6 マナ山の龍
獣人達の仲間は全部で3人。
一人は熊の獣人でかなりの大柄だ。名前をクマタと言った。
もう一人は鳥の獣人で、細身の身体に羽根があり空を飛んでいる。名前はトリオ。
犬の獣人は女の子でワンコ。
フランとエステバルは笑いたくても笑えず苦しくもだえていた。
昨日名前を聞いたときも、笑いそうになったが、お互いを呼び合っているのを聞いて、笑いが再燃しそうになっていた。
「どうした。フランどっか怪我でもしたか?」
クマタが聞いてきたが、この笑いのツボは、彼には理解できないだろう。
何故、皆こんな名付け方をするのか。
獣人達は余り独創的な名前の者はいないようで、種属が分る名前を付けているようだ。
「さあ着いた。ここから先は厳しい登りだ。更に魔獣も出てくるから。皆円陣を組んで、真ん中はワチキだ。あとはそれぞれの持ち場を警戒してくれ。」
盾役のクマタがリーダー役を買って出て、真っ先に先頭に立った。
トリオはココと一緒に空から警戒をした。エステバルは右、フランは左、ワンコは最後尾だ。
魔獣が次々と現れるが直ぐに魔法で倒してしまう。皆魔法が得意のようだ。空から、魔獣の位置を教えて貰うので、楽に倒す事が出来ている。
順調に進み山の中腹に差し掛かったとき、山頂から大きな龍が飛んでくるのが見えた。
東洋でよく見るような細身で羽根のない龍だ。くねくねと空中を泳ぐように飛んでいる。
フランは口を開けて見ていた。皆も同じだ。まさか、こんなに簡単に龍に会えるなんて思ってもいなかった。龍は人間には無害なので、心配はいらないがものすごく大きい。圧倒された。
皆の直ぐ上を円を描くようにゆっくり飛んでまた山頂に消えていった。
「見れたな。」
「ああ、こんなに近くで見れた。」
「俺達は運が良い。」
皆で笑い合い、下山した。
魔物も沢山倒し、龍にも会えた。狩人組合に帰って報告すると、その話を聞いて狩人達はうらやましがっていた。
なかなか見る事が出来ない龍に、初めて登った人物がみる事が出来るのは、かなり稀だということだった。
「フラン、スクロールを売ってくれ。あれには助かった。」
「良いけど少し待って欲しい。もっと図書館へ行って勉強してくるよ。何回か使える物が出来るかもしれない。」
フランはやっと自分がやりたいことが出る気がした。
龍を見る事が出来たし、スクロールが売れそうなことも分った。後は魔道具の勉強を出来るところがあれば良いのだが、この国では、魔道具は機密扱いなので他国の者には、見せてくれないだろう。
自分で勉強して開発するしかないようだ。
☆
ワチキは一人呆然としていた。
あの龍にあったとき、確かに龍はワチキに話しかけてきたのだ。
『役に立ちたかったら、マナの泉に行けば良い』
マナの泉は何処にあるか分らない。マナ山の近くなのか。
ワチキは、あまり役に立っていないのが心苦しかった。
役に立つどころか、足を引っ張ってばかりだ。もし、ワチキにも魔法が使えるなら、エステバルの助けになれるかも知れない。フランに聞いて見ようか。フランなら、調べてくれるかも知れない。
ココがじっとこちらを見て「クウ」と鳴いた。
若しかしてココも龍の声が聞こえた?
ココは役立つことはしていたが、もっと力が有れば、フランの手助けが出来ると思っている。
二人でフランに頼んでみよう。エステバルは、危ないことはするなと、怒りそうだから言えない。
厳しいことを何時も言ってくるけど、エステバルは、絶対にワチキを危険から守ってくれている。
ワチキは自分が守ってやりたいのに、逆なのが悲しい。
それもこれも、ワチキがふがいないからだ。なんとしても、役に立つ守り手になってみせるぞ。