15匹目 闘争 -それぞれの戦いへ-
お久しぶりの更新です!
見捨てないで最後まで暖かく見守ってください(>_<)
長きに渡り街を照らし、日本のシンボルとして輝き続けたタワーの明かりは消えていた。
まるで今までの自分は偽者でついにその手の内を開けるかのように、黒く、重く、彼らの目の前に聳え立っている。
エンジン音を上げて飛び立ったヘリ達は旋回しながらそのタワーを照らし始めた。
「ガ……ガガー………警察諸君」
突如発せられた声は女のもの……天王寺アイルだ。
「どこから!?」
彼らは辺りを警戒しながら声の発信元を探した。
「私は特別展望台にいます。警視総監様と子供には手をつけていないわ、今はね。タイムリミットは今日。日付が明日に変わったら2人は死にます」
「何が目的だ!!」
スピーカーの音量を最大にして田沼は叫んだ。
「目的ねー……私達は警視総監様が殺せればそれでいいのよ。でも、ただ殺すんじゃつまらないでしょ? だからこの人の目の前でこの人の部下がこの人の為に死んでいくところを見せたいの」
「クソッ! なめやがって……!!」
聖夜は彼女がいる特別展望台を睨んだ。
「それじゃあ皆さん、ショーの始まりよ……ガガー……」
「ショーの始まりだと……?」
高羽はデザートイーグルを抜いた。
「……タワーの入り口を照らして!」
何か見つけたかのように梢は指を刺して叫んだ。
機動隊の隊長は無線を繋げて言われた場所を照らすように指示した。
「アレは……!!」
「ちっ、まだあんなにいやがったのか」
林田が気づいたのに続いて高羽が呆れたように言った。
「……熊は任せていいですか?」
田沼はSAT、機動隊の隊長に言った。
「ま、まさか皆さんが中に行くつもりですか!?」
SATの隊長は当然困惑した。
「当たり前だ!」
即答したのは既に戦闘状態の聖夜だ。
「し、しかし……」
「もちろんいいわよね?」
簡単に首を縦に振らない2人に梢は笑顔で詰め寄った。
「……分かりました」
2人は渋々承諾した。
「(おい、お前の嫁は何者なんだ?)」
皆の目が梢達に向かっている中、田沼は小声で聖夜に話しかけた。
「(い、いやー、俺も手におえないっす)」
聖夜は苦笑いしながら答えた。
「これより全勢力を持って熊を排除し、タワーへの道を開ける! 総員、心してかかれよ………行け!!」
機動隊の隊長の声で幕は開けられた。
「グヲォォォォォーーーーーーー!!!!」
「おぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!!」
「熊が全滅するまで待っているわけにはいかない。間を縫って進むぞ」
ここにいる熊が今までの熊より明らかに強いと気づいた田沼。
「……田沼警視正、あなたはここにいてください」
それまでずっと黙っていた大杉が口を開いた。
「指揮官のあなたをこれ以上現場に出せません」
「しかし……」
「自分も同意見です」
大杉の案に乗ったのは高羽だ。
「あんな奴らくらい自分達だけで大丈夫です!」
聖夜と拳次は同時に言った。
「ま、あなたは奥の手ってことで」
林田は田沼の肩を掴んで無理矢理パイプ椅子に座らせた。
「行くぞ、お前ら」
高羽はタワーを睨みながら口元だけ笑っていた。
「お、おい! 待てっ!」
田沼の制止を振り切って聖夜、梢、拳次、林田、高羽は走り出してしまった。
「ったく……で、何でお前も残った?」
田沼は大杉を睨んだ。
「決まっているじゃないすか、俺は……」
「何で熊共は急にこんなに……!?」
先頭を走りながら高羽はコルト・パイソンを乱射している。
が、熊達は驚異的な反射神経でことごとくかわしていく。
「これじゃあタワーまで辿り着けない……!」
聖夜も拳銃を放つがやはり当たらない。
(ガガガガガ!!)
「我々が道を!」
轟音と共に現れたのはSATと機動隊に隊員だ。
「すまない!」
高羽を銃弾を補充しながら走り続けた。
「ゴォォ!!」
「ぐはぁ!?」
変わって先頭を走っていたSATの隊員は降って来た熊に潰されてしまった。
「くっ!」
高羽は銃を構えるが、熊の鋭い爪が目の前に迫っていた。
「だぁぁぁーーーーー!!」
頭から突っ込んで熊を押し倒したのは林田だ。
「行け!!」
林田は熊の顔面にパンチをお見舞いしながら叫んだ。
「……くっ! 死ぬなよ!」
高羽は隊員達に先頭を任せて再び走り続けた。
それを追って聖夜達も走った。
「ふふ……死ぬな、か………」
林田は熊の亡骸を踏みつけながら立ち上がった。
「今回ばかりはキツイかもな……」
周囲には暇を持て余した熊が唸りを上げている。
「だがな……!」
高羽達を追おうとした熊を林田は一撃のもとに沈めた。
「あいつらは死なせねえ!!」
「ゴオオォォォーーーーーー!!!!」
「うおおぉぉぉーーーーーー!!!!」
東京タワー・入り口―――
「ちっ、熊ごときにここまで梃子摺るとは……!」
拳次は弾の切れたショットガンを放り投げた。
「……良かった、エレベーターは使えるみたいよ」
梢は上がった息を抑えながらエレベーターのボタンを押した。
「何もなく上まで行ければいいけど……」
聖夜は降りてくる箱を見上げながら呟いた。
空―――
「こちら4号機、以上な……ん? あの機体は……ま、まさか!?」
(ドゴォォォーーーーン!!)
「よ、4号機!? 応答しろ4ごう……!!」
突如爆発した2機のヘリの煙の中から1機のアンノーンが現れた。
「こちら8号機! 敵機確認、迎撃を開始する!」
装備されたヘビーマシンガンを放ちながら8号機は近づいていった。
「待て8号機、迂闊に近づいては……くっ! こちら1号機! 各機迎撃を開始せよ!」
「平和ボケした日本の軍人が、鬼龍と呼ばれたこの中村ゴンザレスを殺れると思うなよ!!」
アンノーン機体は銃弾の雨を優雅にかわしながらSATと機動隊のヘリを返り討ちにしていった。
「ん? 1機沈め損ねたか」
「平和ボケしてるかどうか、思い知らせてやるさ」
アンノーンと正対したヘリに乗っているのは田沼だった。
………。
「ヘリを借りるぞ」
俺は立ち上がってヘリの待機場所に向かった。
「田沼警視正!?」
「この戦いに作戦などない。私がここにいてもやれることはないさ」
「………」
SAT、機動隊の隊長は顔を見合わせ、頷いてどこかへ消えた。
「お前はどうするんだ、大杉?」
俺は背中を向けたまま聞いた。
「好きにさせてもらいますよ、俺もね……」
大杉もまた、立ち上がってどかへ歩き出した。
「残念だがお前はどこへも行けないよ」
「どういう意味……!?」
振り向いた大杉の目の前には拳銃を構える男がいた。
……俺だ。
(パァン!!)
「どう……して……?」
大杉は瞳を開いたままうつ伏せに倒れた。
地面には紅い水溜りが広がっていく。
「お前が天王寺アイルと繋がっていることは知っていたさ。なぜなら俺は……」