9 精霊の恩恵
龍はこの国では守り神だ。
見たいと思っていてもなかなか見る事が出来ないという。
また、側に龍がいても気付くことは出来ない。不思議な特性がある。
もし龍を見ることが出来たら奇跡なのだそうだ。フラン達は幸運にも見ることが出来たし、ワチキは声を聞くことが出来た。ワチキも精霊樹の遣わした守り神なのかも知れない。
若しくは、精霊の化身かも知れない。
ワチキやココの変わってしまった姿は、まさしく精霊の化身だ。
ワチキは、火の精霊サラマンダーの化身、ココは風の精霊シルフの化身なのかも知れない。
フラン達は、ココの背に乗って下山した。
そして暫くするとココは元の可愛い豆フクロウにもっどった。
良かった。これでいつでも肩に乗ってくれる。
だけど、ワチキは元に戻る事は無く其の侭の姿だ。エステバルはワチキから離れて、近づこうとしない。
ワチキは、チョット寂しそうだ。
「エステバル、どうしてワチキに冷たくする?」
「別に冷たくしているつもりはない。何となく近寄りがたい感じだ。」
「どうして?綺麗になって、良かったじゃないか。これ以上何を望む?」
「お前は未だ子供だな!」
そう言って、エステバルは離れて行って仕舞った。
『子供って。どういう意味だ?ああ、そう言えば、エステバルはもう大人になったな。僕はまだ成長期が終わっていないから、術が解けていない。エステバルは術が解けたんだ。と言う事は・・・』
フランは自分で考えたことで、自分が恥ずかしくなってしまい顔が真っ赤になって仕舞った。
フランは宿に戻る前に、ワチキを人里離れた場所に連れてきた。エステバルはココと一緒に返ってしまったので、今はワチキと二人きりだ。
「ワチキ。どんなことが出来る様になったか見せてくれないか?」
「多分火の魔法が使えるようにはなったと思う。でも、ここだと怖くて使えない。」
「どうして?誰も居ないよ。」
「マナが溢れすぎて、威力が凄いことになる。」
そうか、ワチキは他に被害が出ることが怖いのか。確かに少し離れた処に人家が見えるな。
まだ、威力の調整が出来ないから危ないかも知れない。もっと離れた誰も居ないところで練習しないとだめだな。
宿に帰ってエステバルに話すと、
「俺が連れて行くから、フランは勉強でもしていろ。」
と凄い剣幕で怒った。まあ、仕方がないな。多分エステバルは、ワチキがフランを好きになって仕舞うと勘違いしているようだ。暫く放って置こう。
何もあそこまで意識しないで、普通に接していれば良いのに。そう考えるフランはまだ子供なのだろうか?
後日、ワチキがしょんぼりしているのを見付けたフランは、どうしたのかと聞いて見た。すると、
「お前の魔法は威力が強すぎて使えない。今後遣うな、とエステバルに言われた。」
と言う事らしい。
折角助けになれると喜んでいたのに、遣えないほどの威力とは。可哀想なことだと思う。
どうして丁度良い具合に、力を与えてくれなかったのかと、龍に怒っていた。
今頃龍神は困っていることだろう。