を押される。それを合図に走り出す。

 ちょうど敵の形が固まった。どちらも蝶だ。第2ステージでは一番厄介な相手のようだがもう止まれない。

 まずは1体。もう片方の攻撃に注意、と心の中で自分に言い聞かせて。

 下段から斬り上げる。ダメージ表示を見てから一瞬ふり返る。と。

「! 早――」

 すぐ後ろまで迫られていた。驚いて止まりそうになった体を無理に動かしとにかく伏せる。なんとかかわした。蝶は頭上すれすれを通りすぎていった。表示を気にしていてはダメだ。遅すぎる。

「……どっち……!?」

 また立ち上がると、いつの間にか最初の蝶も移動していて、どちらがそうなのかわからなくなっていた。

 少し迷ってから思い直す。もうこの際どっちでもいい。どうせ両方とも倒すのだ。

 だから、今の段階で手近な方を。

 そう思いながら剣を握り直した瞬間、また突撃をかけられた。なんとか方向を見て直角に逃げる。が、羽がわずかにかすめたらしい。衝撃と共に生命力ヒットポイントのゲージが少し減った。



「アヤっ……」

 蝶に向けて上がりかけたアルの銃を、ショウは手で押さえた。

「まだ大丈夫だ」

「ほんとかよ!」

「ぎりぎりまでは手を出さない。でないとアヤが経験を積めない」

 アルが顔をいやそうにしかめる。無言の抗議は受け流しつつ、ショウもまったくの平静でいるわけではない。今も片手を短剣の柄から離すことができない。

 それでも、決めたことだ。まだ果敢に挑みかかる後ろ姿を見やって目を細める。

「アヤも強くなってきてるし……大丈夫」

「――あ!」

 アヤノがつまづいて片膝をついた。そのすぐ近くで、片方の蝶が鱗粉を出す体勢に入っている。


魔法マギア!:アフティダ!!』


 とっさに手持ちの最強魔法を唱える。光が奔り蝶を打った。それなりに生命力ヒットポイントは削れていたらしく、その一撃で蝶は消滅した。

 アヤノが一瞬こちらを見た。少し悔しそうな顔。しかしすぐに立ち上がって次へと向かう。

「しょーおー」

「うん……こういうこともあるよ」

 一気に疑わしげになったアルに、ショウはにっこりと笑って見せた。と、そこにアヤノの短いかけ声が重なった。

 蝶が墜ちた。今度こそ自力で勝ったようだ。アヤノはふうっと息を吐き、「どうだ」とばかりの強気な視線をこちらを向けた。

「お」

「ね?」

「なーにが『ね』だよ」

 アルが笑いながら睨んできた。ショウはわざとらしく首をすくめた。



            * * * * *



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ