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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第10ステージ:海底
155/200

オラクル Ver. ポセイドン -6-


 貝は、攻撃態勢に入るまではじっと隠れて砂の中。クジラの攻撃から逃げようとするときにうっかり近づこうものなら、文字通り足下をすくいにかかるのだろう。なんとか見抜いて回避する必要がある。

 とはいえ避けるばかりともいかないのが難しいところだった。貝も全部倒しておかないと――しかもボスを撃破する前にだ――このステージの“紋章クレスト”を受け取ることができない。

「厄介な編成を引き当てたものだ」

 誰にともなくダンテが言う。ショウがその向こうで軽く笑った。

「貝はみつけにくい代わりに生命力が低いよ」

「それは事実だが」

「心配しないで、“モザイク”とまとめて僕がやるから。みんなは動きを止められないようにするのだけ気をつけて!」

 宣言したそばから動き出す。そうして迷いなく、手近な地面を剣で突き刺した。刺した箇所から泡が立つ。丸い形が砂から吐き出されてぱくぱくと動いた。


「……クジラには、物理攻撃」


 アヤノはショウから目を離し、黒い巨影を見上げた。自分もまた任された仕事の方に全力を注ぐべきなのだろう。

 ちょうど、影はこちらへ降りてくるところだった。光の膜は張ったまま。ただ、さっき全体魔法攻撃を受けた直後には消えていたような気がするのだ。たぶんそれがこちらの攻撃チャンスになる、はず。

 見上げながら剣柄を握り直した。そこへアルの強めの声が聞こえた。

「アヤ!」

「わかってる!」

「わかってねーよ、下!!」

 あっと思ったときには視界の下隅で何かが動いた。反射的に跳びのいた、その足先に貝が飛びかかってくる。

 さらに足を縮めることでなんとかかわした。と同時に目の前で剣線が走った。貝がはじき飛ばされて向こうに落ちる。すれ違いざまのショウの眼は『不注意だよ』と言いたげだった。が、とにかく反省は後回しだ。

 クジラが啼いた。次の広域攻撃が来る。

「今度こそやってやんぜ……!」

 アルはとっくに機を見ている気配だ。アヤノも自分自身に気合いを入れ直した。

 雨のように降る雷を避け、収まるのを待って。防御膜が消えたことを確認して。


「今だ!!」


 アルの一声を合図に、跳んだ。

 初めて感じる刃先の手応えはぶよりとたよりないものだった。それでもダメージ数値はまずまずだ。ただし防御復活までの時間は長くなかったように思う。限られた時間内でどれだけ斬れるかが勝負だ。

「貝は半分片づいてるよ! あと3体!」

「アル、アヤノ、そろそろ離脱しろ!」

 ダンテの指示を待つまでもなく、もうそろそろあぶないと感じる。少し早めに攻撃の手を止め後退すると、案の定その最中にクジラの表面が光り出した。

 これで攻撃可能なタイミングは把握できた。

 次はもっと、ぎりぎりのところまでやれるはず――そう思ったときだった。

「あ……っ」

 ユーリの漏らした声は不穏な響きを帯びていた。けれどすぐさまショウの固い声がかぶさる。


「こっちは気にしないで!」


 察した。“モザイク”が出ているのだ。アヤノは一瞬唇を噛んで、すぐにふるふると頭を振った。自分の仕事をすると決めたばかりだ。


魔法マギア:アフティダ!』


使役獣召喚プロスクリシー:ヒドラ!』


 詠唱と、クジラのものとは違う雷鳴。ちらりとだけれど大蛇の鱗の色が目に映った。ユーリが援護に行ってくれたらしい。それならきっと、ショウは大丈夫だ。

 そう思った矢先、エリア全体にクジラの声が響いた。さっきとは啼き方が違うことに気づきアヤノは身構える。これはもしかして、また違う攻撃が来るのではないか。

「お、っと!」

 クジラの鼻先にいたアルが慌てて退避した。見れば巨大な口がぱくりと開き、周りの水が目に見えて揺れ始める。

 そして、轟音を伴って吐き出されたのは竜巻のような渦だった。

 範囲はそれほど広くない。が、威力はこちらがずっと上だと直感する。ダメージを受けてもいないのに背筋が寒くなるほどだ。

「みんな無事!?」

「問題ない!」

「こっちも平気だぜ!」

「! 攻撃できる!」

 防御膜の消えるタイミングは今回も同じだった。できるだけ手数を多く。もっと、近くで――


魔法マギア:カタラクティス』


 ダンテの詠唱が聞こえた。と思いきや、ふわりと体が浮いた。水の防御魔法が浮力を生じさせてくれたようだ。

 近づいてくるまっ黒な腹を見上げ、アヤノは鋭く息を吐いた。




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