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第三十七話〜あああ…、見つけた、心霊写真~

「ちょっと、あんたね!なんで連絡よこさないの」




私は、会議室に入るなり大声を出した。昨日の夜に、遥香からLINEが届いたからだ。




それも、用件しか書いていなかった。今日の昼に、この遥香が勤める雑誌社の会議室に来てくれ、という内容だった。




因みに、私がフリーになる前に働いていた雑誌社でもある。




「あ、美里さん。おはようございます」




「おはようございます、じゃないわよ。今まで何してたのよ」




私は、勢いこんで言った。




「ちょっと、色々あったんですよ。説明しますから、とりあえず座って下さい」




遥香がそう言ったのと同時に、私も少し冷静になる事ができた。




それは、遥香の格好を見て、何かあったのだと気付いたからだ。




「どうしたの、その格好。髪はボサボサで、服もボロボロじゃない。大丈夫なの」




「大丈夫ですよ」




そう言って、遥香は私に椅子に座るように促した。




「それで、何があったの」




私は、椅子に座りながら聞いた。




「黒猫に狙われました」




「狙われたって、どういう事」




私は、驚いて聞き返していた。




「車にひかれかけて、その時近くに黒猫がいたんです」




「黒猫が、車でひこうとしたって事」




私は、驚いて聞いた。




「たぶん」




「たぶんって」




そう言った私の口調は、少し優しくなっていた。




「それで、このままでは一方的に狙われるだけだと思ったんです」




「それで」




「黒猫が絡んでいると思われる事件を探しまわっていました」




どうやら、遥香は黒猫の事を必死で調べていたようだ。




「それで、何かわかったの」




「一つ気付いた事があって」




「気付いた事」




「はい、美里さんの方は、何かわかったのですか」




私は、少し前に取材した神社の神主の話を思い出して答えた。




「ええ、黒猫の正体がわかったわ」




そう言った私を、遥香は驚いた表情で見ていた。




「黒猫の正体がわかったんですか」




「ええ、そうよ」




遥香は、少し心を落ち着かせるようにして、話を続けた。




「わかりました。ここで、情報の共有をしましょう」




「わかったわ」




遥香は、冷静な表情で私を見ていた。




「まず、これを見て下さい」




遥香が、私に資料を手渡してきた。私はその資料に目を通す。








「ああああああ…」


20××年2月12日、宮脇聡美と篠原里穂がカフェにいた。二人は、途中までは普通に談笑していたという。しかし、突然、宮脇聡美が悲鳴をあげ、立ち上がった。驚いた篠原里穂と店員は、彼女をなだめようとしたが、会話が通じない状況であった。結果、彼女達は警察を呼ぶ事態となり、宮脇聡美は連行されていった。その後、警察署で話を聞いたが、彼女は「あ」の発音しかできなくなっていた。病院に搬送されたが原因はわかっていない。また、宮脇聡美は、カフェで「ああああああ…」と書かれたメールを受け取ったと話していたという。







「何これ、これも黒猫と関係があるの」




「はい、この事件の時も近くに黒猫がいたみたいなんです」




私の質問に遥香が答えた。




「この資料も見てみて下さい」




遥香は、さらに事件の資料を手渡してきた。








「見つけた!」


20××年3月18日、会社員の今井和博が、朝の通勤のため、家を出てそれ以降の足取りがわかっていない。家族は、行方不明事件として、警察に捜索願を出したが、行方不明のままである。今井和博が行方不明になる前日に、同僚にテレビ番組の話をしていたという。夜中に、白黒の画面にマリオネットが踊り、黒い女が近づいてくるという内容だったという。そして、黒い女は最後に「見つけた」と言ったらしい。今井和博は、見つかってしまったと言って、怖がっていたようである。同僚は、もしかしたら、その黒い女が連れて行ったのかもしれないと話していた。







「これって、よくある怪談話」




私は、資料を読んで遥香に聞いた。




「怪談話みたいですけど、本当にあった話なんです」




「今井和博は、この黒い女に見つかって連れて行かれたって事になるわね」




私は、怪談話でよくあるオチを言っていた。




「はい、たぶん黒い女は今井和博をずっと探していたんじゃないでしょうか」




「テレビを通じて。何のために」




疑問だらけの事件だと、私は思った。




「黒い女が何を考えていたかはわかりませんけど、この事件の時も黒猫が目撃されています」




「ここでも黒猫が……」




私は静かに呟いていた。




「あと、もう一つこれも読んで下さい」




遥香は、さらに資料を渡してきた。







「心霊写真」


20××年9月2日、細井新一は、その日彼が通う高校に普通に登校した。二学期の初日である。彼は、教室に入るとすぐに、カッターナイフを取り出し、隣に座っていた女子生徒に斬りつけた。その後もクラスの生徒を斬りつけた。また、取り押さえようとした警備員や教師を刺し逃走。学校中を走り回りながら、目に留まる生徒に斬りつけた。重軽傷者は数十名にのぼり、死亡者もでた。その後、警察に取り押さえられた細井新一は、わけのわからない事を叫びながら、暴れ続けたという。







「この事件なら知ってるわ。ワイドショーとかでも騒がれた事件よね」




「はい、高校生がおこしたショッキングな事件でしたからね」




そう答えた遥香の話を聞きながら、私は記憶を探っていた。




「あれ、でもこの高校って都内よね。この街とは関係ないんじゃないの」




私は、この街ではない場所の事件の資料を見て、疑問に思っていた。




「この高校生、家がこの街の近くなんです」




「そうなの、でもこの街の住人ではないのでしょ」




「八月の終わりに、彼と友達でこの街の心霊スポットに来たそうなんです」




私は、なるほど、っと合点がいった。




「この街の池がある公園って知ってますか」




「ああ、あの心霊写真が撮れるっていう公園ね」




私は答えた。確か、その公園の池では、高確率で女性の幽霊が映り込むという。




「はい、彼等も肝試しで、その公園の池で写真を撮ったらしいんです」




「幽霊が映ったの」




遥香は頷きながら、一枚の写真を見せてきた。




「これが、その時の写真」




そこには、高校生らしき男の子の肩に覆い被さるように、女性がしがみつく様子が映っていた。




「その写真は彼の友達から送ってもらったものです」




遥香は真剣な表情でそう言った。




「その写真を撮った後から、彼の様子がおかしくなって……」




「事件をおこした」




「はい」




私の言葉に、遥香が同意した。




「それで、この写真を撮った時にも、近くに黒猫がいたそうなんです」




私は、もう驚かなくなっていた。ただ、遥香は、黒猫がこれらの事件を、引き起こしているのだと考えているのかもしれない。




「遥香、あのね、これらの事件に黒猫が関係ないわけじゃないと思う」




私が、そう話し始めたのを、少し驚いた顔で遥香は見つめた。




「黒猫の正体がわかったって言ってましたね。黒猫が事件に関わる理由がわかったって事ですか」




「ええ、でも黒猫は事件を直接的におこしたり、誰かを殺そうとしたりはしていないと思うの」




遥香は、私の顔を見つめながら話の続きを待っていた。




「私、ある神社で黒猫の話を聞いたの」




私は、そう言って黒猫の話をはじめた。







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