第二話〜エレベーターホール~
ドン、ドン、ドン、ドン!
この場所ではよくこんな音が聞こえる。この場所とは、この古びたマンションのエレベーターホールである。
私は、よくこのエレベーターホールが見える塀の上で休んでいる。
私は黒猫である。名前はまだない。
「夜になると、よくこの音なってるよね〜」
住人だろう女が、連れの女にそう話しかけていた。
「この音何?エレベーターからしてるの?」
「たぶん、違うと思う!何処からだろう?」
女達はそんな話をしながらエレベーターに乗り込んでいった。
「ママ!」
「どうしたの?」
今日は珍しく、こんな夜襲い時間に親子連れが通った。
何処かに出かけていたのであろうか。女の子は、よそ行きの格好である。
「ママ!ぶらんぶらんしてる」
「何?ぶらんぶらんって」
小さな女の子は、エレベーターホールの上の方を見上げながらそう言っていた。
「おじさんが、ぶらんぶらんしてる」
「おじさんって?」
そんな会話を親子がしていると、
ドン、ドン、ドン、ドン
っと、大きな音が鳴り響いた。
「何?この音」
母親が周りを見渡しながら呟く。
「おじさんが、ぶらんぶらんしてるからなの」
女の子が言う。
「何言ってるの?」
母親はそう言って、タイミングよく着いたエレベーターに乗っていった。
女の子も、母親に手を引っ張られていった。
その時も、女の子は上の方を見ている。
ドン、ドン、ドン、ドン
っと、また音が鳴り響いた。
私は知っていた。女の子が何を見ていたか。
ここでは、毎夜、男が首を吊っている。そして、揺れた男の足が、壁にぶつかる音が
ドン、ドン、ドン、ドン




