表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/47

第三十八話〜巫女〜

私は黒猫である。名前はまだない。




私は時々ここに来る。最近ではレトロと言われる、昔ながらの喫茶店だ。




普通、猫である私は店に入る事はできない。




だが、ここのマスターは、何も言わず私を迎え入れ餌までくれる。




私は餌をもらい、少しの時間ここでくつろいでいく。




「昔、巫女さんを殺したらしい」




私がくつろいでいると、少し離れた席に座っていた男が言った。




その席には、中年の男と若い男女が座っていた。おそらく家族だろう。父親と兄弟だろうか。




「はぁ、いきなり何言ってんだよ」




若い男が、中年の男に言った。若い女は驚いた顔で黙っている。




「明治時代の頃らしい」




そう言って、中年の男が話しはじめた。




「この辺りが大干ばつになった」




若い男女は、静かに聞いている。顔が似ているので兄弟だろうか。




「その頃のこの辺りは、まだまだ田舎で小さな村だったらしい。村にある神社の巫女さんが雨乞いの儀式をしたそうだ」




「それで、どうしたの」




若い女が、話の続きをうながす。




「雨はいっこうに降らず、怒った村人は巫女さんを、皆んなで殺したらしい」




「ひどい、巫女さんのせいじゃないのに」




若い女は、そう言って悲しそうな表情をしていた。




「そういう時代だったんだろうが、本当にひどい事をしたと思う」




「それって、もしかして」




若い男が、何かに気がついたらしい。




「そうだ、うちの先祖が中心になって、巫女さんを殺したらしい」




「な、私達の先祖が」




若い女が、驚いた声を出した。




「それ以来な、うちの家系の男は、血だらけで死ぬんだ」




「なんだよ、それ」




若い男が大きな声を出していた。周りの客が彼等家族の方を見た。




「ある年齢になると、うちの男性は死ぬんだよ。お前達の爺さんも自分で喉を掻き切って死んだ」




「そんな……」




若い女が呟いた。




「何かな、死ぬ少し前から、血だらけの巫女さんが現れるらしい」




それを聞いた兄弟は、恐怖していた。




「そんな、巫女さんなんて現れるわけないだろ」




若い男が言った。




「いや、見えるんだよ」




「何が」




「ほら、そこに立っているよ」




男は、喫茶店の角の席を指さした。




そこには、何も無かったが、男の顔は恐怖にゆがんでいた。




確かに、その場所には何も無かったように見えた。




私と男以外には……






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ