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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第11ステージ:冥府
170/200

オラクル Ver. ハーデース -6-


 ともかく自分は自分の仕事をするだけだ。ダメージで足が止まりかかるオオカミに向かい、アヤノは刃を横に構えて突撃した。

 前脚1本。確かな手応えがあった。


魔法マギア:ケラヴノス』


使役獣召喚プロスクリシー:ヒドラ!』


「どうしたノロマ野郎! こっちだ!」

 各々の戦闘の気配を耳だけで追いかけつつ、返す動きで骨オオカミの顔面を割った。

 即座に体を返す。飛びかかってきた2体目のオオカミをステップでかわし、上段から思いきり斬り下げる。ギャ、と潰れた声を残し2体目が地面に突っ伏した。その頸椎を断ち、銃声のする方へ視線を投げる。

 と、巨人に対するアルの背後で、別の大きな影が立ち上がった。


魔法マギア:スピサ!』


 アヤノが駆け出すより早く、骨巨人の顔面に火球が直撃した。よろけた巨人に、音を聞きつけたらしいアルが一瞬だけ目を向けた。さすがショウだ、うまく注意喚起をする。

「アル、うしろ手伝う」

「たのむ!」

 背後でぶるぶると頭を振る巨人の、臑の骨に一太刀。

 よろけたところで後方に回り、背中を踏んで頭上まで跳ぶ。頭蓋後部の割れ目に刃を突き立て一気に引き上げれば、割合簡単に左右に割れた。

「やった」

「っしゃー次ぃ!」

「アルちゃん右見て右!」

 息をつく暇もない。ユーリの叫び声でとっさに前方へ飛び込むと、暗い色の稲妻が背をかすめた。ダメージは回避したものの肌にビリビリと衝撃を感じた。

「っひゃーすげぇな」

「アル、ダメージ」

「そんなマヌケに見えるかよ! 今のはボスの攻撃か?」

「まだだ!!」

 今度はダンテの声がして。ふり返ると、アヤノの目の前に氷塊が迫っていた。

「!?」


使役獣召喚プロスクリシー:プロヴァート』


 それを防いでくれたのは金毛の羊だ。防護膜が消えるのを待たずに直角方向へ逃れながら、アヤノは感謝の合図を送る。手を上げて応えたユーリは得意げに微笑した。

「こっちでも、オオカミ1体やったわよぉ」

「今度はあっちだ! 行くぞアヤ!」

 目ざとく向こうの端に影を見つけ、アルが駆けていく。アヤノは追いかけながら横目に様子を窺ってみた。フィールドの中央辺りでは大きなものが動き回っている気配がする。ダンテがそれを追いかけては魔法を放っていた。

 そちらへは雑魚敵を向かわせない。再確認して視線を切る。

 “ケルベロス”からの攻撃は、ダンテ達がきっと防いでくれるはず。

「今度はオオカミだな」

「1匹なら引き受けるけどぉ」

「いらねーよ!」

 骨のオオカミは4体いるが、アルはやる気満々だ。アヤノの方でもこのくらいなら対処できる自信がある。

 ただし、油断はしないように――冷静に――

「アル。2体ずつ」

「先に片したら手伝ってやるよ!」

「それは、こっちのセリフ」

「お? なかなか言うじゃねーか?」

 アルが意外そうな顔をした。アヤノも、自分で驚いた。こんな挑発的なことを言うつもりはなかった、と思うのだが。

 いや自己分析は後だ。無理やり思考を引き戻して戦輪を手にする。早く周辺を片づけて、ボスにかからなければ。


魔法マギア:クラティラス!』


 耳に入ったダンテの詠唱には珍しいくらい余裕がなかった。ケルベロスの実体をなかなかつかめず狙いが定まらないらしい。そのためだろう、有効範囲の狭い空系の攻撃魔法は封印しているようだ。

 横目に確認してから集中し直し、オオカミを斬っていく。その中の1体にクリティカルヒットが決まった。

 背筋がぞくりと震えた。敵を――決して弱くない相手を、一撃で沈めるのはなかなかの快感だ。これを覚えると戦うのが楽しくなる。

 また強い敵と戦ってみたくなる。


「2体、終わり!」

「こっちもだ!」


 ここまでは順調だ。不意に飛んできた火球を横に跳んで避け、次の敵を探す。すると不意に、目の前を黒い影が覆った。

「また巨人――」

 つぶやきにかぶせて、新たに現れた巨人が雄叫びを上げた。まだもう少しがんばらなければならないようだ。




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