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01.婚約破棄の始まり

転生ものではない異世界ファンタジーものをはじめてみました。



 夜なのに明るいその場所は、天井にシャンデリアが輝き、美しい楽の音が届く。

 皆、タキシードにドレスを着て、上流階級の集まりだと一目でわかる。

 そんな中、男性にしては少し高めの声が響いた。


「アルテンブルク侯爵令嬢マリアンネ! 私、ライナルト・ギレンセン第二王子の名において、お前との婚約を破棄する!」


 黒い髪を後ろで一つに束ねた榛色の瞳を持つ男性は、右側に小柄な愛らしい少女の腰を抱きながら宣言した。

 二人の周囲に男性が三人、味方するように寄り添っていた。

 ライナルトと名乗った黒髪の男性は、アルテンブルク侯爵令嬢と言われた銀髪碧眼の美少女を睨みつけている。


「畏まりました、第二王子殿下」


 アルテンブルク侯爵令嬢マリアンネは静かな笑みを浮かべ、凛とした声で答えた。こうなることが分かっていたように、覚悟を決めた表情だった。

 けれど、緊張しているのか声にかすかな震えが混じっているのに、どれだけの人間が気づいただろうか。


(やはりこうなってしまったのね……)


 マリアンネは、ほんの僅か目を細めた。

 ライナルトの隣に居る少女――ジンメル男爵令嬢二コラがライナルトと懇意にするようになってから、婚約者としての立場に影が差したのを感じていた。

 けれど、相手は下位貴族――一時の恋だと思いたかった。王族としての立場を忘れていないと、そう思いたかった。

 そう、思いたかったのに……。


「婚約()()につきましては、陛下はご存じでしょうか?」


 甘ったるい不穏な空気のなかに、清涼な香りがほんのりと漂う。

 その香りにライナルトの表情が少しだけ和らいだ。

 しかし、ライナルトの隣にいるニコラが付けている香水の香りにかき消されると、すぐに元の表情に戻って。


「……いや、これからだ。とにかくお前に先に今後のことを話すべきだと思った。また、二コラを陰で虐めていたことについても問い質したかったからな」

「わたくしは、二コラ様に何もしておりません」

「嘘をつくな! お前が取り巻きを使い二コラの悪い噂を流したり、夜会でドレスを汚したりしているのは、すでに分かっているんだ!」

「わたくしは、そんなことはしておりません」


 婚約者として、殿下に近づかないよう忠告はしたことがある。

 けれど、それだけだ。

 また傍にいる三人の婚約者からも、苦言を貰っているはずなのに、彼女は自分の言動を改めることはなかった。

 ライナルトをはじめ、側近含む四人の中で女王のように振る舞っていたのに、今はマリアンネに怯えているようにライナルトの服をキュッと掴んだ。


 彼女はジンメル男爵の庶子で、二年ほど前まで市井で育ったという。そのせいか、彼女は貴族令嬢にない奔放な性格をしていた。

 そこが彼らには新鮮に映ったのだろう。第二王子をはじめ、彼の側近らがニコラの虜になった。


 マリアンネはじめ、他の令嬢は悔しくてもそれを見ているしかなかった。

 苦言を呈しただけで婚約者の不興を買うような状態だったのだから。

 それでも、貴族学校を出るまでの辛抱だと、彼女たちは自分に言い聞かせ黙っていたのに、こともあろうに卒業パーティーでやらかしたのだ。


 さすがに側近の婚約者たちも見ていられなかったのか、マリアンネを庇うように前に出て口を挟んだ。


「マリアンネ様はそのようなことはされませんわ! ご自身とて、殿下と距離を置かれましたのに、文句一つ言わずにおられました!」

「そうですわ。それよりもご自身は何も悪くないのに、わたくし達を気遣って話を聞いてくださったのです」

「マリアンネ様は殿下の婚約者――それが気に入らなくて足を引っ張る者もいますわ。ジンメル男爵令嬢を虐めたという噂は、その方達の嘘ですわ」


 側近三人の婚約者――ロジーネ、アデリナ、スザンナはそう抗議した。言外に、こうなったのはあなた達のせいだと含ませて。

 それに気づいたライナルト達は、言葉を詰まらせた。

 身に覚えがあるのだろう。


 そんな中、マリアンネが口を開いた。


「皆様、もういいですわ」

「マリアンネ様?」

「わたくしは、婚約解消を受け入れます。それを、直接お返事をしたくて参りました」


 マリアンネの言葉に、ロジーネ達がお可哀想に……と涙ぐむ。

 けれど、ライナルトは場の空気を読むことなく――


「それだけではない! ニコラに対して謝罪して貰おうか!」


 マリアンネが素直に言うことを聞いたせいか、気が大きくなったようだった。

 ニコラに対して謝罪をしないマリアンネに苛つき、彼はマリアンネの肩に手を掛け――


「はあ?」


 触れたと思ったのに、マリアンネの肩を貫いたような形になり、ライナルトは信じられないといった顔をしている。

 マリアンネも、しまった――という顔をした。



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