第二十五話〜タクシー~
私はこの街を徘徊している。夜になると、この辺りは静かになる。
少し先に駅があるため、居酒屋などの店舗がいくつかある。
しかし、何処かの歓楽街のような賑やかさはない。
私は、少し広い道路まで来ていた。歩道に座る私を行き交う人がチラチラと見ていた。
黒い猫が一匹で座っているのが珍しいのだろうか。
キキーッ!バタン!
私の目の前にタクシーが止まり、ドアを開けた。
私は迷わずそのタクシーに乗り込んだ。
「何処まで…、あれ?猫?」
バックミラーを見たタクシーの運転手は、乗り込んできたのが猫である私だけだったので、驚いていた。
「あれ?さっき女の人が乗ったはずなんだけど」
そう言って後ろを振り返った。
「あれ?あ、すいません」
運転手が一人で、誰もいないシートに話しかけた。
「何処まで行かれますか?あ、はい、わかりました」
運転手は、私が座っている、隣の誰もいないシートに話しかけていた。
「いや、すいません!お客さんに気づかなくって、猫が乗ってきたように見えたんですよ!」
運転手は、誰もいないシートに、そう語りかけていた。
「ここを真っ直ぐで大丈夫ですか?」
また、誰もいないシートに話しかける。どうやら、私の存在にも気付いていないようだ。
「あ!ええ、知ってますよ!最近、若い女性が行方不明になってる事件でしょ?」
運転手が誰もいないシートに答えた。
「え?覚えてって?」
運転手が動揺しだした。
「待て!オマエなんで!」
運転手が取り乱す。
「なんで生きてるんだ!」
そう言った運転手は、叫んでいた。
「ブレーキが!」
どうやら、車のコントロールがきかなくなったらしい。
「待て!すまなかった!助けてくれ!」
運転手は、誰もいないシートに絶叫していた。
「やめてくれー!」
運転手が、そう絶叫した時、タクシーは猛スピードで真っ直ぐ電柱に突っ込んでいった。
パァー!
と、クラクションが鳴り響く中、私は前方がグシャグシャになったタクシーから抜け出した。
見ると、運転手は頭がザクロのように潰れて、絶命していた。
この辺りでは、若い女性の行方不明事件が多発していた。
一部の証言では、行方不明になった女性は、最後にタクシーに乗ったという。




