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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第12ステージ:天空
180/200

オラクル Ver. ゼウス -2-


 あ、と声が漏れた。そんな考え方があったのかと感心していたところで、ようやくショウの腕の中から解放される。

「ここを抜けたら、また話そう」

「わかった」

「まずは最後の“オラクル”、きっちりこなさないとね」

 言い残してまた登っていくショウと入れ替わりに、今度はダンテが降りてきた。

「アヤノ。本当に大事ないのだな?」

「ん」

「では、先に進むぞ」

 大きくうなずきながら、アヤノは考える。

 たとえばダンテとは、以前どんな話をしていただろう。なんだか他愛ない話もしたことがあった気がするのだけど、よく思い出せない。

 たとえばアルは? 確か弟がいる、と言っていなかったろうか。

 ユーリは、女性らしい振る舞いをしていても本当は男性で、まだその理由は聞けていなくて、


「次が来てるよ! ダンテ、範囲攻撃!」


 ショウからは? 何を聞いた? 何を話した?

 1番長く一緒にいて、1番話して、きっと大事なことを聞いているはずで――


「アヤ、そっちたのむ!!」


 アルの叫び声がやや間延びして聞こえ、そこから一気に感覚が戻った。

 反射的に足下まで来ていたサソリを斬り捨て、視認する間もなく気配のする頭上へ戦輪を放る。短く鷲の啼き声がしたから当たったことは当たっただろう。

 周囲を確認。ダンテがセイレーンの群れの相手している。ショウが補助しているようなのでそちらは大丈夫。それよりももう1体いるサソリが問題だ。さっさと先に片づけて。次に、“上”。

「わたしが行く」

「おう、行って来い!」

 今回はアルが譲ってくれた。アヤノは軽めにジャンプして、突っ込んできた鷲の背を踏んだ。

 渾身の力で後頭を斬る。連続して3回。鷲が驚いて暴れ出したので即座に離脱、置きみやげにもう1度だけ羽に斬りつけておいた。


使役獣召喚プロスクリシー:ヒドラ!』


 召喚された大蛇が鷲ののどぶえに食らいつき、とどめをさした。

 改めて見上げれば他の敵の姿も消えていて、アルが最後のセイレーンを撃ち落とすところだった。

 墜ちていく小さな影が視界をよぎり、少し、胸が痛んだ。

「おっし終わったぜー」

「けっこう登ってきたし、もうすぐ神殿が見えてくるはずなんだけど」

「それって……もしかしてこれのこと?」

 ユーリがふと、指を上へ向けた。

 一斉に視線が集まった。その先には確かに見慣れたシルエットがそびえ立っていた。周囲が半ば絶壁なものだから、もうほとんど目の前まで来ていたのに、言われるまでわからなかった。

「急いで!」

 新手の敵が出現する前にと、神殿内に転がり込む。

 奥の間へ進む。これから一等位の高い神と会うことを考えると、さすがに少しばかり緊張を覚えた。

 そして。



『人の身で、よくここまで参ったものだ。


 何が望みがあるのであれば申すが良いぞ』



 それが主神ゼウスであることは、わざわざショウに確認するまでもなかった。

 鮮やかな金色の瞳に豊かな銀の髭をたくわえた、筋骨たくましい男神。手に持つ長大な杖には確たる形がなく、不規則にあちこちで火花が散る。

「あの杖は雷でできてる。ゼウスは雷を武器として使うと言われてるからだろうね」

「げ。あんな普通に持ってっけど痺れねーのか」

「まぁ“神様”なんだから、平気なんじゃないのぉ」

「しかも最強のね。彼が他の“12神”を救ったって伝えられてるくらいだし」

「そうなのか?」


「――ゼウス。俺達は“オラクル”に挑む」


 ショウ達が話しているのを後目にダンテが宣言した。するとゼウスは、もの珍しげに眼を細めた。



『自ら苦難を望むとは酔狂なことだが、よかろう。


 近頃儂の領分が荒らされておる。

 おかげでおちおち逢瀬も……ああいや、ゴホン』



「おうせ? ってなんだっけか?」

「男と女がこっそり会ってイイコトしちゃうこと、かしらねぇ」

「げ、こいつ遊び人かよ!?」



『ともかくそれを鎮めて参れ!


 さすれば報賞を約束しようぞ! この大神の名にかけて!』




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