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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第8ステージ:洞穴
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オラクル Ver. アフロディテ -2-


 曲刀タルワールを横に振り抜くと、後方からナイフが飛んで目の前の鱗に突き刺さった。アヤノはバックステップで距離を取りつつ周囲の気配を探る。今は、この蛇1体のほか敵はいない。


使役獣召喚プロスクリシー:ヒドラ!』


 最後はユーリの召喚獣が、黒蛇の頭を噛みちぎった。

 息を吐きながら視線を横に動かしていけば皆が同じことをしたのがわかる。もう目と鼻の先にある、見慣れた神殿を見上げている。

 “オラクル”に挑むのも8回目。誰も怯んだ様子はなく、昂揚や興奮の気配が強い。

「やぁっと着いたわねぇ」

「洞窟の奥深くに眠る神殿とか、すげーかっこよくね?」

「アル。落ち着け」

「守護神……ヴィーナス、だっけ」

「ここでの呼び方は“アフロディテ”だけどね」

「なんでもいいから早く行きましょうよぉ」

 ユーリが急かすまでもなく。5人は足早に入り口をくぐり、広間へ足を踏み入れた。



『あなたがたは人間かしら? この私の神殿を、何用あって訪れたの?』



 アヤノ達を出迎えた“愛と美の女神”は、想像していたより若い、というか幼い印象の見目だった。ブロンドのやわらかそうな髪は足下まで届き、首をかしげるだけでふわりと揺れる。表情は人間くさくひとなつっこそうだ。ただ一点、濃い桃色の瞳だけが現実離れしていた。

「……でっけーな」

 守護神を観察するアヤノの横でアルがつぶやいた。何が、と尋ねる前になんのことかを理解して、半眼でアルを睨みつける。それでもアルの目はアフロディテの服のふくらみに釘付けだった。正直、ちょっと引いた。

「アヤ、その。大目に見てあげてくれるかな」

「……」

「ね」

「……」



『たのみたいことがあるのだけれど。


 何者かが私の庭を荒らすので困っているの。

 それを退治してくれたなら、報賞をあげてもいいわ』



 ショウにたしなめられている間も滞りなく話は続く。アヤノもひとまず本題に集中することにして、桃色の扉が現れるのをじっと見つめた。

 完全な形になるのを待って歩み寄る。

 全員揃ったところで、飛ぶ。


「8番目の“オラクル”――開始だね」


 オラクルエリアの洞窟内では、薄桃に光る水晶がそこかしこから顔をのぞかせていた。そのせいで壁全体が薄桃色に見える。若干落ち着かない気分なのは、ステージの固有色に染まる空間のせいもあるのだろうけど。きっと『色』そのものも落ち着かない原因だと思う。

「ピンク……」

「ピンクだね」

「こんなにピンクピンクしてるとぉ、なんていうか、風ぞ」

「うんその話はいま関係ないからやめようかユーリ」

「やぁねぇショウ君たら照れたの?」

「あのねユーリ。君はもうちょっと真面目に」

「敵だ」

 まっ先に気づいて身構えたのはダンテだった。かと思えばショウもいつの間にやら剣を手にしている。斜め後ろでガシャリとアルの銃が鳴った。

「さて。やることはいつも通りだけど、モザイクとかセーフティエリアの異常だとかいろいろあるからね。忘れないで」

「おうよ!」

「ダンテ、たのんでいいいかな。少し離れておいて新手が来たら」

「待て!」

 待てとは言うが敵は待ってくれない。一瞬気を取られて反応を遅らせながらも、全員がてんでに散って蛇の尾の一撃を避けた。

「あっぶねっ」

「ダンテ!?」

 アヤノはとっさに敵への攻撃を選んだ。真上に振りかぶって跳躍する。と同時に、耳はダンテの返答をかろうじて拾った。


「ユーリがいない」

「! 本当だ、どこに」

「捜すべきか」


 振り下ろす。硬い鱗の感触の奥で、肉を切る手応えもはっきりと感じた。

 しかし。


「――まずは自分の身を守ろう。捜すのは安全を確保してからだ」


 苦渋の滲むショウの声に、アヤノもまた眉根を寄せた。




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