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第四十一話〜元妻の日記2~

「これが、私が調べた黒猫の真実よ」




私は、遥香にそう言った。遥香は、私が用意した資料を食い入るように見ていた。




その中には、神社に保管されていた冊子の画像や、掛軸の写真なども含まれていた。




「黒猫には、こんな過去が……」




遥香は、そう言いながら私に視線を移した。




「この話が本当なら、あの黒猫って明治時代から、この地域を徘徊してるって事ですよね」




遥香がそう言った。私は遥香に指摘されるまで失念していたと、その時気付いた。




「確かに、そう言われてみれば、そうなるわね」




「それと、黒猫の過去はわかりましたけど……」




遥香は言いにくそうにしていた。




「けど、何」




「黒猫や巫女の呪いを、止める方法はない、って事ですね」




そうなのだ。今現在、巫女の呪いを受けている、




鈴木家の人間にかけられた呪いを、解く方法はないという事だ。




そう、鈴木光輝くんを助ける方法も、思い付かない。




「黒猫が振り撒く怪異も、止めようがないわね」




私は、さらにそう言葉にしていた。




「それだけではないんです」




遥香が、突然大きな声を出して言った。さっきから少し遥香の様子がおかしい。




「これを見て下さい」




遥香は、私に資料を渡してきた。








20××年12月2日、アパートの一室で首を吊った死体が見つかる。死後数日がたっていたという。死亡したのは、櫻井浩子四十二歳。櫻井浩子は、三十歳の時に離婚している。自身の浮気が理由だという。櫻井浩子が勤める会社に、匿名のメールが届いた。それは、櫻井浩子が浮気している映像だった。その映像は、あまりにも酷い映像だったという。浮気相手は、同じ会社内におり、二人共退職している。




また、その時期に離婚しており、当時二歳だった一人娘の親権は、父親の櫻井健二が持つ事になった。その後、櫻井浩子は、浮気相手だった男性と結婚しているが、すぐに離婚している。原因はDVだったという。その後は、職を転々としている。ただ、櫻井浩子が働く職場では、必ずと言っていい程、彼女の浮気の噂が広まり、退職に追いやられていたという。








「何、この資料」




私は、遥香に聞いていた。




「この自殺した櫻井浩子という女性、誰かに追い詰められていたみたいなんです」




「もしかして、この浮気の噂が毎回広まったっていう部分」




私は、少し気になっていた部分について言葉にしていた。




普通、このような資料を作成する時、客観的事実を記載する。




ただ、この資料の後半は、伝聞が多く推論の部分が多いように感じたからだ。




「そうです。それで、初めの会社への匿名のメールも、その後の噂が広まったのも、元夫の櫻井健二ではないかって思うんです」




「何か、根拠があるの」




私は、遥香の推論を聞いてみようと思った。




「最初のメールに添付されていた動画なんですが、櫻井浩子自身と浮気相手の男性しか所持していなかったみたいなんです」




「奥さんの所持していた動画を入手して、会社に送りつけたって事」




遥香は無言で頷く。




「浮気の復讐のためだと思います」




遥香が静かな声で言った。




「それ以外にも、夫の健二らしき人間が、彼女の職場で目撃されています」




なるほど、考えられなくはない。その時、私は気付いた事があった。




「でも、この事件と呪いの話と何か関係があるの」




「櫻井健二が目撃された時、近くに黒猫を連れてたそうなんです」




私は、驚いて固まってしまっていた。




「あと、この時期に櫻井健二は黒猫と一緒にいる事が多かったみたいなんです」




遥香は、櫻井健二の娘や職場の人間の、証言をまとめた資料を見せてくれた。




「確かに黒猫が目撃されてるみたいね。でも、飼っていたみたいでもないみたいね」




私は、資料を見てそう言った。娘からは、猫を飼っているという証言はない。




また、櫻井浩子が亡くなった後、彼女の住んでいた部屋に、櫻井健二が行っている。




遺品整理を義理の親から頼まれたらしい。その時、櫻井浩子の日記を室内で読んでいたらしい。




この時も、黒猫を連れていたという証言がある。




「おかしくないですか」




「どういう事」




私は、遥香が何を言いたいのか分からなかった。




「私達が調べてた黒猫は、一定の人間に従ったりしていません」




「確かに、そうだけど……」




「美里さんが調べた黒猫も、街を徘徊して呪いを振り撒いていても、特定の人物についてはいない」




私は、少し考えていた。




「黒猫は、自分が呪いを振り撒く存在だと、なんとなく解っているのかも」




「なおさらおかしいですよ。なら、特定の人物に引っ付いていれば、相手がどうなるのかも解っているかもしれない」




遥香の言葉は勢いを増していた。




「黒猫が、特定の人物に引っ付いているわけがないって事」




私は、遥香にそう聞いていた。遥香は、静かに頷く。




「この資料も見て下さい」




遥香は、そう言って紙の束を手渡してきた。





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