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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第12ステージ:天空
182/200

オラクル Ver. ゼウス -4-



 ――忘れたくない? ……どうして?


   本当は『忘れたい』って、思ってたんじゃないの――?




            * * * * *



 視界を小さな影が横切った。ショウはとっさに長剣を振り上げそれを両断する。ほろりとセイレーンの輪郭が崩れるのを見ながら、ふと思う。


 ――そもそも僕達は、なんのために戦ってきたんだっけ――


 敵は次々と襲ってくる。そのたびに思考を邪魔されるが、それでも考え続けなければならない。

 でなければ、“また”何かを失うような、そんな気がするから。


 ――この世界の異変を調べる――その動機は正義感? それとも、ただの好奇心?


 誰かにたのまれたからという理由は、自分たちの他誰もいない現状では考えにくい。いやそれより、以前は“誰か”いたのだったか。自分達以外にも。それがなぜか急にいなくなって、それが――それだけが、異変――?


「ユーリ!」


 不意にアヤノが鋭く叫んだ。はっとしてふり向くと、アヤノがユーリの腕をつかんだところだった。狭い岩の足場でバランスを崩したらしい。

「あ、ありがと」

「あっち。アルの足下」

「はいはい!」

 こちらが手を出さなくても問題はなさそうだ。判断して意識的に視野を切り替える。他に何かいないか。危険はないか。対処のための手は足りるか。

 ――ふたつのことを同時に思考しようとすると、いつの間にか戦闘方面に傾きそうになる。もちろん目の前のことだって大事だ、ないがしろにするつもりはない。ただ、一辺倒になってはいけないと、内心で自分を戒める。

「アル、左向こう!」

「任せろ!」

「下も来てる。わたしがやる」

 アヤノが身軽に浮き岩を渡り下りていった。迷いのない動きにたのもしさを感じる。初心者だった頃のぎこちない戦い方を知っているだけに、妙な感動さえ覚える――


「……“初心者”……?」


 なにげなく思い浮かべた単語の違和感に、ショウは思わず眉根を寄せる。が、その正体を掘り下げようとしたところで、名を呼ばれた。

「ショウ! たのむ!」

「!」

 セイレーンの群れが2方向から襲ってきた。とにかくその処理が先だ。ダンテだけではおそらく手に余る。


魔法マギア:エクリクシー!』


 手持ち唯一の範囲攻撃で爆発を起こし、群れの一方を焼く。無論ダンテの魔法には威力で劣るものの、さほど生命力ライフの高くないセイレーンには充分有効だ。

 取りこぼしは投げナイフで順次仕留めながら他の様子を窺う。アヤノが若干押され気味に見えた。けれどアルがもうじき自分の方を片づけられそうだ。そうすれば加勢にいける。

 はず、だった。


使役獣召喚プロスクリシー:ヒドラ!』


 大蛇が現れアヤノの方へ向かっていった。不意をつく形で鷲の頸に食らいつく。

「ユーリ!」

「サソリがいなくて暇なのよぉ」

「おいこらダンテ、ちっこいの残ってんぞ!」

 アルはアルでセイレーンを撃ち始めた。やはり乱戦になってくると、最初の決め事など守っていられない。そうなると文句をつけるより、より状況把握に神経を使う方が適切だ。

「残数はどうなっている?」

「あと、46」

「そんじゃ……これで41だ!」

 アヤノが言うのを、景気良く撃ちながらアルが訂正した。ショウが確認した画面にも同じ数字が浮かんでいる。

 改めて周囲を見回す。敵の影はないようだ。どうやらこれで、先に進めそうだ。

 ――本当に、みんな強くなった。

「なーおい、あれか!」

「うん。あれがボスのテリトリーだね」

「……あれが」

 見上げた先には円盤のような巨大な岩盤が浮かんでいる。

 ここをうまくクリアできれば、とうとう約束が果たされる。が、何よりも先に願うことは、全員が無事に切り抜けること。そのための情報提供は一切惜しまないつもりでいる。

「ショウ、ボスはどんな?」

 アヤノが近くまで来てこちらを見上げた。ショウは金色の眼を見返してから、また上方へと視線を戻した。


「第12ステージのボスは、怪鳥グリフィン。鷲の頭に獅子の体を持つ怪物だよ」




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