1人。
「じゃあ、何かあったら、此のスイッチを押してくれ」吉田は、俺が目覚めた時に押した、ドアの隣にある黒いスイッチを指差した。「直ぐ行くから」 金田、『鏡』を持った『人造人間製作班』、吉田の順で部屋から出て行った。 吉田は、部屋の外側からドアを閉めると、鍵を掛けた。 部屋にいるのは、俺1人だけになった。 「畜生っ」俺は、叫んだ。「何故、俺は、『人造人間』になんかならなければいけないのだ? 何が、上官の命令だっ。糞っ、皆、皆死んじまえっ」 「はぁ、はぁ」 叫び終えた俺は、部屋の真ん中にしゃがみ込んだ。 「・・・・・・」 沈黙が部屋を支配した。 「・・・・・・」 「あっ」 俺は、『ある事』を思い出した。 そう言えば、気絶している時に夢を見たな。確か、三つ目小僧のアカリって奴と夜の森を歩いていた。アカリって、誰だっけ? 分からないが、知り合いの様な気がする・・・・・・。 「あぁぁぁ。もう分からんっ」 此れ以上考えると頭がパンクしちまいそうだ。 「『頭』・・・・・・」 俺は、『頭』を触った。 ツルツルしていて、触り心地が良かった。 「うあああぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁああぁぁ」 俺は、雄叫び声を上げた。 『頭』を触った瞬間どうしようもない怒りが沸いてきた。 「よくもっ、よくもっこんな『頭』にしてくれたなっ」 そうだ。『頭』を割って死のう。もうこんなの耐えられない。きっと、俺が死んだら、奴らは、『実験対象者』がいなくなり困るだろう。ふん。いい気味だ。此れで、奴らに復讐が出来る。吉田、金田、『人造人間製作班』の奴らにっ。 「うおぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉっ」 俺は『頭』を割るべく、勢いよく壁に『頭』から突っ込んだ。 ごつんっ、と鈍い音が部屋中に響き渡った。痛みは、無かった。もう1回。ごつんっ。もう1回だっ。ごつんっ。最後にごぉぉぉぉぉんっ。 「何故だぁぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁっ」 『頭』は、割れなかった。 ヒビ1つすら、入っていない。 「畜生、畜生畜生畜生畜生っ」 如何して、如何して如何して如何して如何してっ。 俺は、壊れているのかな? 多分、精神が崩壊しているな。 「階級なんていらないっ。死んでもいいっ。だからもう止めてくれっ」 俺は、願い、叫ぶ。 多分、願いは、叶わないだろうけれど。