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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第2ステージ:丘陵
22/200

メッセージ -3-


 例のメッセージ文が頭をよぎり、アヤノは一瞬、肩を震わせた。

「13、って」

「隠しステージなんだ。まだ公式には発表してない。12ステージ到達者がちらほら出てきたから、そろそろかなってとこだったんだけど」

「なもんがあったのか……!」

「それが強制ログアウトとどうつながるのだ」

「13ステージにも“オラクル”がある。それをクリアすると、最終特典の付与の関係で、自動で強制排出される仕組みになってた……はずなんだ。念のためもう一度確認してくるけど」

 もうひとつの強制ログアウト。それも自動で行われるというのが本当なら、『ログアウトできない』という問題は、確かにそれで解決するのかもしれない。――が。

「ただね。難しいよ」

 ショウの表情は硬いままだった。それを見たダンテが腕を組む。

「隠しステージを開くには条件があると言ったな。何をすればいい?」

「……僕の立場から攻略を教えるのは、本当はルール違反だけど……」

 ふ、と息を吐いてから、ショウは顔を上げた。

「開放条件は、全“紋章クレスト”の獲得。つまり12ステージの“オラクル”すべてを完全制覇することだ」

 アルとダンテが絶句する。アヤノは3人の“クレスト”に目を落とした。ダンテが3つ。アルが4つ。ショウでさえ、まだ5つだ。

「お、オレまだ、第4ステージの“オラクル”までいってねーぜ……」

「僕も初心者中心に見回ってたからね。第7ステージ以上は行ったことないな」

「その辺、管理者権限でなんとかなんねーの?」

「僕はシステムの人間じゃないから……一応聞いてみるよ」

「――俺達に、それにつきあえということか」

 ダンテの一言には抑揚がなく、どんな感情を込めたものかわからなかった。しかしショウは、逆に表情をゆるませ肩をすくめる。

「“何か”やるとしたら、それしかないんだよ」

「……。確かに」

「……しゃーねーな……」


「ねえ。ちょっと待ってよ」


 3人の意思がまとまりかけていた。そういう雰囲気だった。

 だからアヤノは、不機嫌に横槍を入れた。

「わたしのことなのに。どうしてそっちで勝手に決めてるの」

「へっ? だって、お前」

 完全な間の抜け顔のアルをきっと睨む。続けてショウと、ダンテも。

 そうして、1歩うしろに下がった。

「もういいよ。自分のことは自分でやる。自分で片づける」

「おいアヤ、どう……」


『システム:』


 最後まで話を向けてくれなかった。思えば『ログアウトできない』とわかってからだ。その前まで、ショウはアヤノにも必ず確認して、話を聞いてくれたのに。

 こうやってなんでもかんでも勝手に決められるのはいやだ。それなら一緒にいたいと思わない。またひとりに戻る方がずっといい。


『フレンド:チェック:ショウ・アレキサンダー:……解除』


「アヤ!」

 焦り気味の声を上げたショウに、アヤノは背を向ける。そのままバトルフィールドへ向かって駆けだした。

 ――しまった、とショウは内心で舌打ちをした。

 アヤノには、過剰とも思える反応を示す語句や状況がいくつかある。そのうちのひとつが『意見を無視されること』。わかっていたのに、つい気が急いた。

 今フィールドに出るのはまずい。特に恐いのはアヤノがこのままゲームオーバーになることだ。ただでさえこれでもかというほど異常な状況で、何が起きるかわからない。

 追いかけなければ。

「待てって、アヤっ……お?」

 まっ先に反応したアルは、もうフィールド領域に踏み出していた。

 それが急に立ち止まり後ずさった。

「アル?」

「お、おいショウ。あれ」

 すぐに追いつくと、ぱっとふり返ったアルの顔色が悪い。指さした先を見れば、草の海のまん中で、むくりと黒い影が立ち上がった。

 モザイクのような表面の様子を目にして脳が警鐘を鳴らす。第1ステージで、突然襲ってきたあげく勝手に消えた謎の物体はまだ記憶に新しい。剣を抜き、2人に声をかける。

「アル、下がって。念のため触らないで」

「なんだあれは」

「わからない。敵キャラクターのバグかもしれないけど。まずは様子を――」

 つい、とダンテが宝剣を掲げた。止める間もなく詠唱する。


魔法マギア:スィエラ!』


 旋風が巻き起こった。風の攻撃魔法だ。それはまっすぐにモザイクに直撃した。

 一瞬ひやりとしたものの、モザイクは思ったよりもあっけなく霧散した。

「……効いたようだ」

「そうだね……何もなくて良かった」

 言いながらぐるりと見渡して。ショウは荒くため息をついた。

「見失った!」

「くっそ、なんなんだよ! このタイミングで邪魔しやがって」

「あれのことは後にしよう。早くアヤをみつけないと、あぶない」

 地図マップを広げる。点々と散る、プレイヤーの位置を表す光。このうちのひとつがアヤノのはずだ。フレンド登録さえ継続していれば居場所くらいはすぐにわかったのだが。

「手分けして端から当たっていこう。みつけたらメッセージで連絡して。ダンテ、気は乗らないだろうけどたのむよ。フレンド登録了承してくれないか」

「……わかった」

 これにはダンテもうなずいた。

 そして登録が完了すると、3人は即座に別方向へ散った。



2章2節 了

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