7 ワチキの悩み
「なんだって?ワチキがマナの泉に行きたいって言ったのか?」
エステバルは、自分にワチキが相談しないで、フランに助けを求めたのが気に入らない。
ワチキは自分の守り手ではなかったか。
「場所が分らないから、調べて欲しいと言われた。あとは、自分たちで行ってくるんだって。」
「そんな、危なすぎるだろ。この島には魔獣が一杯なんだぞ。」
「そうなんだよね。僕も二人だけで行くのは反対だ。でもマナの泉は、調べても何処にもないんだ。行きたくても行けそうにない。」
「そうか。」
なら、良かった。しかし、先に俺に話して欲しかった。少し、ワチキに邪険にしすぎた。女の子に免疫が無い物だからつい、意地悪をしたくなる。もう、成長期が終わったから、ワチキの姿を見ると偶にドキリとして、身体が変な反応をしてしまうのだ。
彼女は精霊樹が作り出した者だ。自分とは違う生きものなのだ。いくら自分に言い聞かせても、普通の異性として見えてしまう。自分が穢れた者に感じてくるのだ。
精霊樹め!どうせ作るのなら、もっと人間から遠い者にしてくれれば良かったものを。よりによって女の子だなんて。
フランはワチキに言われた、マナの泉が気になっている。
ワチキは龍が教えてくれたと言ったのだ。龍が姿を現したのは、若しかしてワチキのためだったのか。
ワチキは、精霊樹が作り出したものだ。僕らのような人間よりも、龍に近い生きものなのかも知れない。
この国では地力のことをマナと言っているようだ。と言う事は、地力の集まった場所と言う事なのかも知れない。
この国の地理を詳しく見て見ると地力が一番高い場所は、マナ山の火口だ。
若しかしたら、マナ山の火口には、カルデラ湖があるのかも知れない。余りにも高い山で、更に龍の信仰があるせいで、誰も頂上までは行かないようだ。精々が五合目まで行く程度だ。
もし、頂上まで行かなければならないのなら、大変な山登りをしなければならない。酸素が薄くて人間には無理ではないだろうか。ココやワチキなら、行けるかも知れない。
「僕達が行けば返って足手纏いになる恐れがある。ワチキが言っていたように、ワチキとココで行かなければならないようだ。」
マナの泉に行けば何か分るかも知れない。フランは自分たちもついて行ける方法を考えなくては。と考えた。
「オオ、これが5回使えるスクロールだってか?」
「はい、ワンコが剛力、トリオが健脚、そしてクマタが耐毒でしたね。どうぞ。」
彼等が欲しがっていた、スクロールを持って行き、ついでにマナ山のことを聞いてみる。
「マナ山の頂上まで行くだあ!辞めとけ、あの山は人間では無理だ。七合目まで行った奴はいたが、気を失って死ぬ思いをしたそうだ。気温も低いし空気も薄い。六合目からは斜面がきつくなるし落石もある。死にに行くようなものだ。」
やはり、試した人はいたのか。では頂上に行くことは禁止されてはいないはず。
魔獣は六合目からは龍のお陰で全くいないそうだ。
気温の問題と、空気、そして体力があれば可能性はある。スクロールを工夫すれば行けるかも知れない。
フラン達が着ているマントを工夫して気温の問題は解決出来るし、体力だってスクロールを使えばなんとかなりそうだ。後は空気か。
これが一番の問題だ。身体の周りに空気の層を纏ってしまえる魔道具は無い物か。
それとも、気球で飛んで行ければ・・だめだ。やはり空気が問題だ。然も気流がどうなっているのかも分らないのだ。やはり、地道に登ってゆくしかないようだ。
空気か。マスクの形にして、そこに循環の魔方陣を付けて、地上の空気と常時入れ替えれば如何だろう。
行けるかも知れない。火山には有毒なガスがあるかも知れない。耐毒のスクロールも必要だ。
フランは一心不乱に、作り始めた。