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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第10ステージ:海底
144/200

イド -1-


 目を開くとそこは、闇ばかりが広がる空間だった。

 彼はさすがに驚いたものの気を取り直し、直近の記憶をたどる。自分たちは確か、第9ステージの“オラクル”をクリアして、守護神ヘファイストスの神殿へ戻るところだったはずだ。思い返せばそのさなかに常にはない浮遊感を覚えたような気はするが。

 それにしても――この世界に、このような場所があった覚えはない。いつ、どこからどこへ迷い込んだというのだろうか。

「誰か。いないか?」

 試みに声を上げる。と、馴染みのない声がそれに応えた。


『いるいる、いるよ! ぼくのこと見える?』


 返答する前から気配が近づいてくる。そうして忽然とその姿が浮かび上がった。

 赤い宝玉を纏う“戦士”。周囲の光が乏しいせいか輪郭がぼやけているようでもあったが、ともかく自分達以外の人間と出会ったのは久方ぶりだ。

『やっと会えたね。はじめまして』

「何者だ?」

『何者って、見ての通りの“戦士”……あ、そうか。ここでは名前とか表示されないんだっけ』

 「失敗」と頭を掻き掻き、姿の曖昧なその相手は含み笑った。

『ぼくは“ファントム”。会ったのは初めてだけど、こっちはいつも君達を見ていたんだよ。だからダンテ、君のことも――ってちょっ、待って待って!?』


「見ていたとはどういうことだ。詳しく話してもらおう」


 ダンテは踏み込みざま、相手に宝剣を突きつけた。相手はよほど驚いたらしく、数歩後じさって両の手のひらをこちらへ向ける。

『ごめんて! そんな怒らないで! ち、ちゃんと説明するからっ』

「納得できる説明をたのむ」

 静かにもう1歩前へ出た。“ファントム”を名乗った相手は何かしらぶつぶつとつぶやき――『相性が悪いのは知ってたけど』というように聞こえた――ため息をひとつこぼした後に、顔をこちらへ向けた。表情を窺い知れないだけに、ダンテはさらに警戒し目を細めた。


「まずは問おう。貴様は“悪”か? 返答によっては……容赦はしない」




            * * * * *



 アヤノ達はヘファイストスから第10ステージの鍵を受け取り、無事セーフティエリアへ戻ってきた。新たな“クレスト”を手の中で転がしつつユーリが大きめのひとりごとを言う。

「鍵の石は青……少なくとも次のステージはここより暑くなさそう」

「念のためだけど、ここよりも暑いステージはないよ?」

「でしょうねぇ」

 うそぶくユーリと笑い返すショウ。アルはショウのかたわらで噛みつきそうな目をユーリに向けている。

 そんな3人を、ダンテが無言のままじっと見ていた。なぜだか心もち固い表情だ。しかしアヤノが不審に思っていると、視線に気づいたのか、避けるように顔を背けた。

「……?」

「ショウ。次へ進むにあたって、何か注意すべきことはあるか」

 それでも呼びかける声はいつもと同じ調子で。アヤノは口から出かけた問いかけを呑み込んだ。今の話の流れからして、きっとこの先の攻略について考えていたのだろう。

「これで全ステージの4分の3をクリアしたことになる。終盤戦がこれまでよりも安易なはずはあるまい」

「もちろん。ここからは環境条件も厳しくなってるはずだよ。といっても僕も未体験だけど」

「環境条件」

 アヤノは横目に周辺を窺う。うっかり触れようものなら少なからぬダメージを負うマグマ溜まり。それに匹敵するようなステージが続くということだろうか。

 それはまた、想像するだけで胸の疼く話だ。

「案ずるよりも実際体験した方がいいんじゃないかな。ていうか実際問題、早く行って早く慣れる方がいいかもしれない」

「百聞は一見に如かず、か」

 ダンテの視線が動くよりも、皆が鍵を手にする方が早かった。ほんのわずかに苦笑を浮かべ、ダンテもまた青い石の鍵を握る。いざ、次のステージへ。


『ワープ!』


 視界を覆った白い光は、さほど間を空けることなく、ある一点から別の色に染まっていった。

 目の覚めるような青色が噴き出す。全身を包みこむ。この感覚は初めてだった。


「うっわすっげー! 今度は海ん中かよ!」


 例によってはしゃぐアルを横目に、アヤノは顔を仰向けた。頭上に広がるのは空ではなく、波のさざめく水面であった。


「そう、第10ステージは“海底”。守護神の海神“ポセイドン”は、神々の中でもけっこうな権力者だよ」




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