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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第13ステージ:『  』
188/200

フェイク -1-



 ――とうとう、来たね


   ずっと待ってたんだ……待ちくたびれるくらいにさ

   だけど、だから歓迎してあげる



   ようこそ、ぼくの世界へ――



            * * * * *



 無事グリフィンを倒したあと。ゼウスの神殿に戻るまで、皆が皆ほとんど口をきかなかった。アヤノもまた、あまりの実感のなさに沈黙を守る。これで目的地は目と鼻の先だというのに。

 どうしても考えてしまうからかもしれない。

 これで――『終わってしまう』のか、と。

「なあ。オレら、けっこうがんばったよな?」

 ゼウスの前まで来て、ぽつりとアルがつぶやいた。すぐには誰も答えなかったが、ややあって、ショウが短く息を吐いた。感慨深そうなため息だった。

「がんばってたよ。みんな、本当に」

「! だよな! そうだよな!?」

「いろいろあったけど、約束通り、全員誰ひとり欠けずにここまで来られたわけだし」

「……そうだな」

 ダンテまでが少しばかりぼんやりとした様子で零す。

 それを見て、ショウは笑った。


「みんなと一緒に戦って、ここまで来られたこと、心から誇りに思うよ」


 ぐっと胸が詰まった。とそこへ、空気を読まない豪快な笑い声が響き渡る。

 視線を戻した先では守護神ゼウスが満足げに目を細めていた。



『戻ったか! なるほど人間もなかなかやるではないか!


 さて、約束であったな。

 報賞を授ける故受け取るが良いぞ!』



 最後の“紋章クレスト”。やっとだ。12の紋章が揃い、条件が整った。

 とうとう行ける。

 幻の“第13ステージ”へ。



『よくぞここまでたどり着いた。


 我らは汝らの功績を認め、新たなる“鍵”を授けよう』



 ゼウスではない、しかし聞き覚えのある声がして。

 突然頭上から光が降り注いだ。その中から次々と現れたのは、ここまでに出会ってきた11人の神々だ。その輪の中にゼウスも入っていく。これまでとは打って変わって荘厳な雰囲気をまとい、右手をこちらへ差しだした。

 そこから、“鍵”が出現した。

 アヤノは羽根のようにふわりふわりと降りてくるそれを、しっかりと受け止めた。ガラスのような透明の石が収まる鍵だった。

 この色が次のステージと守護神のシンボルカラーになっているはずだが。無色透明となると、一体どんなステージが待ち受けているのか、なかなか想像がつかなかった。



『真に終なる扉が開く』


『扉の先は世界を超えたもうひとつの世界ぞ』


『行くが良い、汝らに勇あるならば』


『行くが良い。世界の真実をとくと見よ』



「え? ちょっと?」

 なぜだかユーリが困惑気味の声を上げたけれど、それより早く、周囲の景色がブラックアウトした。

 数度まばたきしてみてから、アヤノはぐるりと周りを見渡す。が、何もない。すべてがただただ闇だ。他の皆も不思議そうにしている。

「ショウ。これが“幻のステージ”なのか」

 ダンテに見下ろされたショウは、きっぱりと首を横に振った。


「そんなはずはないよ。だってここは本当なら、時空の神“クロノス”が守護するステージで――これまでの12ステージが、ランダムに出現してくるはずなんだ」


「……え?」

 アヤノは目を見開いた。すぐに、頭上でダンテの固い声がした。

「なぜ知っている?」

「え?」

「第13ステージとは、まだ到達した者のいないが故に“幻”であると言っていたはずだ。だというのに、なぜお前はその内情を知っているというのだ」

「……あれ?」

 言われて初めて気がついた、ショウはそんな表情をした。と思うや、その顔色がみるみる白くなっていく。

「そうだよね……なんでだっけ……?」

「ていうかねぇ、私もちょっと疑問なところがあるんだけどぉ」

 ユーリがひらひらと手を振った。おどけた仕草とは裏腹に、こちらも怪訝そうな顔をしている。

「ここの解放条件って、“紋章クレスト”12個の収集なんでしょぉ? でも私、第2ステージのやつは持ってないのよぉ」

「えっ」

「あとで取りにいけばいいかと思ったから、前もって言ってなかったんだけどねぇ」

 そういえばユーリは、決戦前に何か言いかけていた。もしかしなくともこのことだったのだろう。

「はぁ? 嘘だろ? そんじゃあなんでここに来れてんだよ?」

「パーティの大半が条件を満たしていたから、っていうんでもないでしょうしねぇ」

「これは一体どういうことだ?」

 顔を見合わせながら言い合ったところで答えが出るわけでもない。

 それでもショウは、出ない答えをじっと思案していた。いっそ、まるで何かを“思い出そうとしている”かのようだった。

 そこから短からぬ沈黙があって。


「……まさか……ここは……」


 不意に、ショウはそう口にした。




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