表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第1ステージ:市街
14/200

オラクル Ver. ヘラ -7-


 思ったとおり反撃はこない。3度斬ってうしろへ飛び退く。イノシシは大きく体を揺すり向きを変えた。このタイミングでちょうどよさそうだ。

 銃声が響いた。アルがイノシシの陰から飛び出してくる。逆にショウはまた跳躍し、背に斬りつけてから巨体の向こう側へ姿を隠した。短い鳴き声。次は――突進だ。

 イノシシが猛然と前方へ駆ける。アヤノはそれを追いかけた。その横に、アルが追いついてきた。

「体力ゲージ、たぶん3分の1は削れたぜ」

「! 早いな」

「ま、オレとショウは適正レベルよかだいぶ上だし」

「あ」

 蹄が地面をたたいている。足下がぐらりと揺れた。アヤノとアルは飛び離れた。次の瞬間、2人の間で地面が隆起した。

「……4……3……2……1!」

 隆起は一定時間で収まる。見計らって足を速めた。

 ジャンプ。その勢いで斬り下ろす。すぐさま後退する。と、見えないところでショウが叫んだ。


「広域攻撃!!」


 ぶるりと背中を揺すぶって。

 イノシシが風船のようにふくらんだ。

「!?」

「伏せろ!」

 アルの声に背を押され、とっさに身を低くした。とたんに巨体ははじけ飛んだ。

 無数の赤紫色の光が放たれた。一時頭上の空間が覆われる。アヤノは少しの間上目に様子をうかがい、視界から赤紫が消えるのを待って立ち上がった。

 が。

「あっ……」

 左肩を衝撃がかすめた。視界の隅で生命力ヒットポイントゲージが大きくすり減る。攻撃は終わりきっていなかったらしい。

 しかし動揺している暇はない。元の大きさに戻り身をひるがえしたイノシシは、今度はこちらを正面にしている。アヤノは全力で駆けた。イノシシの頭の向きと直角方向へ。

 回り込んでいくとショウが見えた。大剣でうしろ脚を斬って離脱する。それは開戦直後にアヤノがとったのと同じ行動だった。

 自分の判断は間違いではなかったようだ。それがわかって、少しやる気が増した。


『――魔法マギア


 追撃しようとした時、ショウのつぶやきが聞こえた。走りながら視線を投げると、ショウは高く剣を掲げ、にっと笑い返してきた。


『“フロガ”!』


 振り下ろした剣から巨大な火球が飛んだ。それはアヤノを追い越してイノシシの横腹に直撃した。毛皮を激しく燃やしてすぐに消えたもののかなりの大ダメージを与えたらしい。イノシシはよろけて横様に倒れた。

「アル、アヤ!! 追撃!!」

 起きあがるまでの間、敵は無防備になる。アヤノ達は一斉攻撃に入った。

 次々にダメージ表示が飛ぶ。合計数値を出すほどの余裕はないが、これでまたかなりの生命力ヒットポイントを削ったはずだ。

「おっまえ、いつの間にか火の強魔法まで覚えやがって!」

 アルが楽しげに怒鳴った。そろそろイノシシが起きあがろうとしているのを見て最後に1発撃ち込み、走って距離を取る。アヤノとショウも飛び離れた。と、アルが続けた。

「おいショウ! もうこの際だ、魔法でとどめさしちまえ!」

「僕がやっていいの?」

 ちらりと視線を向けられた。1拍置いて、アヤノはこくりとうなずいた。

 この世界で“魔法”を目にしたのは初めてだ。もう少し見てみたいという気は、する。すごくする。

 ショウは剣を構え直した。

「任せてくれるんだね。嬉しいな……」

 静かな口調だった。しかし、ピリピリと肌を刺すような気配が広がっていくのを、アヤノは感じた。

「じゃあ、お言葉に甘えて、獲得したばかりのとっておきを使おうか」

 イノシシが突進の体勢に入った。ショウはそれにまっすぐ切っ先を向けた。

 すっと、息を吸い込む。


魔法マギア;――“アフティダ”!!』


 唱えるのとイノシシの突進が同時だった。

 次の瞬間、一条の光線がアヤノの視界を貫いた。

 そして――

「やった!」

 アルが空に向け、祝砲のように1発を放った。

 直後に細く長い悲鳴を上げて、イノシシは倒れた。犬やカラスと同じようにさらさらと形を崩しながら。

 背に大剣を収めたショウがふり返った。にこりと爽やかな笑顔で両手を上げ、手の平を見せる。アルも手を上げながら駆け寄ってきて、アヤノもそれにつられた。

 パンッと、高い音が重なった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ