少佐、現る。
吉田明。一体何処の誰だ? 俺は、目の前に立っている男性を見ながら心の中で呟いた。 白衣を着た吉田と名乗る男は、背が低く、酷く太っていた。年齢は、もう60歳を過ぎているだろう。髪の毛は、真っ白であった。 「貴様に会わせたい人がいる。今来ているので、きちんと挨拶するのだぞ。其れとな、ちゃんと背筋を伸ばして立て。みっともないぞ。本当に」 吉田は、ドアの方を見た。「お入りください」 「うむ」 ドスの利いた声が聞こえた。 其処には、もう一人、又もや、酷く太った男性ががいた。年齢は、40歳位だろう、と、俺は、想定してみた。当たっているかどうかは分からない。まぁ、特に当たった処で意味はないんだが・・・・・・。 「わしの名前は、金田満。少佐だ」金田は、俺を見た。そして、俺の前まで来ると、ドスの利いた声で命令した。「貴様の名前と階級を述べよ」 俺は、速やかに立ち上がると、「はっ」と言い、背筋をぴんと伸ばした。「自分は、秋田義文。一等兵でありますっ」と答えた。 「そうか。分かった」と言うと、金田は突然、微笑んだ。「今日、貴様が此処に来て、わしも此処まで来たのには訳がある。其れはだな、貴様に特殊な『命令』を下しに来たのだ。わしの言っている事が分かるか?」 「特殊な『命令』でありますか?」 「そうだ。実は、だな。今、陸軍技術本部は『ある物』を造っているのだ。其の成果次第で、戦争の勝敗が決まる程、素晴らしい『物』なのだ」 「『ある物』とは・・・・・・」 「まぁ、そう焦るな。貴様は、其の『ある物』の実験対象になってもらう。其れが、今回、わしが貴様に下す、特殊な『命令』だ」 「『ある物』とは・・・・・・」 俺は、同じ質問をした。 「『人造人間』だ」