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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第11ステージ:冥府
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オラクル Ver. ハーデース -7-


「アヤ! 下たのむ!!」

 アルの声が降ってきた。意味はわかる。踏み込んで体ごと回転をかけ、骨の巨人の下肢に斬りつける。


「行っくぜー!!」


 頭上の銃声と共に巨人の体が傾いた。

 追い打ちをかける。刀を大腿骨に打ちつけ、もう片方の手で戦輪を投げ上げる。

 巨人の断末魔に、胸の昂揚を覚える。

「倒した」

「次の来てっか!?」

「いる、あっち!」

「よっし!」

 場所を移す。次の敵は。その次は。

 とにかく倒せ。すべて倒せ。


 倒せ、倒せ――!


「これでっ……ラストだ!!」


 アルが最後に残った骨オオカミのひたいを撃ち抜いた。これで敵残数は1だ。

「「ボスは!?」」

 アヤノはアルと一緒にふり返った。

 それはちょうど、ダンテが氷の魔法を受け損ね、大きく肩を裂かれた瞬間だった。

「!」

「おい大丈夫かよ!」

「こっちだ!」

 動く影とダンテとの間にショウが飛び込み、さらに逆方向へ駆け抜けていく。金色の眼はそれを追って動いた。その間に、ダンテが膝をつきながらも宝剣を握り直す。


魔法マギア:セラピア』


 回復魔法特有の光が散るのを一瞬だけ視界に収め、アヤノもケルベロスの眼に向かって駆ける。

 ダンテは高位の回復魔法“サブマ”を使わなかった。この分ではおそらく、魔力ゲージがほとんど切れている。もう魔法壁の防御も当てにできない。

「すまない……配分を誤った!」

「ここまでみんなを護ってくれたんだから、充分だよ! あとは自分の身を守って!」

 跳び回りながらショウが叫んだ。

 信じたとおり、守ってくれていたのだと確証を得て、今度は自分達の番だと一層奮い立った。

「やろう、ケルベロス」

「おうよ!」

「アヤ、アル! 逆サイド!」

 ショウが指さした方向。回り込んで、曲刀を片手持ちにする。

「戦輪、いきます」

 同士討ちにならないよう、宣言の上で投擲する。眼の付近を狙ったつもりだが手応えはよくわからなかった。これはなかなかやりづらい。

「魔法、来る」

「眼を見失わないように気をつけて!」

 3つある首がてんでに魔法を吐き出す。避けながら観察する。が、困ったことにこれまでの敵とは違った。規則性が見いだせないのだ。

 これまでの敵の攻撃は、ある程度タイミングや攻撃の順番が決まっていた。しかしケルベロスの場合は不規則すぎる。いつこちらから攻撃すべきか、判断しかねる。

 と。


魔法マギア:アフティダ!』


 ショウの手元から光が奔った。アヤノは少し驚く。空系攻撃魔法は有効範囲がピンポイントに近い。相手が見えない状態でヒットさせるのは相当難しいはず。

 そう、思っていた。

「あ……!」

「見えた!!」

 アルが跳んだ。光線はダメージにこそならなかったものの、数秒間辺りを照らした。

 くっきりと浮かんだ輪郭――その、向かって左の頭部に銃口が届く。眉間に弾丸がめり込むのがわかった。初めて、ケルベロスが怯む様子を見せた。

 すかさずアヤノも斬りにかかった。もう光の効果は切れかかっているがもう1度くらいは。


魔法マギア:メテオリティス!!』


 声のした方へ視線を投げると、魔力回復速度を上げる薔薇の紋章クレストを纏い、ダンテが宝剣を手に立ち上がった。

 すぐに視線を戻す。流星のように光が降り注ぐ中に巨大な犬の姿がある。

 逃す手は、ない。

「ダンテ! みんなも無理しないで!」

 ショウが叫んだ気がしたけれど止まることなく駆けて跳んで、斬り続ける。倒さなければこちらがやられる。

「う、おっ」

 まん中の首が雷を放った。避け損ねたアルが脇腹を打たれ、顔を歪めて膝をつく。

「オレにっ、かまうな!!」

 アルは膝を折ったまま、その場で銃を構えた。アヤノは一瞬そちらに気を取られ、はっとして刀を上げた。

 やられた。左腕が炎に焼かれ力を失う。

 直後にその首をショウが切り落としたけれど、残る首は、あとふたつ――


魔法マギア!:エレフセリア!!』


 耳に入ったのは馴染みのない詠唱だった。唱えたのはユーリだ。エリア全体に光が満ちて、焼けたはずの腕がみるみる復元していく。さすがに、驚いた。

「パーティ全員の、完全回復……! いつの間に!」

 こちらも驚愕の表情のショウからユーリの方へ視線を移す。ユーリは笑った。先ほどアヤノを助けてくれたときと同じくらい得意げに。


「私の魔法はこれで打ち止め。あとのことはよろしくねぇ?」




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