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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第12ステージ:天空
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オラクル Ver. ゼウス -6-


「ユリウス。サソリはどうだ」

「まだ、あと半分かしらねぇ?」

「っしゃ! 鷲1匹落としたぜ!!」

「鷲は……1“羽”……?」

 アヤノの冷静な指摘にユーリが軽く噴き出した。

 皆にまだ余裕があるということだ。戦況は悪くない。ひとまず今のところは。


魔法マギア:スピサ!』


 ショウはグリフィンの眼前を狙い火球を放つ。ダメージは通らなかったものの、視線がこちらへ向いたのがわかった。

「こっちだ!」

 ユーリ達からはできるだけ距離をとって。アヤノとアルなら、他の相手をしながら攻撃を避けるくらいはできるはずだ。


「範囲攻撃、来るよ!」


 グリフィンが高度を上げ、大きく羽ばたいた。そこから大量の羽根が矢のように降り注ぐ。ショウは軌道を見定めて後ろへ跳びながら、他のメンバーを目で追った。

「――サソリ8体、オーケーよ!」

 声を上げたユーリの方までは、グリフィンの攻撃はかろうじて届いていない。アヤノ達は期待通り、器用によけながら場所を移していく。各生命力ライフゲージにも大きな減りはない。

 羽根が降り止むと同時にショウはナイフを投じた。狙いはグリフィンの顔と、その後方から猛スピードで向かってくる大鷲の喉元だ。


魔法マギア:プリミラ』


 フィールドの中央に水柱が上がった。甲高い悲鳴はセイレーンのものだろう。確認のため一瞬だけ視線を投げると、ダンテが硬い表情でユーリに問いかけるところだった。

「本当にサソリは先ほどのもので最後か?」

「たぶんねぇ」

「たぶんでは困る。セイレーンの数を割り出すには他の敵の数を差し引きする必要がある。……たのむ」

「わかったわよ、もう1回グライアイで見てくればいいんでしょぉ?」

「ああ」


使役獣召喚プロスクリシー!』


 折り合いの悪かったあの2人も、戦闘となれば意外とうまくやってくれるようになった。そのことには安心しつつ、また無茶なことを始めないようにと意識を向けたままにしておく。

 跳ぶ。大鷲の背中を踏み台にグリフィンの鼻先をかすめる。

 嘴で上腕が浅く切れたけれど、大したダメージは受けなかった。問題はない――

 判断して剣のつかを握り直した時。

「ユリウス!」

 ダンテの声に思わず見返った。

 最初に目に入ったのは動こうとしないグライアイだった。そしてその傍らで、ユーリが地面に両手をつき、背を丸めてていた。

「ユーリ!?」

「セイレーンだ! 1体残っていた……!」

 顔を歪ませながら、ダンテが宝剣を払った。ショウも唇を噛む。群れで動くセイレーンは単体だと体が小さく見落としやすい。そうして一定距離の接近を許してしまえば、麻痺を伴う“歌”の餌食だ。

 一瞬の焦燥。しかしすぐに、ショウは2人から視線をはずした。アヤノが力強く宣言したからだ。


「代わる! ダンテ離れて! ショウの方に!」


 銃声が重なった。アルは変わらず、脇目もふらずに鷲の相手を続けている。

 ならばとショウは叫んだ。

「僕は大丈夫だから! 2人でユーリをフォローして!」

 1人でもグリフィンをユーリ達から遠ざけるくらいのことはできる。大鷲はあと2体いるが、そこはアルがサポートしてくれるだろうし、最悪でもまともに攻撃を受けさえしなければ。

 ユーリが復帰して動けるようになれば。彼は最終兵器とでも言うべき、完全回復魔法を持っている。

「ショウ! 鷲はあと1ぴ……1羽だぜ!」

「了解!」


魔法マギア:スィエラ!』


 背後に旋風の巻き起こる音を聞く。1拍の間。そしてダンテが声を上げた。

「これで心配無用だ! 敵残数、2!」

「! アル!」

 グリフィンが嘴を開いた。その直線上には大鷲と交戦中のアルがいる。それを見て取り、ショウはとっさに叫んだ。


魔法マギア!:エクリクシー!』


「うおっ!?」

 アルの背後ぎりぎりのところで爆発を起こす。その衝撃でアルが前のめりにふっとんだ。多少のダメージは与えてしまっただろう。が、その直後にアルの頭上を衝撃波が行きすぎた。あれが直撃していたら、怪我どころの話ではない。

「ごめん!」

「や、悪ぃ! 助かった……!」

 若干引きつった顔のアルに手を上げて応え、ショウは再び剣を上げる。


魔法マギア:フロガ!』


 炎が残っていた大鷲を焼いた。甲高い啼き声を残し、空中の影が崩れていく。

 残数――1。

 ショウは一瞬で画面を確認し、グリフィンに向き直った。



            * * * * *




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