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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第8ステージ:洞穴
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オラクル Ver. アフロディテ -6-


 ユーリは驚いて硬直する。が、すぐに青色と目が合った。

 そろりと窺ったショウの表情は、思ったよりも穏やかだった。

「僕らを待っててくれればよかったのに」

「ショウ……くん」

「治癒を!」

 やわらかく着地した先にはもうダンテが待ちかまえている。


魔法マギア:サブマ』


 淡い光に包まれて、負傷した手足が復元されていく。その間にふたつの影が飛びだしていった。機敏に駆け回りながら合間に攻撃を加え、ドラゴンの注意を引きつける。機動の高いアヤノとアルのコンビネーションは威力絶大だ。

「ユーリ、動ける?」

 問いかけにつられ、復元したばかりの左手を開いて、閉じる。とたんに鋭い痛みが腕全体を突き抜けた。動けなくはないが動きたくない感じだ。顔をしかめていると、ショウが膝をついてのぞき込んできた。

「痛むの」

「ちょっと、ていうか、結構」

「そっか。損傷が大きすぎて体が驚いてるのかな。……動くんだよね?」

「まあ、一応」

「それじゃあユーリは休んでて。ボスは任せてよ」

 ショウは立ち上がり、視線をまっすぐドラゴンへと向ける。

「ダンテはサポートよろしく」

「3人でやれるのか」

「うん、なんとかなるんじゃないかな」

 ユーリと、気遣わしげなダンテを等分に見下ろして。

 ショウは笑った。不安も疑念も吹き消すような力強い笑みだった。

「ありがたいことに取り巻きは潰しておいてもらったし。ここからは、僕達の番」

 言うが早いかショウの姿は視界から消える。と思えばもうドラゴンの頭上にいた。


魔法マギア:メテオリティス!』


 ドラゴンめがけて光の筋が雨霰と降り注ぐ。銃声と、鋼の風切り音。ユーリの攻撃はほとんど効かなかったのに、今は馬鹿みたいなペースでダメージ表示が飛ぶ。

 能力値タレンドを使うか使わないかでこんなに差がつくものかと、半ば他人事のように考えた。

 しばらくショウ達の戦いぶりを眺めたあと、ダンテの方を見てみると、宝剣を握りドラゴンを注視している。いつでも魔法が使える――どんな風にも動ける体勢だ。

「……ねえ」

 試しに話しかけてみた。するとダンテは声だけ落とす。

「なんだ」

「ずいぶん早かったじゃない、ここまで来るの」

「そうだな。大分急いだ」

「どうして?」

「ショウが言うのでな。お前を放ってはおけないと」

「……」

「アヤノはそれに賛同した。俺には俺の考えがあった。アルは、本心ではどうだったかわからんな」

「急にずいぶんとおしゃべりね」

 ドラゴンの咆哮が響く。ダンテの表情に緊張が走ったものの、ショウ達の方は変わらず動き回っているから問題ないのだろう。

「――聞かれたことを答えたまでだが?」

「あ、そ」

「それ以上の話は奴を倒したあとだ」

「はいはい」

 一閃、ショウが前脚を斬りつけた。ドラゴンがバランスを崩す。その背に飛び乗ったアヤノが曲刀を振り下ろす。


「そろそろっ! 倒れやがれえええええ!!」


 アルの雄叫びが相変わらず呆れるくらいやかましい。

 まあとにかく、この調子なら通常クリアはできそうだ。結果オーライというやつか。この後をどうするかは、考える必要があるだろうけれど。

「なんだか疲れちゃった」

「勝手な単独行動をとるからだ」

「話はあと、なんでしょ。それにしても動けないとヒマね」

 これには返答がなかったので、ユーリも黙って自分の膝に頬杖をつく。と、ちょうどドラゴンが脚を折り、べたりと腹を地につけた。それでも抗うように大きく開きかけた口、その正面にアルが走り込んだ。

 銃口をドラゴンの口内に突き入れ、撃つ。

 その両脇からショウとアヤノが同時に首を突き刺した。


 ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア


 岩壁を揺るがすような悲鳴を残し、黒い巨体が沈黙する。ユーリは仕事を終えた3人におざなりな拍手を送った。

「おつかれさまぁ」

「ユーリ。怪我は」

 アヤノとショウが駆けてくる。アルはそのあとからゆっくりと。ユーリのかたわらではダンテがやっと宝剣を下げた。

「大事ないはずだ」

「そろそろ動ける? 無理ならもう少し待つけど」

「……。ねぇ、あなた達って」

 ユーリは他の4人を見上げ、座り込んだまま首を傾けた。

「馬鹿?」

「は!? おま、せっかく来てやったのにいきなりそれかよ!?」

 予想通り沸騰したアルはさておき、ショウに視線を留める。と、ショウは一瞬意外そうに目を開いた。そうして笑う。少しばかり意地悪げに。

「僕はそうかもしれないね」

「なにその顔」

「ユーリこそ。もしかしてそれが、本当の君の顔なのかな?」




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