表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第7ステージ:氷原
106/200

オラクル Ver. ヘスティア -4-



『 お詫び


  プレイヤーの皆様


  いつもゲームをプレイいただきありがとうございます。

  まことに申し訳ございませんが、“テオス・クレイス”は

  明日午後より長期システムメンテナンスを行います。

  終了まで二日を見込んでおりますが、状況によりましては

  延長となる可能性がございます。

  メンテナンスの間、ゲームをプレイいただくことはできません。

  プレイヤーの皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、

  なにとぞご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

  なお、後日にお詫びの品をご用意する予定でおります。


  “テオス・クレイス”運営 』




            * * * * *




 これが最後の1体だ。オオカミにとどめを刺したダンテが宝剣を収めて見返ると、ちょうど画面を閉じたショウがうなずく。

「残数5。あとはボスと取り巻きだと思う」

「たどり着いたな」

「ここまでスムーズにいくなんてね。みんなすごいよ」

「褒め上手よねぇショウくんて」

「……ボス戦だね」

 まんざらでもなさそうなユーリの声を背に聞きつつ、アヤノは斜めに剣を払った。

 相変わらず吹雪かという勢いで雪が降っているものの、視界の悪さはもうそれほど問題にならない。一番レベルの低いダンテにどうしたらとどめを譲り能力値タレンドを稼いでもらえるか、そんな工夫をする余裕さえある。

「いや、本当だよ。運動能力なんかはレベルが大きく影響するけど、戦いってそれだけじゃないから……レベル以上に技術が上がってるってことだと思うんだ。みんな、強くなったよね」

 アヤノはぱっとふり返った。ショウと一瞬目が合い、またぱっと前を向く。

 頬が熱くなっていた。今の言葉はそのくらい嬉しいものだ。自分1人へ向けられたわけではないが、認めてくれたことに変わりないから。

「さて……ここでは、ある意味ボスっぽくないボスが出てくるよ」

「!」

 ショウが前へ出ながら、アヤノの頭を軽く撫でていった。何かしら察してくれたのだろう。アヤノは触れられた部分に自分でも触り、一瞬口元を緩めてから、内心で気合いを入れ直した。

「ボスっぽくないってどんなんだ?」

「他だと聖獣のくくりにされてることが多いんだけど」

「――“ユニコーン”、だったか」

「あ、ダンテは調べてきてくれたんだね。正解」

「ユニコーン!」

 アルが叫んだ。こういう高めのトーンの時は、きっと目をきらきらさせてはしゃいでいる。見なくても表情が想像できた。

 それははともかくとして一角獣ユニコーンとは。確かに敵のボスというイメージからは縁遠いようだ。

「魔法攻撃をいろいろ持ってるはずだよ、確か。アヤとアルは気をつけて」

「おう!」

「わかった」

「ねぇ注意事項はその辺にして、さっさと終わらせましょ?」

 ユーリがさっさと歩き出すので、他のメンバーもそれを追った。

 ボスのテリトリーへ、一線を越えることにためらいはない。おそらく誰も。

 氷山に囲まれた空間で馬の姿が像を結んだときも、だからちょっとした感嘆の声しかなかった。

「うお、黒いユニコーンか! かっけー!!」

「通常は白のイメージだが、なるほどな」

「油断しないで! あれでちゃんと敵だからね!」

 その時、角まで黒色のユニコーンは高く嘶きふわりと浮いた。

 実際には跳び上がっただけなのだろうが、そう見えるくらいに身軽な動きだった。ぞわりと悪寒を感じたアヤノは反射的に横へ逃げる。直後、すぐ近くの氷塊が砕けた。ふり返ればユニコーンは遙か後方にいる。これはだいぶ速そうだ。

「他の敵は!」

「大熊3、トナカイ1だ」

「おっと熊がきちゃったか」

「どうするのぉ隊長さーん」

「今までと、同じ?」

 大熊は生命力が高いので、今までのように先に潰そうとしたら時間がかかるだろう。ショウは領域全体を見渡した。ひと呼吸置いて、普段よりはいくぶん緊張気味に声を上げる。


「逆――でいってみよう。4人はこのままボスに攻撃! 雑魚は、僕が片づける!」


 アヤノは息を呑んだ。さすがに他からも戸惑いの気配がした。

「ショウ。それはバランスが悪すぎはしないか」

「僕は大丈夫。みんなは攻撃を受けないよう注意だけして、余裕があるときだけ加勢してくれればいいから!」

 言いながらショウはもう動いていた。

 それならこちらも動くべきだ。アヤノが飛び出すと、アルがそれに合わせてくれた。直線ではなく弧を描くように、ユニコーンに接近していく。しかし向こうも飛ぶように駆けてなかなか留まらない。この状態で仕掛けるのは危険だ。


魔法マギア:アンベロス!』


「ナイスだダンテ!!」

 ダンテも機を窺っていたらしい。ちょうどユニコーンが地についた前脚を、伸びた蔓が絡め取った。つんのめるようにしてスピードが落ちる。アヤノは即座に突っ込み後脚を斬り払った。たぶんこれで、少しくらいは時間を稼げるはず。

「いっくぜえええええええええええ!!」

 相も変わらずハイテンションなアルの声と重い銃声。それと前後してトナカイの断末魔も聞こえてきた。今のところ、順調のようだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ