3 一の島へ行こう
このジパンの島の名付け方は、至ってシンプルだ。初めに上陸した島が九の島。中心の島が一の島だ。一から十三まである。一の島を取り囲むように小さな島が点在している。
これから、フラン達は一の島まで行こうと思っている。
一の島はこの国の首都があるという。貴族や王様はいない。10年に一度議員を選び、その議員達で国の政治をしているらしい。この世界では、異質な政治体系だが、フランにとってはなじみ深い。
何となく故郷に帰ったような気持ちになったが、一の島に着いた途端、その気持ちが吹っ飛んだ。
なんと島の住人は、獣人だった。どうやら、各島には種属別に分かれて住んでいたらしい。
九の島は、猿の獣人の島だった。道理で猿に似ていたはずだ。猿その者だったのだから。
人間に一番近い姿の獣人が、他国との交流役をしているみたいだ。
フラン達は街の中に入る許可が下りるまで一ヶ月も税関で待たされた。
魔法袋の中身を総て検査され、よく分らない魔道具に掛けられ、ここに来た目的を事細かく聞かれた。
九の島は開かれた島だったが他の島へは、他国の国民はなかなか受入れていないらしい。
こんなに大きく発展した国なのにあまり知られていなかったのは、そういう訳だったと、納得した。
「この国は珍しい獣人の国だ。以前は他国とも自由に交流したこともあったが、獣人が迫害を受けたり、攫われたりする事件が頻発して、鎖国制度を取った。」
税関の役人がそう言って教えてくれた。
フラン達が、許されたのは、ワチキのお陰だった。
ワチキの不思議な種属を彼等は知らなかった。ワチキは、精霊樹のことを話してしまった。
フラン達は慌てて口止めをしようとしたが、遅かった。だがそのお陰で、何故か信用して貰えたのだ。
やっと自由にこの島を見て回れる。この島を出るときも同じように検査されるようだが、仕方がない。
一の島には、各種族が渾然と混ざって生活していた。
なので、動物の国へ来たような、以前見た動物の街のアニメ、のような賑わいがあった。
様々な耳、尻尾が見ていて可愛い。
中でも熊耳の獣人は、身体が凄く大きくてチョット怖いくらいだ。
「この宿屋が決められた場所らしい。」
立派な建物の6階に案内された。大きな続き部屋があり、応接セットまで付いていた。料金は高いが、なんとかなるだろう。
「この国にも冒険者ギルドのような仕組みがあるらしい。俺等でも大丈夫だと言っていたな。」
「ああ、明日行ってみよう。この分では宿屋は変えられないみたいだし、お金を稼がないと、すぐに帰国しなければならなくなる。」
この大きな島も真ん中に巨大な火山があった。富士山よりも大きい。高さが四五〇〇メートルだそうだ。
頂上には運が良ければ龍が寝そべっているのが見えるという。偶に飛んでいるのも見えるらしい。
ここからは見えないだろうが、是非近づいて見て見たい。
島の各地には森が彼方此方にあり、魔獣は多く生息している。それらの魔獣を狩って、生計を立てている狩人組合が、冒険者ギルドの役割のようだ。狩人組合は登録制で、試験がありそれに通れば今日にも魔獣を狩れる。
フラン達は他国の魔法騎士という触れ込みで登録した。
「ほほう、人族が魔法を使うとは、われわれも魔法は得意だが、どれ見せてみなさい。」
偉そうな猫耳の男がそういった。どうやら、ここの責任者のようだ。
「可愛い耳して、尻尾まで付けた奴に言われたくねえ。」
コッソリ、エステバルが言うので、フランは笑いをこらえるのに必死だ。
確かに可愛すぎるおっさんだ。尻尾がゆらゆら揺れて、耳がぴぴぴっと動くので目が行って仕舞う。
一所懸命笑いをこらえて、フランは魔法を使った。
エステバルも得意の火魔法を放って見せた。
それを見た猫耳おっさんが、ビックリ仰天して、
「これなら許可を出せる。一杯魔獣を獲ってきてくれ。この国はマナが多すぎて、魔獣が直ぐにはびこってしまうんだ。素材は他国ほど高値は付かないが、その代わり量はたっぷりだ。さあ、行ってこい!」
妙に、脳筋な発言をして送り出してくれた。
この国では地力のことをマナと言うらしい。