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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第9ステージ:火山
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オラクル Ver. ヘファイストス -5-



魔法マギア:ケラヴノス!』


使役獣召喚プロスクリシー:ヒドラ!』


 ダンテの放った雷がネズミを直撃する。動きが鈍ったところをアルが銃で追撃した。他方ではユーリの召喚獣がトカゲの尾に噛みつき、高々と放り上げた。

「さて、僕は――」

 ショウは巨大牛から意識を切らずに全体の様子を確認する。全員ここまででずいぶん鍛えられているから、下手に手出しするよりもサポートに徹した方が良さそうだ。

 そしてこの状況であれば、自分が単独でボスを引きつけて、突進の方向を絞ってしまえばいい。

 思考と同時に手も動く。投げナイフは狙い通り牛の顔をかすめた。顔がこちらを向いて、蹄が乱暴に岩盤を掻いて。

 しかし動き出す前に一気に鼻先まで距離を詰め、斬りつける。飛沫のようにダメージの表示が飛んだ。が、期待したより数字は小さい。さすが大物の防御力といったところか。

 それでも。


魔法マギア:フロガ!』


 負ける気はしない。慢心ではなく、経験から来る感覚的なものだ。

「ネズミはヤったぜ!」

「トカゲ、1匹イったわよぉ」

「2匹目――もうちょっと」

 音や声から察する限り他も順調だ。よかった。

 そう思ったと同時に牛が口を開いた。魔法攻撃だ。2歩3歩と跳び離れると、間を置かず、衝撃波を伴う咆吼が放たれた。しかし飛距離も範囲も狭い。目測で回避できる。

「! ショウ、下!」

 不意にアヤノの焦り声が飛んできた。大丈夫わかっている、その意味を込めて半ばまで上げた手を、そのまま振り下ろす。

 硬い手応えと短い啼き声。手にした剣の刃先はトカゲの前脚に刺さっていた。それを引き抜くなり体をひねり、回転の勢いで蹴りを見舞ってやる。

 トカゲからはそのまま離れる。アヤノが向かってくるのが見えたから、そのまま意識もはずしてしまう。あれは任せて大丈夫だ。それよりも、自分の役目は――

「……来るかな」

 牛の両目がまっ赤に光った。とっさにふり返る。自分のうしろに誰もいないことが確認できれば、あとはもう避けるだけだ。


「突進来る!! 近づかないで!!」


 叫びながら横へステップすると、痛いほどの疾風が間近をかすめて過ぎ去った。今度はダメージを受けていない。よしと内心でつぶやいて、空気の動いた跡を追う。攻撃直後の硬直時間。少しでも削っておけば後々が楽になる。

「こちらの残りは2体だ!」

「ざんねぇん、あと1体になったわよぉ」

「オレがやる!!」

 アルが叫んだ。それはいいのだが、言うより早く銃声が聞こえて、思わず眉根を寄せる。口より手が早いのはよろしくない。同士討ちになる危険が増すからだ。後で注意しなければ。

 そんな危険な行為を、放っておくわけには、


「……?」


 ふと疑問符が、かすかな痛みが頭をよぎった。

 危険な行為。の、はずなのに。

 今までアルに、そのことを注意した記憶がない。

 どころか。


 ショウ自身もまた、同じような行動をとりはしなかったろうか?


「残数、1だ!」

 ダンテの声にはっとした。戦闘中だ。考え込んでいる場合ではない。他の敵は一掃したようだから、とにかくボスを。倒して、“オラクル”を終わらせなければ。

「散って囲め! おのおの突進の前兆を見逃すな!」

「よっしゃああああああああ」

 巨大牛を標的に一斉攻撃が始まった。これで『見張り役』は終わりだ。が、それでもショウは1歩引いて全体を見渡せるようにした。

 アヤノが跳躍して曲刀を振るう。と同時に牛の後足を絡め取った蔓はダンテの魔法だろう。かと思えば前脚には大蛇が噛みつく。見えない向こう側で銃声が響く。――自覚があるのかどうか、皆だいぶボスの近距離に寄っている。夢中になっている証拠だ。誰か1人は冷静を保てる場所にいた方がいい。


 ――ああ……みんなほんとに、楽しそうだな……


 本音を言えば自分もあそこに混ざってしまいたい。しかしそういうわけにもいかなかった。自分は皆を守らなければならない。そういう立場にある以上。

 “世界の側”の、立場に――


「っ、痛、」


 そこへまたしても頭痛が襲った。脳を刺されたような衝撃で瞬間的に視界が揺らぐ。あわてて頭を振り回復を図るが、当然その分だけ反応は遅れた。

 目を上げたとき。まっすぐにこちらへと向けられた赤い両目が、やけに近く感じられた。



            * * * * *




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