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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第1ステージ:市街
2/200

ゲームオーバー -1-



『あやの……さ……何してら……るんです……?』


 うるさいな。ほっといてよ。


『パソコ……つけっぱなし……は……』


 だから。ちょっと、うるさいってば――





   ――ねえ。


     僕が……『助けて』あげようか?――



            * * * * *



「!?」


 ざあっと砂嵐が頭の中を駆け抜けた。

 アヤノは思わずひたいを押さえる。ふるふると首をふってからまた顔を上げた。

「何、今の」

 目の前の風景は目を閉じる前と変わらない。白壁の建物が建ち並ぶにぎやかな町。一応、古代ギリシャがモデルらしいと聞いている。

 それに対してコスチュームは自由度が高い。はっきり言って町並みとの釣り合いは微妙だ。甲冑姿、アラビアン、インドのサリーのようなもの、果ては着流しや巫女服まで、とにかくいろいろな衣装が入り乱れている。

 『戦士』が多い。次に『術士』。『召還士』はちらほらとしか見えない。職業の違いはすぐわかる。装備できる宝飾の石が、戦士は赤、術士は青、召還士は黄色と色分けされているのだ。

「……。何してたんだっけ、わたし」

 なんだか頭がぼんやりしている。

 とりあえず腕を上げてみた。手を握って、開く。次に脚。動かして、1歩前に出る。

 そこまで確認して、急にばかばかしくなった。どうしてこんなことをしようと思ったのだろうか。

 ふり返ると、アヤノの身長の2倍ほどもある木の扉が視界に入った。扉だけでうしろに建物はない。そして目線の高さには光の文字が浮かんでいる。


  “はじまりの扉”


 セーフティエリアの中央に配置されている、各ステージの出入り口だ、たしか。アヤノはそれを思い出して首をかしげる。

 自分はフィールドの途中まで進んでいたところじゃなかったろうか。

 ――1回、死んだ?

 と。

「こんにちは」

 突然声をかけられた。アヤノはぱっとうしろに跳び、腰の剣に手をかけた。

「誰」

「ひどいな……あいさつしただけなのに」

 軽く両手を上げたのは『戦士』の男だった。黒髪に青い瞳。革鎧の下に黒い上下という地味な装備だ。見た目が若いのは仕様なので、年齢は判断できない。

「……レベル6。まだ始めたばかり?」

 相手は手を上げたまま、気にした風もなく話しかけてきた。名前とレベルは視覚情報として表示される。彼のレベルは87。名前は――“ショウ”。

 アヤノは顔をしかめながらゆっくりと剣を抜く。

「だったら何?」

「まだパーティ参加もしてないのかな」

「興味ない」

「どうして?」

「他人と馴れあうためにやってるわけじゃないし」

「へえ」

 ショウは肩をすくめ、そろりと手を下ろした。

「タチの悪いやつもいるから、知らない人間を警戒するのは悪いことじゃない。だけどフィールドをひとりで進むのは効率が悪いかな」

「いいの。ほっといてよ」

 アヤノは剣を戻し、ぷいときびすを返した。

 背後からショウの声が聞こえた。


『システム:フレンド申請』


 ぽん、と頭の中で音がする。視界の隅に「フレンド申請」の文字が浮かんだ。

「気が向いたら認証しておいて。縁があったらまたね、“アヤノ”さん」

 ふり返ると、ショウは商店のある方へ向かっていくところだった。アヤノは少しだけそれを眺めてから、自分もフィールドを目指して歩き出した。

 そして、途中でふと立ち止まり、つぶやいた。

「フレンド申請って……なんだったっけ?」



            * * * * *


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