第四十話〜元妻の日記~
私は男を眺めていた。男は、黒猫である私の身体を優しく撫でながら呟いた。
「あいつは、こんな風に思ってたのか」
男は、日記を読みながら遠い目をしていた。
「あの日、私が浮気をしている事を、あなたに知られてしまいました」
日記には、そんな内容が書かれていた。
「私と浮気相手の職場に匿名で告発があったからです」
日記には、そう綴られていた。
「それが原因ですね。私達は離婚する事になりました。私は、あなただけでなく娘も失う事になりました」
男の元妻の日記のようだ。
「私は、浮気相手の男性と再婚しました。でも、地獄でした。職を失っていた私達に慰謝料や養育費が重くのしかかりました。男性からのDVもありました。」
男は黙って読んでいた。
「私は男性と離婚して逃げ出しました」
男は、小さなボロアパートの一室にいた。
「元夫には、復縁を懇願しました。もちろん、断られました。なんで、あの時に浮気なんてしてしまったんだろう」
男がいるのは、元妻の住んでいたアパートの一室だった。
「娘に何度かプレゼントを送りました。でも、全て送り返されました。」
元妻が自殺した一室であった。
「ランドセルを送りました。受け取って貰えませんでした」
その部屋には、男の写真と家族3人で写った写真が飾られていた。
「いつか、娘に、あの人に再会できる日がくるでしょうか?」
男は、元妻が自殺をしたと義両親から連絡を受けて、この元妻が住んでいたアパートに来ていた。
「私は、本当にバカでした。失ってしまってから後悔するなんて」
男は、日記を読みながら震えていた。
「戻れるものなら、あの日に戻りたい」
男は、日記のページをゆっくりめくっていた。
「娘に会いたい。あの人に会いたい」
男は、日記のページをめくって目を見開いた。
「助けて、助けて、助けて。戻りたい、戻りたい、戻りたい。会いたい、会いたい、会いたい。帰りたい、帰りたい、帰りたい」
日記の最後のページには、そう綴られていた。
「ヒヒヒヒヒヒ!」
日記を読み終わって、男が声を出した。
「あの時、アイツ達の会社に告発してやって正解だった!」
男は笑いながら言った。
「苦しんだみたいだな!ハハハハ!」
男は笑い出していた。
「オマエのおかげだ!復讐できた!苦しませてやれた!」
男は、私を見ながら、ニッコリと微笑んだ。




