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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第11ステージ:冥府
158/200

シェアリング -1-



 ――あーぁあ、

   せっかく忠告してあげたのに


   君達さ……今のままじゃ…………




            * * * * *



 アヤノは新しい“鍵”を頭上にかざした。ポセイドンから受け取った、第11ステージを開く鍵だ。石の色は、艶のある黒。

「まっ黒」

「すっげ黒いな」

「終わりも近いステージ、そのカラーが黒か。……ということは、次のステージは」

「なんとなぁく想像つくわねぇ」

 ダンテが言いかけたところをユーリが横取りした。アヤノは小首をかしげる。それだけのヒントで本当にわかるものだろうか。

 そう思っていたら、すぐ後ろでショウの忍び笑いが聞こえた。

「知ってる人は知ってるってだけだから」

「?」

「どうせこれから向かうんだし、直接確かめればいいんじゃないかな」

 それもそうだとアヤノはうなずいた。同時に、こっそりとショウの顔を窺ってみる。

 あの後。結局ショウから明確な意思表示はなかった。今も一緒に行動しているし、こんな風に少しは笑ってはくれるけれど。移動の時にやたらと距離をとるようなことはなくなったけれど。

 本当のところは何を思って、感じているのだろう――


「アヤノ」


 鬱々と考えていたところでダンテに肩をたたかれた。そういえばと、前に取り付けた約束を思い出す。

「次へ進む前に小休止だ」

「あ? いつもよか早くね?」

「時間は普段よりも短くする」

「いや、そりゃいいんだけどよ……」

「最初の見張りは俺が務める。それとアヤノ、いいか」

 怪訝そうなアルをよそにてきぱきと指示が飛ぶ。見張りの2・3順目もすぐに決まって、ほどなく、皆がそれぞれ寝に入った。アヤノはダンテと2人になった。

「……」

「……」

 どちらも口数の多いタイプではないので、少しの間沈黙が続いてしまう。しばらくはぷくりぷくりと、海中の気泡のはじける音だけが聞こえた。

「……、あの」

 アヤノは小さく息を吸い、思い切って口を開いた。先ほどのオラクルの前に、話がしたいと持ちかけたのは自分の方だ。

「さっきの話で……気になったことがあって」

「さっきとはいつのことだ?」

「前の、休憩のとき。ユーリと“ファントム”の話、してたよね……?」

 ダンテの表情が動いた。わずかながら気まずそうに眉間を寄せる。アヤノも軽く首をすくめた。本当ならあれは密談だったはずだ。それを、あの時たまたま考え事で眠れなかったために、ばっちり聞いてしまった。それがどうしても気になって仕方がなくて。

「あれか」

「ごめん」

「謝ることはない。新しい情報を得られるのは助かる。話してくれるというのなら、ぜひ聞いておきたい」

 アヤノはうなずいた。うなずき返したダンテが、改まって正面に向き直る。


「まず問おう。あの“ファントム”について、お前はどう思う。あの男が何を目的として行動しているのか。そしてあれは、敵か味方か」


 なんとなく横に視線を流しながら、アヤノは少し考えた。

「“ファントム”。戦士。いろいろ慣れてる感じだったから、長いこと、戦ってきたんだと思う。頭は良さそう……だけど、短気」

 ひとまず思いつくままにぽそぽそと挙げ連ねてみる。しかし彼の目的はというところで思考が行き詰まる。改めて問われてみると、意外にぴんと来なかった。

「本人は……世界の異変をなんとかしたい、みたいなこと言ってた。でも、」

 言葉を切る。ファントムの話がウソだったとは思わない、が、何かどうしても引っかかるものがある。最後にいきなり怒鳴られてむっとしたということもあるかもしれないが。

「『でも』?」

「……なんとなくだけど。“味方”なのかな、って……」

「そうか。その点については俺も疑わしく思っている」

 ごくあっさりと肯定してくれたダンテは、ゆるく腕を組みながら、眉の間を狭めた。

「そもそもあのやりようは道に悖る。パーティメンバーを個別に呼びつけ、それぞれに疑念を吹き込むなどと」

「同じこと、ダンテにも?」

「同じ類のことと推測する。いずれにせよ、俺達のうちの誰にも肝要な情報は明かしていないということだ」

 何事か思い返す様子で、ダンテは視線と、声のトーンを落とした。

「奴が口にしたのは異変の“原因”ばかりだ。それを修正する意志が聞こえてこない。単に独力で解決するつもりか、そうでなければ、“修正”は元より目的ではないのか」

「!」

「全員で情報を共有すべき段階にあるのかもしれん。敵が増える可能性があるのだとすれば」

「……敵」

 アヤノは知らず唇を噛んでいた。

 ファントムが“敵”である可能性。それをショウにも伝える。もしかしたら、昔なじみかもしれないのに。それを思うと気が重かったし、怖くもあった。

 けれど逆に、いっそすべてを吐き出してしまいたい気持ちも、ないわけではなかった。



            * * * * *




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