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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第11ステージ:冥府
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シェアリング -3-



『……ワープ』

『ワープ!』


 黒い石の鍵を使い、皆が次々にステージを移動する。アヤノはうしろから2番目に到着し――移動先の光景に絶句した。

 空が黒い。本当にあれが空かと疑うほどだ。逆に、足下に広がる岩と砂地は淡い白に輝いている。その強すぎる対比もあって、異様な圧迫感があった。感覚としては洞穴や迷宮のステージのような閉鎖空間にも近い。

「なんか……地獄、みたい」

「うん。ほとんど正解」

 思わずこぼしたつぶやきに答えが返る。横目に窺うと、ショウは薄く笑みを浮かべていた。


「第11ステージは、死者の王ハーデースが守護する“冥府”のステージ。ハーデースはポセイドンと並ぶ主神の実兄で、天、海、冥界と世界を3分したうちの1人。かなり上位に立つ神様だね」


 やはり、とダンテがうなずいた。その横ではアルが興味深げに辺りを見回している。

「ちなみに冥府っていうのはいわゆるあの世だけど、地獄というよりは、単に死者の行き着く先って位置づけかな」

「へー、あの世ってこんななのか! 血の池とか針の山とかはねーんだな!」

「あった方がよかった?」

「なくたっていいけどよ、あったらそれっぽいかもな!」

「そうしたものがあったなら、このステージにおいての環境的ハンデになっていたのだろうな」

「あ、そのことなんだけど。少しいいかな」

 ショウが軽く手を上げながら言う。ダンテが視線で先をうながし、アヤノも他の3人も、ショウに注意を向けた。

「血の池や針山の代わりに、ところどころ川が流れてる。それに気をつけて。間違って踏み込んだら、生命力ライフをごっそりやられるよ」

「……川」

 この近く、セーフティエリア内にそれらしきものは見えないから、フィールドより外にあるのだろう。

「川とはどのようなものだ? なにか特徴が?」

「ぜんぜん。“忘却レテの川”、って名前はついてるけど、見た目は普通だし、あまり大きいものじゃないはず。……だからこそ厄介なんだよね」

「そういうことか」

 火山ステージの溶岩溜まりなら、見るからに危険だからきっと避けて通る。が、ただ水が流れているだけなら。

「うっかり、油断しそうな気、する」

「なるほどねぇ。せいぜい注意しなくちゃねぇ」


魔法マギア:スィエラ』


 唐突にダンテが風の広域攻撃を放った。アヤノも気配は感じていたけれど、セーフティエリアで出現した敵なら迷うことなく“モザイク”だ。魔法一撃で一掃できることもわかっていた。

「やはり、属性の制限なく魔法を使えるのは有難い」

「動きもな!」

 アルが嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねた。前のステージでの動作制限がよほど堪えたらしい。アヤノも軽く足踏みしてみる。水の中での動きも慣れればそれなりに楽しかったけれど、普通に動ける方が断然ストレスフリーだ。

「アイテム補充の後にフィールド出る。何にせよ様子を見なければ」

「おうっ」

「はいはいわかったわ」

「了解」

「あ、そうだ」

 ふとショウがふり向いて、こちらを見た。

「“戦輪”も補充しといていいと思うよ。さっきくらい使えれば、もう心配ないんじゃないかな」

「!」

 一呼吸置いて、アヤノは視線を落とした。――頬が熱い。たぶん赤くなっているのではないだろうか。

「そう言ってくれると、安心する」

「そっか。がんばって」

 まだまだ気を抜いて良いレベルではないにせよ。こんな風にショウのお墨付きをもらえれば、多少は自信になりそうだ。


「15分を目安に出立する。各自速やかに準備を整えるよう」


 改めての号令。それぞれが必要なもののために動く中、ふとアヤノは肩越しにふり返った。

 1人、ショウがまだその場に留まっていた。何か考え込んでいるように見えたが、目が合うと、「なんでもないよ」とでもいうように笑って手を振ってきた。

 それは同時に、放っておいてほしい、という主張にも見えた。



            * * * * *




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