三つ目小僧。
暗い暗い夜の森の中。 俺はシャツ1枚と半ズボンの姿で歩いていた。 俺の隣には、俺の身長の半分程の背で丸坊主の少年が俺と同じ速度で歩いていた。少年は、服を着ておらず素っ裸だった。更には、裸足でもあった。彼らの『民族』には、服を着る、靴を履く、という習慣が無いのだろう。 少年は、顔を上げて俺の方を見た。少年の顔には、3つの目があり、2つは、人間と同じ所についているが、1つは、額にあった。口も人間と同じ所についていた。 彼れらは、三つ目小僧と呼ばれている。三つ目小僧は、日本の森だけに多数生息している。彼らは、木の上に枝で作った小屋を置き、其の中で家族で暮らす。核家族で暮らす方が多い。夜行性で、人間には、危害を加えない。然し、人間側から危害を加えると、三つ目小僧は、激怒し、襲ってくる。実際に三つ目小僧に危害を加えた者が、何人か死亡するという事件が発生している。其れだけ聞くと怖いように感じるが、友好関係に立とうとすれば快く迎え入れてくれる。 少年の名は、アカリ。苗字は、無い。此の名前は、彼がとても明るいからアカリ、と、俺が考えて付けてやった。命名した時は、名前を気にいったのか、アカリはとても喜んだ。三つ目小僧は、名前を付ける、という習慣が無い。相手を呼ぶ時は、相手の肩を叩く。名前が無いと話しづらいので命名した。 俺達は、1年前に出会い仲好くなった。1年前の事は、あまり憶えていないが、初めて会った時から気が合ったのは憶えている。 アカリとは、ほぼ毎晩会っている。特に何をする訳でも何が、一緒にいると何故か楽しい。今晩も特に目的は無かった。 「もう、合ってから1年が過ぎたね」 俺は、言った。 「うん」 アカリは、頷いた。 「何か、早かったな」 「うん。これからも会えるといいね」 「だな」 他愛も無い会話だった。 でも俺は、此の時間が好きだった。 「毎日訓練、大変?」 「うん?まぁ、慣れた、かな」 「其れは、良かった」 「気遣い有難う」 「如何致しまして」 其の時。 ガサッ。 何処からか音がした。 「誰?」 「誰だろう?」 そして、意識が吹っ飛んだ。