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クマさんと鬼ごっこ  作者: 有北真那
Chapter-3 広ガル闇ト燃エ上ガル鼓動
13/25

11匹目 開戦 - 三つ首と黒き幻-


 東京湾───


 船からは続々と熊が下りてきて、私達はあっという間に周りを囲まれてしまった。

 なんとか野次馬を逃がす時間稼ぎはできたが、このままじゃ街中に進軍される勢いだ。

「け、警視正……私達は、どうなるんですか?」

 1人の刑事が震える声で聞いてきた。

 どうなるのかなんてこっちが聞きたいくらいだ。だがそんなことは言えない。

「とにかくちゃんと銃を構えて襲ってきたら躊躇わず撃て。じゃなきゃ死ぬのは自分だ」

 私は熊達がなかなか動き出さないことに違和感を感じていた。

(バババババ!)

 船からヘリが3機、飛び立った。それを合図に熊達は動き出した。

(パァン! パァン!)

 私達は熊達の足を狙って銃を放つ。

 しかし熊は見た目とは裏腹に素早い動きでそれをかわした。

「ふんっ!!」

 私は自ら熊との距離を縮め、右拳で1匹の顎を打ち抜いた。

 熊達は動きを止めて私を見ている。

「元警視庁第一機動隊隊長のケルベロスと恐れられたこの俺が相手だ!」

 私は上着とYシャツを一瞬で脱ぎ捨て上半身裸になった。

 浮かび上がる神経と血管。鍛え上げられた鋼のボディー。背中には赤い刺青で三つ首の獣が描かれていた。

「け、警視正!?」

 後ろで驚きの声があがった。しかしいちいち説明している暇はない。

「死にたくなければ生きろ! 銃を取れ! 自分の命は自分で守れ! だが忘れるな……俺達の仕事は民衆を守ることだ!! そのためにこいつらを止めるぞ!!」

 私はさらに襲いかかってくる熊を回し蹴りで吹き飛ばした。

「お、俺だって!」

(パァン! パァン!)

 刑事達の瞳には勇気という名の光が戻っていた。




 警視庁───


「どうして私達は行かないんですか!? 熊達はあの船に……!」

 私は曇った表情のまま画面を見つめる彼女に怒鳴る。

 彼女はゆっくりと私に向き直って言った。

「私の不安は(ここ)からじゃないの。……この船はきっと、囮よ」

 ちょうどその時、船から飛び立った3機のヘリが青空に消えた。

「……何とかしてあのヘリの行方を追えぇ!!」

 私は残った刑事に指示を出した。

 横で彼女は頷いていた。

「東京、神奈川、埼玉、千葉に緊急配備、並びに非常事態宣言を出しましょう」

 彼女の目は不安で黒く濁っていた。それはきっと私も同じなのだろう。

「お前ら!!」

 私は部下の顔を見回した。皆私に向かって頷き返す。

「任せたぞ……!」




 再び東京湾───


「こいつら次から次へと現れやがって……!」

 私の身体は返り血で赤く染まっていく。


(カチ! カチ!)

「た、弾が!? ……うわぁぁーーー!!」

「ハァァ!!」

 弾切れになった刑事に猪突猛進する熊の腹に膝蹴りをお見舞いした。

「予備の弾薬は!?」

 私は背中越しに聞いた。

「もうありません!」

 その声はまた震えていた。

「使え! 私にはコレがある」

 私は自分の銃と弾薬を投げ渡し、右拳を掲げた。

 とはいってもこのままじゃいつか限界がくる。応援はまだ来ないのか!?

「ぐぁぁーーー!?」

 横目で刑事が熊に犯されてるのを見ながらも、私は目の前の熊で精一杯だった。

(ズシュッ!)

 熊の鋭い爪が私の左肩に跡を残す。

 熊達は野生の本能で私が一番危険だと気付いたのか、私は周りを囲まれてしまった。

「警視正!!」

「自分の目の前の敵に集中しろ! 私は大丈夫だ!」

 ……少し見栄を張ったことに後悔した。この状況はヤバ過ぎる。1匹を相手にするのもやっとなのに同時に……6匹だ。

「ふーーー………」

 私は一度大きく深呼吸をする。澄み渡る空の青さを私は目に焼き付けた。

「ケルベロス、参る!」

 覚悟を決めたその時。

(パパァァン!!!!)

 重なった銃声。6つの軌跡は熊の体を貫いた。

「な、何が……?」

 倒れた熊を目の前にして私は呆然としていた。

 黒い薄手のロングコートを纏い、フードを目一杯かぶった男が歩み寄る。怪しすぎるこの男を私は知っている。

 右手には6連早撃ち(クイックドロウ)をして銃口から白煙が昇る[コルト・パイソン]。左手には黒く光沢のある名もない拳銃、通称[黒き幻]。

「グルゥゥ……!」

(ズガンッ!!)

 死に損なった1匹が体を起こそうとした時、男は右手の銃を腰にささった[デザートイーグル]に持ち変えて止めをさした。

「これであの日の約束は果たした」

 男はフードを外した。

「助かったよ高羽。狙撃の名手、銃神・ファントムの腕は落ちていないようだな」

「ここからは俺達に任せてもらう」

 今の高羽の目は昔の銃神と呼ばれた頃のそれと同じだった。

 私は自分の体が傷だらけなことにやっと気付いた。

「そうだな、頼んだ」

 私はその場に仰向けに寝転がった。空は相変わらず青いままだ。

(パァン! パァン!)

 高羽が左手を挙げて合図を送ると、遠くの物陰に潜んでいた仲間が一斉にスナイパーライフルの引き金を引いた。

 あっという間に熊の数は減っていく。が、こんなに順調でいいのだろうか?

「林田警視正! やつらが……!」

 1人の刑事が指差す方を見ると熊達が街に向かって進軍していた。

「しまった!」

 私は急いで立ち上がった。

「動けるのか?」

 高羽は銃弾を補充しながら聞いてきた。

「まだまだ若い者には負けんよ!」

 屈伸をしながら答え、第2ラウンドに備えた。

「俺の足は引っ張るなよ」

 右を再びコルト・パイソンに戻した高羽は薄い笑顔を見せた。

「ぬかせ、小僧が」

 私達はこの場をスナイパー達に任せ、街に向かった。




 ヘリ・機内───


「東京湾はどうなってるのかしらね?」

 妹が意地悪そうな笑みを浮かべている。

「林田刑事がいたけどあんな冴えなさそうなオッサンじゃ、今頃は街中で好き勝手やってるでしょ」

 私は眼下の高層ビル群を見つめながら答えた。

「そういう人に限って実は強かったりして!」

 妹の笑みは崩れない。

「あの人は噂じゃ警視庁の第一機動隊隊長だったらしい」

 司が呟いた。

「うっそ!?」

 妹の笑みは崩れた。

「まぁ、あそこは囮だがな」

「そろそろ分岐点だよー」

 通信機からYamazakiの声がした。

「了解、うまくやってね」

 私が通信機に言葉を返し、ヘリは二手に別れた。




東京湾・港町

 林田警視正(ケルベロス)

 高羽警視(ファントム)


東京湾

 スナイパー


ヘリ・1号機

 アイル

 フィリス

 司

 

ヘリ・2号機

 Dr.Yamazaki

 

ヘリ・3号機

 仲間1人


警視庁

 田沼警視正

 西川警視長



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