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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第12ステージ:天空
174/200

エスケープ -2-



『どうやら、うまくやったようだな。


 さあこれが報酬だ。さっさと持って行くが良い』



 全員が神殿に揃うとすぐ、ハーデースは頼むまでもなく“クレスト”を渡してきた。そのまま猫でも追い払うように手を振られたのが若干腹立たしかったけれど、一番の問題はそこではない。

「ダンテ、さっきの続きだけど」

「ここは状況を鑑みるべきではないか、ショウ。最終ステージが目前にある。まずは攻略に専念すべきだ」

「確かに今までは、そうやって先に進むことを優先してきたけど、1回くらいちゃんと話を」

「なーなー、次のステージってどんなだ? なー!」

「ま、普通に考えて守護神の方はアレに決まってるでしょうけどねぇ」

 アヤノはあっけにとられてダンテ達を順に窺った。ダンテとユーリはショウと目を合わせようとしない。アルでさえさっきの話などなかったかのような話しぶりだ。


 もしかして……聞きたくないのだろうか……?


 ショウに視線を戻しながら、ふとそんなことを思った。アヤノ自身が内心でそう感じていたからだ。

 ショウは何か大切なことを知っていて、なんとかして思い出そうとしている。自分のためだけではなくアヤノ達皆のために。

 しかし、その“何か”を思い出すのは、なぜだか怖くて仕方ない。その怖れを皆も感じているのではないかと想像する。おそらくまったくの的はずれではないはずだという妙な確信をもって。

 アヤノがかろうじて逃げずにいられるのは、“死”というものを軽く見ることにどうしても抵抗があったことと、ショウがいるからだ。ショウが皆のために必死だから。

 そのショウが目の前で肩を落とす様子に胸が痛んだ。思わず駆け寄っていくと、振り絞るようなつぶやきがこぼれた。

「みんな……なんで……」

「……。ショウ」

 約束。

 他には聞こえない程度の声で囁いた。せめて1人は味方がいるとわかってもらいたかった。こちらを見下ろしたショウが、弱々しくはあるが笑顔を見せてくれたので、一応目的は果たした、はずだ。

「ありがとう。……今は仕方なさそうだね。とにかく次をクリアして、13ステージに進む資格を手に入れれば、みんなももう少し落ち着いてくれるかもしれない」

「……」

「行こうか。このままじゃ置いてかれそうだ」

 解決まではまだ遠い。けれどやれることはまだ残っている。まずはそれをひとつずつ片づけるしかないのだろう。

 決意新たに“はじまりの扉”へ到着すると、3人が待ちかまえていた。いつでもワープできると言わんばかりにクレストを手にして。

「待たせてごめん」

「なーなー、次のステージってどんなだ? なー!」

「そんなに焦らないで……まずは移動しようか?」

 普通の話題に戻ったからか、普通に返事が返ってきた。ショウが複雑そうにしたのがわかったけれど、アヤノはひとまず黙っていた。

 皆に倣って鍵を出す。最終12ステージを開く鍵には、太陽のような黄色い石が嵌っていた。


『ワープ!』


 飛ぶ。独特の浮遊感に身を任せながら次のステージを思い描いてみる。このわずかな時間の高揚もまた独特で、戦闘とは趣の違う楽しさがあった。

 本当に、こんな状況でさえなければ、もっと心から楽しかったろうに――


「おおおお、うおおおおおおお!!」


 思考の最中に視界が開けた。アルの歓声はいつものことだが、今回はアヤノも、半ば無意識に声を漏らした。

 眼前には巨大な岩山が聳え立っていた。絶壁とまでいかないがかなりの険しさだ。精いっぱい首を反らせて見上げても、頂上は雲よりもなお上に霞んで窺い知れない。

「さっすが最終ステージだなー……最終は次だっけか?」

「最終、でいいと思うよ。13ステージはボーナスみたいなものだから」

「これってまさか上まで登るわけぇ?」

 あからさまに「面倒」という表情のユーリに少し笑って、ショウも山頂を仰いだ。


「最終ステージは、主神ゼウスが守護する“天空”ステージ。見ての通り縦移動だよ。落下によるダメージはないけど、やっぱり時間のロスがね……」


 足場はそれなりにある。が、安定しているとは言い難い。一気に転がり落ちる危険が少なくない。

 それだけに、なかなか面白そうだった。

「セーフティエリアはどうなっている」

「地上というか、地面に触れてるところというか」

「つまり山そのものがバトルフィールドということになるのだろうか」

「そう。そんな感じ」

「てことはオレ、微妙に不利っぽいなー」

 ショットガン使いのアルが顔をしかめた。基本的に両手の塞がる武器なので、登りながらの攻撃には難がある。仕方がないからと滅多に使わない片手銃を取り出して、ショットガンの片手撃ちとどちらがマシかの思案に入った。ともあれ自動的に、このステージ最初のミッションはアルのサポートということになりそうだった。

「悪ぃな」

「わたしも、いつもしてもらってる」

「つか、こっちはあんま強化もしてねーからな。今残ってる能力値タレンドでちっとくらいやっとくか」

 アルだけでなくダンテやユーリも数値の割り振りにかかった。その間に“モザイク”と思わしき影がいくつか襲ってきたけれど、いい加減慣れたものだ。ショウとアヤノとで順次始末しておく。

 それから全員で山裾を回ってショップを見つけだし、手早くアイテムを補充して。

 そこへ襲ってきた元・店員を撃破すると、あとはフィールドへ出るばかりになった。




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