表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/47

第二十六話〜タクシー2~

「こっちビール下さ〜い!」




片桐遥香がいつものようにビールをおかわりしていた。




「また〜!飲み過ぎないでよ!」




そう言った私も、目の前のビールジョッキを手に取り、一気に飲み干した。




「美里さんもじゃないですか〜!」




私を美里さんと呼んだ遥香は、私の後輩だった。と、言っても私が前に働いていた雑誌社での話だ。




私がフリーになった後は、時々こうやって会って愚痴を言い合う仲だ。




ただ、最近は会って話す内容が変わってきている。




「それで?」




「何がですか?」




「何かあったから呼んだんでしょ!」




私は、そう言って、遥香の話を促した。




「本当は、もう少し酔ってから話したかったんですけど〜!」




そう言いながら、遥香はスマホを取り出した。




「まず、この動画を見ていただけませんか!」




そう言って、遥香は私にスマホを渡す。私は指示された通りスマホの画面を見た。




「何これ?」




私は、その動画を見て、思わず声を出していた。




「その動画、ある事件の目撃者が持ってた動画なんです」




遥香がそう説明した動画には、黒猫の後ろ姿が映っていた。







動画には、黒猫が何処かの道路に座っている。黒猫の前に大きな道路がはしっていた。少し段差があるので、黒猫は歩道に座っているようだ。外野で、カワイイとかいう声が聞こえている。おそらく撮影者の声だろう。しばらくすると、黒猫の前にタクシーが止まった。そして、黒猫はタクシーに乗った。タクシーは、普通にお客を乗せたように、ドアを閉めて、はしっていってしまった。







「ちょっと!何この動画?」




私は混乱していた。黒猫が動画に映っている事もだが、内容が異様であった。




猫がタクシーに乗るなんて考えられない。これが、この街の黒猫でなければ、面白い映像なのかもしれない。




でも、私には不気味に思えた。




「少し前に、◯◯駅の近くの道路でタクシーが事故にあった事件、知ってますか?」




私は、記憶を探りながら遥香の言う事件を思い出していた。




「確か、タクシーが事故って運転手が死亡した事件よね」




私が、うろ覚えの記憶を引っ張り出す。




「そのタクシーから、行方不明事件の女性の遺留品が出たんだっけ?」




「はい、その事件です」




事件の概要は下記の通りである。







20××年12月18日、◯◯駅の近くの道路で、タクシーが電柱に衝突する事故がおきた。この事故により、タクシー運転手の山下耕平四十二歳が死亡した。この事故がおきた道路は直進だったが、何らかの原因でハンドル操作を誤り事故に至ったと推測された。なお、ブレーキ痕は無く、猛スピードで電柱にぶつかったようである。この事故の後、このタクシーから女性もののバッグが見つかり、持ち主は菅井由希二十四歳の物と断定した。菅井由希は、当時、行方不明であり捜索願いが出ていた。




警察は、山下耕平の自宅を家宅捜索。そこから、行方不明になっている女性の遺留品を多数発見した。また、パソコン内に彼女達を縛り監禁していると思われる画像が見つかり、その画像を解析したところ、某所の山中と判明。捜索したところ複数の女性の遺体を発見した。この事から、山下耕平がタクシーに乗車した女性を拉致監禁し、殺害した後、この山中に埋めたと警察により結論づけられた。なお、犯人である山下耕平が死亡している事から、被疑者死亡のため、検察庁に書類送検という形で


幕を閉じた。







私は、遥香から渡された資料を読み終えて、視線を上げた。




「もしかして、この動画の黒猫が乗ったタクシーって……」




「はい、そうです。死んだ山下耕平のタクシーです」




私は寒気を感じていた。




「この動画は、たまたま歩道に座っている黒猫を見つけて撮影したものだそうです」




遥香が説明してくれた。確かに、猫好きなら歩道に座っている猫がいたら撮影するかもしれない。




「この動画の後、タクシーは電柱に突っ込んでいます」




そう言った遥香も、恐怖を感じているようだった。




撮影者は、黒猫がタクシーに乗った後、不思議に思ったが、撮影を止めて駅の方に歩き出したそうだ。




その直後、大きな音がして、振り返るとタクシーが電柱に突っ込んでいたのだと言う。




「タクシーに乗った黒猫はどうなったの」




私は、それが一番に気になっていた。




「タクシーからは猫の死体などは見つかっていないので、たぶん逃げたんだと思います」




それを聞いた私は、どこかで安堵している自分に気づいた。




「美里さん、どう思いますか」




「どうって」




私は、まだ考えがまとまっていなかった。




「もし、この事故が黒猫によって引き起こされたものなら、黒猫は制裁を加えたんじゃないでしょうか」




遥香の言葉を聞いて、私は恐怖を感じていた。それと同時に、何か違和感も感じていた。




「黒猫が、亡くなった女性の代わりに山下耕平に制裁を加えたって言うの」




「はい、そうとしか思えないんです」




遥香は、いつになく真剣な表情で言っていた。




「たぶん黒猫は、普通じゃない力を持っているんですよ」




「何、普通じゃない力って」




私は、否定的な言い方で遥香に答えた。でも、本当は私もそれを否定できなくなっていた。




「わからないですけど、そうじゃないと説明できない事が多過ぎます」




「言いたい事はわかるけど、他の事件では黒猫は……」




そう言いかけて、違和感の正体がわかったような気がした。




「どうしたんですか、美里さん」




「なんか、おかしくない?」




私は、遥香の顔を真っ直ぐに見た。




「この事件だけ、黒猫が直接的におこしたように感じるんだけど」




「そうですよ。だから、黒猫には特別な力があって……」




そこまで言って、遥香も何かに気づいたようだった。




「確かに、この事件だけ毛色が違うような気がします」




自身の中で何かを理解したように、遥香が言った。




「今までの事件にも、黒猫は必ず現れてた」




「でも、この事件のように、直接的に事件を引き起こすわけではなかったですね」




私の言葉の後を遥香が拾って言った。




「ええ、この事件だけ何か違うのよ」




私はそう言った。




「この事件にだけ、何か特別な事があるって事ですか」




「そうよ、何か黒猫が直接的に関わる理由があるのよ」




私の言葉に、遥香は頷いていた。




「私、もう少し調べてみます」




遥香は、そう宣言しながら半分残っていたビールを飲み干した。




私達は、もしかしたら黒猫の真意を知る、糸口を見つけたのかもしれない。




私は、その時そう感じていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ