19 故郷に帰ってきた
十三の島に着いた。
フラン達は、このまま九の島に真っ直ぐ向かう。一の島は入国検査が厳しすぎる。レーリオは寄ってみたいだろうが我慢して貰おう。あそこで魔法袋の中身を全部見せるというのは大変だ。
色々聞かれても答えられないこともあるし。
急いで高速艇に乗り換えて、その日の内に九の島に着いた。
ここで一晩休んでサミア国王へ帰ろう。
「エステバル、」
「オオ、どうした随分連絡が来ないので心配したぞ。」
「ああ、急いでいたからな。だがあと少しでそっちへ帰る事が出来る。明日サミア行きの船に乗る。」
「そうか、サミアの港へ行って待っている。」
十日後、やっと帰ってきた。エステバルも迎えに来ている。ワチキも一緒だ。
「良く無事で帰ってきたな。フラン。」
「エステバルただいま。ワチキも元気だったか。」
「はい、ワチキはエステバルの、奥さんでシュ!」
相変わらずだな。見た目は綺麗なのに、でもそこが愛嬌があって良いのかも。とフランは考えた。
「エステバル、こっちの女の子は北ノ谷のレーリオ。」
「レーリオです。フランの奴隷です。」
エステバルはきょとんとしてしまった。
奴隷とはなにをさせるつもりだとフランの目を睨んでいる。
「いや、事情は後で話す。宿は取ってあるんだろ?」
「いや、王都に家を貰った。ここから直ぐの所だ。」
暫く離れて居ると事情が分らなくなるのはお互い様だ。
だが、この立派な屋敷をエステバルは、どういう経緯で、貰えるようになったのか。
「不思議に思っているだろうフラン。これは以前の功績のご褒美だそうだ。」
「でも、あの時、貴族の称号を断って旅に出ただろう。王様と半分喧嘩みたいになって。」
「ああ、だけど、帰ってきたら、王様の気持ちも落ち着いていてな。トーマスマンに諭されたみたいだ。」
「そうか、褒賞を与えて、引き留めて、良いように遣われると感じたものな、あの時は。」
「ああ、王は考を改めたと言っていたが。これから様子見だ。」
今は孤児院も落ち着いていてエステバルは冒険者ギルドで働いている。王都の冒険者ギルドは殆ど魔獣がいないので閑だと言っている。
「レーリオの経緯を聞いたけど、不思議な風習がある所だな。未開の原人の部族だ。」
「彼女は呪術が使えると言っている。僕らとは違う魔法の一種かも知れない。まだ見ていないからよく分らないが。」
ワチキはココとなにやら、話していた。お互いのいない間の事だろうが。
「レーリオはワチキが引き受けます。フランは気にしないで何処でも行って下さい。」
何と言うことを言うのだ。まるでサッサと旅に出ろとでも言っているみたいだ。
フランは少しショックを受けた。
しかし女の子と二人で住むわけにも行かない。仕方なくワチキに御願いした。
フランは、魔法鞄の中身をエステバルと一緒に仕分けていた。
余りにも多くの財宝。この屋敷の大広間で仕分けしてやっとなんとか出来ると言う有様だ。
「やっと先が見えてきたな。しかし、お前凄いことやったな。俺も行けば良かった。面白そうだ。」
「ああ、面白かった。あそこにはまだまだ知られていない塔が沢山あった。だけど国へ出土品を下ろさなければならないってのが面倒だったな。」
「持ってきてしまって良かったのか?」
「いや、置いてこようとしたんだ。それが出来なかった。」
「そうか。」
魔道具は知られていない技術のものは別にして、また、魔法鞄に入れておく。
古式ゆかしき洋服もだ。武具類はエステバルが使いたいというのは残して、孤児院に寄付することにした。貴金属類や変わった装飾品、美しい花瓶などは王に献上することにした。
金貨の詰まった箱は、フランが全部受取る。
そして本だ。これはかなり傷んでいた。しかしなんとかしたい。トーマスマンに相談することになった。