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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第8ステージ:洞穴
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オラクル Ver. アフロディテ -4-


 できるだけ敵に見つからないように。みつかったらすぐ逃げられるように。

 それだけに気をつけながら岩陰を進む。

 今のところはうまくかわせている。この調子で、一刻も早く。


 ここから先、たよれるのは自分の力だけだ。


 もうひとつの目である“グライアイ”と共に、ユーリは少しずつ歩を進めていった。



            * * * * *



「……ユーリはいないね」

「敵残数は動いたか」

「さっきひとつ減って、それっきり、かな……」

 下手に踏み込むと固定の敵が出現するので、脇道の探索はほどほどに。できるだけ急いで最深部を目指す。

 できるだけ早くボスを倒して、“オラクル”を終わらせるために。

「前方! ムカデだ!」

「先行くぜ!」

 ショウの警告を受けアルが飛び出した。冷静に間近まで接近し、撃つ。


魔法マギア:アンベロス』


 倒すことが一番の目的ではない。動きを止め、時間を稼いで振り切ること。一定以上の距離を置けば敵は追いかけてこない。ただ、その一定距離内に他の敵がいることもあるし、意外にしつこいのもいるしで、なかなか気が抜けなかった。

「ショウ、あいつついてきてんぞ」

「だね。仕方ないな、あれは倒しておこうか」

「りょうっかい!」

 アルが獰猛に笑い身を翻す。それに続こうとして、しかしアヤノは踏みとどまった。別方向の新手が目に入ったのだ。挟まれては困る。

「ダンテ、アヤの援護たのむ!」


魔法マギア:カタラクティス』


 アヤノは一瞬、目を疑った。水の防御魔法はアルと、追いかけてきたムカデとの間を遮っている。ショウの指示とは違う行動だ。

 戸惑って見上げると、ダンテは淡泊な表情で片手を上げた。


魔法マギア:ケラヴノス』


 雷の攻撃は前方の蛇に。そうしてダンテはショウを見やる。

「下がるな、前だ」

「! 走ろう!」

 はっとした表情になり、ショウが再度の指示を出した。そうだった、目的は敵を倒すことではない。アヤノも進行方向を元に戻す。視線だけ後方に残し、後方のムカデが近づいてこないことを確認する。

 そこへアルが並んできた。

「なんだよーヤっときゃいいのに」

 アヤノが見下ろすと、今の判断が気にくわなかったらしく、アルの顔はむくれ顔だった。

「アル。今は急ぎ」

「けどよー」

「アル?」

 ショウに声をかけられた瞬間アルの顔つきが変わる。「わかった」とうなずいて素直に前を向くので、アヤノはちょっとばかり釈然としない思いを抱いた。さっきからアルの態度はなんだかおかしい。――好きではない。


「アヤノ、回り込め!」


 ダンテの声に押され地面を蹴る。左手から壁を駆け、蛇の尾めがけて飛び下りた。

 垂直に切っ先を突き下ろし尾を岩に縫い止めると、同様にショウが頸部を刺す。完全に動きを封じられた蛇の眉間をアルが撃った。それで終いだった。

「うしろは」

「振り切ったようだ」

「ダンテは冷静だね。さっき、助かったよ」

「いや」

「僕もしっかりしないとね。ちゃんとみんなを守らなきゃいけないんだから……それなのに……」

 アヤノは瞬いた。ショウの雰囲気は妙に切羽詰まっている。どうしたのかと口を開きかけるも、ダンテがそれを遮った。

「俺は一刻も早く確かめたいだけだ。ユリウスの真意とその価値を。お前の抱えているものよりも単純だ」

 慰めているようなそうでもないような微妙な表現だった。それを聞いたショウも微妙な顔をした。

 するとなぜか、急にアルがダンテを睨み上げた。

「やめろよ、ショウを困らしてんじゃねーよ」

 ダンテは驚いたようにアルを見返す。次いで、ショウに向き直った。

「困らせたか」

「そんなことはないんだけど。ていうか、どうかしたの、アル?」

 こちらも困惑気味のショウに対して、アルの反応はといえば、狼狽だった。

「あ、いや……悪い、余計な口出して」

 言いわけめいて口ごもりながら、上目にショウの顔色を窺う。それをなだめようとしたのだろう、ショウが口を開きかけ――素早く視線を上げた。


「コウモリだ」


 すかさずダンテが宝剣を掲げた。ふり返ったアルも、もう普段通りの表情だった。




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