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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第10ステージ:海底
156/200

オラクル Ver. ポセイドン -7-


「アヤ!! 斬れ斬れ!!」

 立て続けに撃ちながらアルが叫んだ。言われるまでもない。アヤノは迷うことなく刀を振るう。斬れ。斬れるだけ斬れ。

 残すところ、あと、2秒――

「ストップ!」

 間際に大きく横薙ぎし、その流れのまま離脱する。クジラは笛のような声を上げながら手の届かないところまで上昇していった。アルもきっちり退避済みなのを確認して、次に備える。

 ……ショウは?

 気配をたよりに視線を巡らせる。と、姿をみつけるよりも先に声が聞こえた。


「他は全部片づいたよ!」


 敵残数、1。

 アヤノは周りを見るのをやめた。足下の注意も必要なくなったのだから、もう余分なことは考えない。最後の敵を倒すまでは。

「ダンテ、さっきのサポートいいと思うよ」

「そうか」

「つーかあとどんくらい削りゃいいんだ?」

「――ちょっと。ショウくん」

 しゃらりと、ユーリの錫杖が鳴った。

「そろそろ決めちゃえば。モザイクが湧いたら相手しとくから、ショウくんもボスの方の攻撃に回ったらいいわ」

 雷が降ってきた。雷鳴に紛れてショウがなんと答えたかはわからなかった。

 けれど、それももう気にしない。

「連続攻撃だ!」

 息つく間もなくクジラが水の渦を吐く。が、あれは方向さえ見極められれば避けられる。

 避けたら、今度はこちらの番だ。

 影が降りてくるのを見上げて下手に曲刀タルワールを構える。矯めて、跳ぶ。

 同時に足下の浮力を感じた。そこに乗って、蹴伸びの要領で上昇速度を上げる。


「おっらあああああああああぁ!!」


 アルの雄叫びと弾丸の撃ち出される音。あまりに威勢が良いものだから、つられるようにアヤノも奮い立った。次々に飛ぶダメージ数値もいちいち確認したりしない。斬り続ければ、いずれは終わる。


魔法マギア:ケラヴノス!』


 ダンテもここへ来て出し惜しみをやめたらしい。クジラに魔法は効きづらいとはいうが、もちろんノーダメージではない。特に“ケラヴノス”は威力の高い空系攻撃だ。たった一撃で期待以上のダメージをたたき出した。

 そこで不意に、アヤノの目の端を黒装束がかすめた。わざわざ確かめなくても、それがショウだとすぐにわかった。

「手、止めないで」

「ん!」


魔法マギア:ソーク!』


 周辺が泡立ったのはユーリが放った風系攻撃によるらしい。クジラまでは届かず、代わりにちらりとよぎった影を吹き消した。おそらくショウを狙う“モザイク”を消してくれたのだ。

 そのことに気づいたアヤノは、戦闘まっ最中だというのに、急に嬉しくなってきてしまった。


 ――わたし達、ちゃんと、“みんな”で戦ってる――


 知らずほころびかけた口元を慌てて引き締める。気持ちまで緩んで直撃を位でもしたら目も当てられない。

「あと、もうちょっとのはず……!」

 ショウの声が聞こえたと同時にクジラが啼いた。薄ら寒いものを感じたアヤノは反射的に飛び離れる。案の定、頭上の黒い皮膚の表面に、これまでとは違う光が灯った。


「みんな離れて!!」


 ほんの一瞬遅れての警告。間を置かず、巨体はそれ自体が電気でも帯びたかのように発光した。火花の散るような破裂音がこんなにも離れた場所まで聞こえてくる。

「今のも、攻撃?」

「ただじゃ触らせねってか? おもしれーじゃねーか!」

「離れてれば平気なはずだけど、うかつに触ったりしたら、生命力ライフごっそり持ってかれるからね!」

「あぁら怖い」

「だが反応が変わったということは、弱っていることの証左でもあるのだろう」

 冷静に分析しつつ、ダンテが宝剣を掲げ、間合いを計るように目を細めた。

「そろそろ片をつけるぞ」

 ぴりりと緊張が走った。暗黙の了解を共有する。

 次に敵側の攻撃が止んだら――一斉攻撃だ。




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